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季節は夏真っ盛り。
「──なあ、海、行きたい!」
「あ、私も海に行きたい!」
それは、お父様が収穫期前の繁忙期前の長期休暇を取った午前中の話。
侯爵家の私の自室で暇を持て余していたウィルとビヴィアが騒ぎ出した。ウィルもビヴィアも、そして、この私──フィーリア・ミセリア・レーグラも地球からの転生者である。但し、各々のスタンスは異なる。
「……お父様に頼んだりはしませんよ」
私はキッパリと言う。侍女のシャロルが紅茶を注ぐ音のみが、しばし続き。私が読む本のページを捲る音がコントラストを奏でる。そして、
「えー!? そりゃないよ、マコ──お嬢さま!」
「そうですよ! 転生ファンタジーといえば、夏は海がテンプレじゃない!」
執事見習いのウィルと侍女見習いのビヴィアが騒ぐ。ちなみに、ビヴィアの「そうですよ!」から後のニホンゴは何を言ってるのか私にはもう分からないが、ニュアンス的に理解した。
「海なんて、暑くて茹だるだけじゃない。何がいいのか、私にはサッパリよ」
「おいおい、マコ──お嬢さま、そこは譲るワケにいかない論点だ! 海ってのは、人を解放的にする! 特に恋愛では進展が一番望める絶好の機会なんだぞ!!」
「そうよ! そうよ! 夏の海にはイベントが豊富なんだから! ルート分岐も集中してるんだから!」
……別段、私には恋愛には興味ないし。ってか、正直な話は前世からの影響が色濃い。
──前世において、ウィルの前世の大神 実は、肉食系と呼ばれる女子だった。何故なら、朝は私の前世である小兎 誠の部屋に上がり込み、布団への勝手な潜り込みや人には言えない事をやらかしていた。おかげで、私──いや、当時の僕は“恋愛なんて、懲り懲り”という思考だった。それが、今世にも尾を引いている。
──コンコンコン。
おや? 誰だろうか?
「どうぞ」
私の入室許可に、ガチャリとドアを開けて入ってきたのは、
「やあ、フィーリア」
お父様だった。私は読んでいた本に栞を挟んでサイドテーブルに置き、席を立って出迎える。
「これは、お父様。どうかなさいましたか?」
「うむ、実はな今年の家族旅行は、家族皆で海にバカンスに行かないか?」
「海、キタコレ!」
「さっすがは、侯爵さま! 話が分かるぅ!」
お父様の提案に私より早く反応を示すウィルとビヴィア。
……さて、どうしたものか?
「侯爵様のお話、お受けした方が宜しいかと」
シャロルがここにきて口を挟む。私はその心はと聞けば、
「先程、ウィルが言っていた通り、夏の海は人を解放的にします。そして、侯爵様と奥様は……──」
「──ああ、成る程ね。
はい、分かりましたわ、お父様! 海へのバカンスに参りましょう♪」
私からの快い返事にお父様は、
「おお、そうか! では、直ぐにでも遠出の馬車を用意せねば、な!」
私が了承した事を大喜び。しかし、今年の行き先が海へのバカンスとは……。例年なら、王都から近場の避暑地だったのに……。ま、いっか。




