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旅五日目。
今日はトランプもせずに、誠は馬車の窓の外を見ていた。誰も言葉を発する者はおらず、静寂が馬車の中を充たしていた。
──うーん、沈黙というのは前世の頃から苦手だ。オレは視線を馬車内と窓の外とを往き来して話題を探そうとするが、見付からない。
そうこうしている内に、昼メシを食べる町に着き、昼メシ中はいろいろと楽しい会話があったが、馬車の中に戻ると、又もや沈黙が馬車内を支配していた。
なんたる気不味さ。勿論、この気不味いのはオレだけで他はそうでもないことがある。が、オレとしては気不味い。なので、
「な、なあ、マコ……お嬢さま、なんか話を……」
「ごめん、ウィル。いま考え事してるから、また後で……」
アウチ! 誠に素気なく会話を断られた。
視線をビヴィアに移すも、視線を逸らされ、ならば、シャロルはと横を見るが彼女は窓の外を向いたまま、こちらを向く素振りもない。
──ぬあぁぁあー! 沈黙が、マジで辛い!
そうして、夜になり。
オレは今日も馬車の番として、馬車で雑魚寝である。
今日も日記を書き終えて、荷物に仕舞い、座席に横になる。
ランプは人がいることのアピールなので消すこと無く、ランプに照らされた馬車の天井を見詰める。
「……はぁ……」
思わず、ため息が漏れる。屋敷じゃ、物置部屋で一人で寝ていてもも、屋敷本館には誠がいると安心できたが、旅の中だとホテルに居ると分かっても不安が募る。
どれくらい時が経っただろうか?
──コンコンコン。
馬車のドアが叩かれる。いったい、誰であろうか?
オレはガチャリと馬車の扉を開ける。すると、
「──ごめんね、実。つらい思いさせちゃったよね……」
誠がいた。だが、ああ、これは夢だ。誠がこの世界に生まれ変わって私の名前を口にしたのは互いの素性を確認したときのみ。それ以外では、誠が俺の名を呼んだのは、常に現在の名前──ウィルのみだった……。
──でも、夢ならイイよね?
「──誠っ!!」
オレ──いや、私は夢の中の現在の姿の誠を抱き締めていた。更に、自分が前世の姿であることも認識していた。
──ああ、側にいるのに思いが伝わらない……。なんと、もどかしいことか……。なら、この夢の中でも……──
「──……おい、ウィル!」
「……あ゛? チッ、醒めちまった……」
「……うっわ、寝起きにキレられた……」
折角、いい夢を見ていたのに、ビヴィアに起こされて実に不機嫌。
「……ふぁあー……」
オレは欠伸を噛み殺し、旅の六日目に臨む。
旅六日目。
今日は大きな変化があった。街道を行き交う馬車が増え、街道はゴミゴミしだしたのだ。
「もうすぐ、観光地のサネイラね」
「はい、馬車の数も多くなってきましたね」
「お! マジか! ってか、海、見えないかなー?」
誠たち女性陣三人は、昨日の沈黙が嘘のようによく喋る。やはり、こうでなくちゃ!
オレは馬車の窓から外を眺めると、ゴテゴテのデザインの馬車が並走していた。
「うっわー、趣味が悪いわね……」
「そうですね、あの家紋は地方の片田舎の子爵のようですね」
「へぇー、貴族って悪趣味もいるのね……」
並走する馬車を見て、やいのやいのと言いたい放題の誠たち。まあ、誠は侯爵令嬢だし、大丈夫か。
こうして、観光地のサネイラまでの道程は恙無く、進んでいった。翌日の七日目に盗賊の襲撃に見舞われるも、護衛の傭兵団や他所の馬車の護衛たちにより、盗賊は撃退され事無きを得た。
途中、盗賊にやられた馬車を見たが、幸いにも死人は出なかった模様。
そして、気分がブルーになる事もなく、オレたちは海のバカンスを過ごす、サネイラ・ビーチに辿り着いたのだった。




