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しかし、────バンッ!
「──なに、逃げようとしてるのよ?!」
駆け出したウィルを捕まえたのはなんと、ビヴィアだった。
彼女は怒気に顔を染めて、華麗に決まった一本背負いで床に倒れたウィルの襟首を掴み、
「アンタね! 自分が言ったんでしょ! 「この世界は、フラグなんかに管理されてない」って!!」
ビヴィアの声の一部はノイズになって聞き取れない。おそらくニホンゴが混じっているのだろうが、彼女の言いたいことはなんとなく理解できた。
ウィルに感情的に説教を垂れるビヴィア。私は、
「シャロル、リャーラ、少しの間、廊下に出ていてもらえるかしら?」
前世を覚えている転生者のみの話し合いの場をもつため、シャロルたちには退席を願いでる。
「はい、承知しました」
「ああ、わかった」
「うん、わかったわ」
シャロルたちが廊下に出て扉を閉めるのを確認して、
「ビヴィア、そのくらいにしなさい。
ウィル、話があります」
私は怒りに任せて説教を垂れるビヴィアを宥め、床に倒れたままのウィルにそう言う。
ウィルを部屋のソファに座らせ、私は対面のソファに座る。そして、ビヴィアはもしものウィルの逃亡に備える。
「──さて、ウィル。このまま、とっちつかずの態度のままなら、来月の末に私が独り言で言った通りにあなたを解雇するわ」
──ガタンッ。
私の言葉にソファから立ち上がって逃げようとするウィル。しかし、
「逃げるな!」
ビヴィアに両肩を押さえられ、ソファに逆戻り。
私は話を続ける。
「──そこで、あなたに一ヶ月の猶予を与えます。これから先、ウィル・イレビドゥスクピディタースとして生きるのか、大神 実の続きを生きるのか? 何方かを選びなさい。但し、あなたが大神 実の続きを選んでも、私はあなたの恋心に応えることはないと肝に銘じなさい。それと、何方も選ばなかったら、本当に解雇します。重々心得て、答えをだしなさい。以上です」
そう締めて、私はソファから立ち上がると、扉を開けてシャロルたちを部屋へと入れる。
──無言で沈黙したままソファに沈むウィル。これから先、彼がいずれの道を辿るにせよ、ここが彼にとっての最初の分水嶺となろう。
私はシャロルたちと楽しく談笑しながら、視線は独り悩むウィルのことを無意識的に気にするのだった────
2話 完




