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侯爵令嬢は商会に引きこもりたい!  作者: 白月 仄
2話 一章 海へ行こう
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 それから予定通りの三日後。ちなみに水着は昨日に屋敷に届いて、私のトランクケースの中に入った。

「──旦那さま、奥さま、お嬢さま、いってらっしゃいませ!」

 家令のゲイルの挨拶を合図に、二台の馬車が屋敷から出発する。先を行く馬車の中に乗っているのはお父様とお母様、それと両親付きの侍従と侍女が各一人ずつ乗っている。ちなみに、各々の馬車の馭者は両親のもう一人の侍従と侍女が担当している。次に二台目には私とシャロル、それと、ウィルとビヴィアの四人が乗っている。さて、まとめると、海へのバカンスのメンバーはお父様、お母様、私と、侍従と侍女が合わせて七人の計十人の旅路だ。さらに、街と街の間の安全のため、護衛の傭兵を雇っている。

 馬車は貴族街を抜け城壁へと向かって進む。雇った傭兵は城壁を抜けた先で合流予定。

 大通りを抜け、城壁の門を通過し、傭兵と合流のため馬車は一時停止。

 待つこと暫し。

「──すみません、遅くなりました!」

 響いた声に、そちらを向くと、そこには馬と幌馬車を引き連れた傭兵団の姿(?)が? んー、傭兵団?

「──ほら、見てよ、ウィル。ビキニ鎧なんて、ゲームの世界にしか存在しないんだから! やっぱり、この世界は────」

 ……ニホンゴで騒ぐビヴィア。内容は不明ながら身振り手振りから、TPOを弁えない眼前の存在を指しているのは分かった。そう、傭兵たちは、あろう事かビキニで出来た鎧を装着していたのだ。その数、四人。そして、そんな中に影を潜ませる男が一人。の計五人の傭兵団。

 お父様とお母様は、奇抜な出で立ちの傭兵団にフリーズ。お父様たちの侍従侍女も右に同じ。シャロルもまた、TPOを弁えない格好の傭兵団を見て固まっていた。で、まともに動けるのは私とウィルとビヴィア。尤も、ビヴィアは何やらはしゃいでいて、冷静な話などは無理。実質、私とウィルの二人だけ。

 取り敢えず、

「お待ちしてました、傭兵団エターナル・フェニックスの皆さん。ところで、其方の格好は?」

 代表して私が営業スマイルで応対。

「はい、この格好は私たちの一張羅です! なにしろ、この度は侯爵家の皆様の護衛。失礼のないのよう、この通り一張羅で罷り越しました。あ! 私はこのエターナル・フェニックスのリーダーのリャーラと申します」

 懇切丁寧なリャーラの挨拶。しかし、

「リャーラさん、僭越ながら、服を着て頂けませんか? 皆さんは平気のようですが、私たち貴族にとって、場を弁えない破廉恥な格好は迷惑です!」

 キッパリハッキリと言ってやる。既に奇異の視線が彼女たちに突き刺さっていた。もっとも彼女たちは毛ほども気にしていないようだ。

「……まあ! そうでしたか!? ですが、タツヤは確かに「この格好が貴族に対する最上級の敬意になる!」と……」

 ──はっはーん、私はピーンときた。名前からして、転生者──いや、この場合は転移者の臭いがしていたが、傭兵団の厨二病な名前と合わせて、確定だ。

「シャロル! 悪いのだけど、彼女たちにあなたの予備の服を貸してあげて」

「……は。あ、はい!

 皆さん、どうぞこちらへ」

 私の呼びかで元に戻ったシャロルに促され、エターナル・フェニックスの女性団員たちは不服そうにそちらへ。

 さて、私は影でこそこそしていた男──タツヤなる人物を捕捉する。

「──はじめまして、タツヤさん。私はレーグラ侯爵家の息女のフィーリアと申します。

 さて、率直に申し上げますと、公の場で婦女子にあの様な格好させるなど、控えめに言ってもクソ男ですね! それと、デタラメな貴族の常識を彼女たちに教えないで下さいますか? 雇った我々の方が、頭を疑われてしまいますので!」

「──なん……だと……!? ビキニアーマーが公序良俗に反しているだと?!」

「当然です!」

「そりゃ、当然だな」

 驚くタツヤに、私とウィルの意見一致をみた。それに、

「あなた、魅了の魔眼持ちよね。魔力垂れ流して常時発動とか、クソにも程があるわ!」

 そう、このタツヤなる男は、魔眼持ち。魔法使いが生まれるよりも更に低い確率で世に誕生する。絶滅危惧種と言っても過言ではない。

 ちなみに、この世界の魅了は“好意の有る無し”で効果が発動するかどうかが決まる。僅かでも、相手に好意を抱くと魅了に掛かり、魅了を掛けた相手の言いなりになる。だが、逆に好意さえ持たなければ、どうということはない。

「…………え? オレ、魅了の魔眼、持ってるの?」

 ──……コイツ、気付いてなかったようね。でも、丁度いいわ。アレの性能がどこまで有効か確かめるチャンス。

「──さて、皆さんが服を着たようですので、そろそろ出発しましょう」

 衣擦れ音が止んで、私が振り返ると其処にはシャロルの私服を借りたリャーラたちの姿。それと、お父様たちもフリーズが解けたようで、私の態度を見て馬車の中へ。

 漸く、バカンスへの本当の出発ね。



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