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海でのバカンス、一日目。
朝。
「……ふぁー、おはよう、シャロル」
「はい、おはようございます、お嬢さま」
私はベッドから起き上がると、ホテルのロゴが入ったボウルに汲まれた水で顔を洗う。
シャロルが出してくれたタオルで顔を拭きながら、
「あら? ウィルも、もう起きてるのね?」
スイートルーム内、寝室の先の扉が開いており、先のリビングに私はウィルの姿を捉えた。
「はい、ウィルは海遊びが待ち遠しくて、私よりも先に起きていたのですよ」
「まあ! ホント、子どもね」
「ええ、そうですね」
ウィルの微笑ましさにシャロルと談笑する。その後、サマードレスに着替え、ビヴィアにも手伝わせてメイクをする。
「よし、さっすがは私! お嬢さまのメイク、バッチリね♪」
「ありがとう、シャロル、ビヴィア」
私は二人に礼を述べて化粧台の前から立ち上がる。
「では、朝ご飯に行きましょう」
「あ! 私はパス!」
「あら? ビヴィア、朝はビュッフェで、席こそは使用人とは別だけど、一緒に食べられるのに、いいの?」
「ッ! なんだ。それなら、そうと言ってよね。昨晩みたく、眺めてるだけなんて御免被るわ」
まったく、ビヴィアはホント、早とちりね。私はシャロルとビヴィア、そして、リビングで待っていたウィルを連れて部屋を出るのだった。
朝食後、
「うっしゃー! 海、行こうぜ! 海!」
「私も海に行きたーい!」
ウィルとビヴィアが騒ぎだす。まあ、行かないと二人が煩いだろうから、
「はいはい、海に行きましょう」
「イエーイ!」
「やったー!」
テンションが爆上がりの二人。私はシャロルと顔を見合わせて一緒に肩を竦めて、
「「ヤレヤレ……」」
となるのだった。
ホテルを出て海岸に続く道を私はシャロルが差す日傘の影に入りゆっくりと歩く。ウィルとビヴィアは我先にとビーチへとダッシュしていった。
暫し進むと、
「おい! 貴様ら、このお方を誰だと思っている? 畏れ多くも、メグシャム男爵家の次男──パルウム様なるぞ!」
「頭が高い、控えろう!」
なにやら、変な輩が蔓延っていた。
見れば、そこには先行したウィルとビヴィアが困り顔で「どうしようか?」とヒソヒソ話をしていた。
「おい! 無視するな! 頭を垂れるんだ!」
痺れを切らした男爵家の次男の取り巻きがウィルへと近付いていく。
「──なにをしているのですか?」
私は声を張り、ビーチにいる男爵家の次男と取り巻きたち、それとウィルとビヴィアの二人の視線を集める。
「あん? 誰だ、テメーは?」
なんとも品のない取り巻きだ。私は一つ咳払いをしてから、
「ここはホテル側のルールで伯爵家以上とそのの関係者以外の者の使用を禁止されています! 貴方がたは男爵家の次男とその関係者ですよね。早々にこの場より退散なさい!」
毅然した態度で声高々に告げる。対して、男爵家の次男の取り巻きは、
「誰も使う奴がいないビーチを俺らが活用してやってんだよ! なにが悪い!?」
聞く耳持たずの自分ルールのゴリ押し。典型的チンピラ理論だ。
私は一度息を吐き、
「私は、レーグラ侯爵家の息女──フィーリアです!
パルウム・メグシャム、並びにその関係者たち、民の規範とならん貴族が観光地のルールも守れず、なにが貴族ですか! 恥を知りなさい!!」
私の一喝に、
「……んなっ?!」
「マジかよ?!」
「……こ、侯爵家……だとっ!?」
「……クソッ! 行くぞ!」
すごすごと退散していく男爵家の次男と取り巻きたち。しかし、
「はぁー、アレ、逆恨みしてるわよね……」
「はい、そのようでね」
私はシャロルと厄介事の暗雲に辟易するのだった。




