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納税の繁忙期。
私こと──フィーリア・ミセリアレブス・レーグラは、甘く見てました。納税期の忙しさというもの。想像を超えるブラックな職場に。いや、だってさ、私の前世が払ったことがある税金なんて、消費税くらいだけだったし……。
納税が始まる初日。私はお父様に連れられて、王宮に出仕。そして、そこから屋敷には戻ることなく今日に至るまで、日本の財務省にあたるであろう官僚部屋でお父様他官僚に混じって書類と格闘していた。
「──にゃーっ!! やってもやっても、終わらなーい!!」
現地の密偵からの密告書類と納税された書類を見比べ、差異がないならお父様に提出。この作業を延々と繰り返す。
中には下士官の計算ミスなどの書類も混じり、もう、てんやわんや。
次から次に運び込まれる書類は机の上で山となり、堆く聳える。
剰りの仕事量にワークハイになった私は何を思ったか、仕事外の時間に“とある魔法陣を構築”した。その内容はまんまPCである。これなら、書類だけの作業よりは少しは楽になると。
徹夜が明けて、正気に戻った私は自分で構築した魔法陣が、今現在ではなんの役にも立たないことに気付くと、
「……なんの為に、徹夜までしたのかしら……?」
自らの徒労に愕然とし、この世界の余り美味しくないエナジードリンク剤を呷るのだった。
そんな多忙の日々の中、
「……ん? なんだ?」
仕事部屋の入口の方が、俄に騒がしくなると、すぐに波を打ったように静まり返るという奇妙な現象が起きた。お父様が疑問を持ったものの正体、それは、
「……へ、陛下!」
──この国のトップ、国王陛下のお出ましだ。しかも、燻し銀な王太子を伴い、悠々と歩いてくる。
作業していた官僚は手を止め、座っていた机の椅子から立ち上がってその場で会釈の体勢で固まる。まったく、陛下はこのクソ忙しい時に抜き打ち視察とは、何を考えたいるのやら……。
私も官僚に倣って、会釈の体勢のまま、そんな事を考えていた。
「やあ、レーグラ卿、仕事は順調かね?」
「はっ! 現在は税収期の繁忙期なれど、恙無く作業は進んでおります!」
──そんなワケ、ないでしょ! お父様! 机の上の書類の山、山、山! どこが、「恙無く」なんですの?!
私はそんな事を考えながら、じりじりと他のガタイの良い官僚の背後に移動する。理由は何だか分からないけど、頭の中で“隠れろ!”と本能が訴えていた。そして、それは正解だったようで、幾つかの陛下からの質問に答えていたお父様に対して、陛下が、
「──ところで、君のご息女が手伝いに来ていると聞き及んだが?」
案の定だ。私はお父様からは死角の位置に移動済み。誤魔化せるかは半々だけれども、しないよりはマシね。
「は。我が娘は…………。もし訳ありません、陛下。どうやら、娘は席を外しているようで、居りませぬ」
──よし! お父様からは死角に入っていた事が功を奏した。あー、バレるかとハラハラした……。
ところが、王太子殿下が机の上に放置していた、この世界でのPC構築の魔法陣が描かれた“私の徒労”を発見し、
「……ふむ、これは貴公の息女が描いたものか?」
そう、お父様に問い、お父様も、
「はい、殿下。それは、我が娘が描いたものに違いありません」
と答える。そして、王太子は立て続けに問う。
「これは、マジックアイテムの核の様だが、どのようなマジックアイテムなのかね?」
「えーと……、確か、娘は『コンピータ』という、物事の演算を早める物だと、言っておりました」
──ちょ、お父様! 『コンピータ』でなく、『コンピュータ』です! と、心の内でツッコむ。しかも、説明もざっくり過ぎ! ま、まあ、私もPCが何たるかなんて説明できないが、もう少し説明には言葉を選ぼうよ、ともツッコむ。
「ほう、『コンピータ』なる新たなるマジックアイテムか。よし、これは我が貰っていっても文句あるまい!」
──滅茶苦茶、文句ありますよ! 人の努力の結晶を返せ! とは、口に出して言うワケにもいかないので、仕方なしにPCは諦めよう。ま、あの魔法陣はマジックアイテムの花火と同じで、立体的にしないと機能しないし、PCを動かす為の動力も未記入の未完成品だ。実現はかなり先になることだろう。しかし、本当にPCは便利なのに……残念だ。王太子に目を付けられたのが“運の尽き”ね。




