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沈黙。潮騒と遠くの観光客の声がやけに響く空間。
ウィルはよほど緊張しているのか、ウロチョロを止めない。
それから、どれくらいの時が流れたか、体感時間で数時間後。漸く、立ち止まったウィルは私の正面に立ち、
「……こ、コレ! 昨日、看病してくれた、お、お礼だ!」
そう言って、ウィルは紙袋を差し出してきた。私は、彼の緊張による汗で湿ってしまった紙袋を素直に受け取り、
「開けてみても?」
そう問いかける。しかし、ウィルは、
「ダ、ダメだ! 袋を開けるのは、その、部屋に戻って……からで……」
何故か言葉が尻すぼみになりながら、そう答える。まあ、そう言うのであれば、部屋に戻ってから開けるとしよう。
それよりも、
「──ねえ、ウィル。横に座って。話があるから。ほら、早く!」
しかし、ウィルは、私の前に立ったまま。
「なら、そのまま、聞きなさい」
私はウィルの瞳を見詰め、
「ねえ、ウィル。あなたは、もうそろそろ、“大神 実であること”を辞めようよ」
そう告げる。いつまでも、前世の柵みに縋るのは間違いだと私は思っている。前世は前世と割り切らなければ、今世の意味はどうなる?
「……で、できるワケないだろう……。そ、そんことをしたら、わ、私のマコトへの恋心は、どうなるのよ!!」
それは、大神 実としての悲痛な叫びなのだろう。しかし、残念ながら、私はソレには応えられない。例え、自分が前世だったとしてもだ。
「そうね……。そんモノは棄てるか、その恋心には蓋を閉めてあげなさい。私に向けられても迷惑なだけだから」
酷な言い方だけれども、これが一番だろう。




