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遭遇

 そしてショッピングモールに着いてから1時間半、アキラが「信じられない」と呆れたように言う。

 なんと、お母さんと一緒に買い物に来ていたイケダユリちゃん、別クラの友達と来ていたカリヤさん、彼女と来てたいたタケノシタ君と会ったのだ。そして同クラの子がもう二人、別クラの顔だけ知ってる子で気付いただけで7人を見かけた。

 「こんなに顔見知りと会うんだったら他のとこに行けば良かった」とアキラは言ったが、それでも隣の街まで行かない限り、1か所で買い物がすむ場所を考えると駅ビルの中かこのショッピングモールかしかないので、知り合いに会うのは仕方がない。



 イケダユリちゃんとお母さんは、アキラと私を見つけるとメチャクチャ手を振ってくれながら近付いてきた。お母さんは私たちの事を知らないはずなのに、手を振りつつテンションがやたら高い。

 お母さんは「え?同級生?え?同級生?」と繰り返しながら目をキラキラさせて私とアキラを交互に見る。私もユリちゃんとお母さんをそっと見比べる。ユリちゃんと顔もそっくりだったし、背も同じくらいのお母さん。はつらつとしていて可愛らしい。歳の離れた姉妹にも見えなくない。

「可愛い子たちね!」お母さんが挨拶をした私たちに言ってくれる。「ユリももっと可愛いカッコしなきゃ~」

イケダユリちゃんは緑色のかたつむりが胸の所に大きくついた黄色いTシャツに紺色のジーンズ。

「いいのいいの、私はこれで」とユリちゃんは言った。



 軽くお昼を食べようと入ったフードコートのドーナツ屋で、別クラの友達とテーブルについているカリヤさんを2度目の発見。カリヤさんはヒラヒラの薄紫のミニスカートと薄手で少しゆったり目のクリーム色の長袖のニット。私が持っていたカリヤさんのイメージ通りの私服だ。

 私は人見知りのネガティブさを発揮して、声をかけようか、でも向こうが気付くまでほっといた方がいいのかもしれないと迷う。1度目見た時には結構離れてたのでそのまま通り過ぎた。私たちの知らない友達と来ているし。アキラはたぶん何もしない。もしかしたら気付いていないかもしれない。そして私もアキラに「あれ、カリヤさんじゃない?」とも言わない。



 が、思いがけず「ジュンちゃん!」、とカリヤさんが急に大きな声で私を呼ぶのでビクッとした。

 気付いていたくせに私は、今初めて気付いた感じでカリヤさんに手を振り返す。知らんぷりしてたくせに知らんぷりしてたと思われたくはない私の姑息さが出てしまった。 

「イマイさんとお買いものなんだ~~」

ぴょこん、と席を立って私たちの方へやって来たカリヤさんが言う。「私も友達と買い物なんだ。5組の子なんだけど」

そうなんだ~~、とか、バスで来たの?とかありきたりの事を口に出す私。

 「合宿楽しみだね~~」とカリヤさんが言う。

「あ~~…うん」カリヤさん越しにウエダの顔が浮かんできて、あやふやな返事をしてしまうがここも話を合わす結構常識的な女子の私だ。

「そうだね」

 アキラはただ私たちの会話を聞いているのか聞いていないのかわからない感じで聞いていた。たぶんカリヤさんの事があんまり得意じゃないんだと思う。カリヤさんもアキラには話しかけない。



 そして別に中に入る気ではなかったが、映画館の入り口近くに置かれた上映予定のパンフを見ている時にタケノシタ君を発見した。彼女らしき同じくらいの歳の女子と、映画館のチケット売り場に並んでいるのを見かけたのだ。向こうは気付いていなかったしチケットを買ってすぐに中へ入っていった。

 少ししか見えなかったが、あれが彼女か~、と思う。

 タケノシタ君とそんなに変わらないくらいの、少し背の高めな女の子。横顔しか見えなかったけれど大人っぽい綺麗な子だった。

 そっかそっか、他校にいても、やっぱ休みの日はちゃんと会ってデートしてるんだね。

 羨ましいな。彼女がって言うよりも、一緒にいる二人が羨ましい。



「今さ、タケノシタいたね」というアキラ。

意外に気付いてはいたんだな。

「彼女といたね~~」と私。

「なんか思うの?ちょっと哀しいとか嫌だとか。好きな人に最多で選んでたんでしょ?」と聞かれる。

「うん。なんか羨ましいよね!ちょっと見ただけだからなんとなくしかわからないけど、ほっこり仲良さそうな感じの二人だった。きっと一緒にいるだけで嬉しいなって思えるような感じなんだろうね」

「さあ」とアキラは全くの人ごとだ。「どうなんだろうね」

 そして恥ずかしそうに小声で付け加える。「私はジュンと歩けて嬉しいけど。私にもこんな可愛い友達いるってみんなに見せて歩けてる感じ」

「…」アキラの顔をマジマジと見つめてしまう。「アキラ…私アキラが面白くない冗談で言ってるのか、無意味なリップサービスで言ってるのか、マジで頭おかしくなって言ってんのかわかんない時がある」

「私はいつも本気で言ってる」

「おかしいおかしい」

「おかしくない」

「おかしいって」

アキラがニコニコしてるので私はもうほっておく事にした。



 買い物帰り。いいって言っているのになぜか私を家まで送り届けようとするアキラ。でもアキラの方がヤバいよね。ショートパンツなのに。

 それに…どうしたんだアキラ。フードコートのドーナツ屋でも私のために飲み物を運んで来ようとするし。

 彼氏か。

 結局私の家に一緒に帰って、アキラに見とれた母さんが夕飯を作ってくれてアキラも一緒に食べ、母さんの車でアキラを送って帰る事になった。



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