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後日。憲兵から届いた報告書によれば、誘拐犯に依頼したのは、
「──デオパーラ商会のようですね。確か、あそこの商売はマジックアイテムのみでしたからね」
クリスティーナが報告書を読み上げる。私としては他商会への対応は、与り知らないところなので、
「ふーん、そう」
と、だけ返すのみ。
「じゃがのう、間者が我らが商会に潜り込んでいるとなると、この先、遣りづらくなるのう」
「大丈夫ですよ、ナルタス様。槍玉になるのはサミラーナですから」
「お嬢さま、そんなー……」
私のスケープゴート役であるサミラーナが泣き付いてくる。そんな、微笑ましい一幕も、
「──さて、次に各方面の催しにおいて、我が商会の花火を使いたいという依頼が、かなりの数で舞い込んでいます」
クリスティーナの次なる報告で、場の雰囲気はいつもの真剣モードへと移り変わる。
「……そうなると、マジックアイテムの花火を専用に造るラインが必要よね? 何処かに腕の良いマジックアイテムの職人は余ってないかしら?」
「……そうじゃのう。ちと、卑劣な手段になるが……」
「デオパーラ商会から、口の硬い職人を引き抜きましょう。既に、“要人の誘拐を企てた”という噂話で、あそこの運営陣はガタガタです。職人を引き抜くなら、今が好機です」
「……なる程。それは、よさそうね」
「……え? それって、火事場泥棒とか……──」
「サミラーナよ、商売は自然の野生と変わらぬ、弱肉強食なのじゃ」
さて、さらに後日。
私は、お父様の執務室にいた。執務室内には、お父様、お母様、家令のゲイルをはじめとした各職種のリーダーがズラり。
「──フィーリア、先日の商会のマジックアイテムの実験の件の成果を基に議論をした結果、我が家の家督を正式に……──」
「──慎んで、お断りします!」
私は条件反射的にそう叫んでいた。冗談ではない。態々、お父様とお母様に疲れが取れる妙薬と偽って、ハッスルしたくなる薬を渡しのだ。家督はいずれ生まれて来るであろう“弟”に取っておくのが上策というもの。
「お話しは、以上でしょうか?」
「……あ、ああ……」
「それでは、私は失礼致します」
私はくるりと踵を返し、お父様の執務室を辞するのだった。
「……はぁー、これで一先ずは様子見ね」
私は自室に戻ると、シャロル、ウィル、ビヴィアが見ているが、ボフッとベッドに倒れ込む。庶民向けの明かりに湯沸かし器。それと、真ん丸な花火の普及。この世界で、中学卒業から約三ヶ月で出した、私の成果。ちなみに、お父様の手伝いはカウントしない。理由は家督は継ぎたくない、から。実に順調なすべり出しだろう。
そういえば、今日は、お父様がお休みで家に居るので午前中はフリー。まあ、午後も予定は今のところないのでフリーなのだけどね。
ならば、午前も午前もフリーなのは久し振りだ。言っとくが、五月病のときはノーカンというか、出掛けるなんて無理だった。なので、
「──街へ出よう!」
私はそう叫び、倒れ込んだベッドから跳ね起き、
「シャロル、ウィル、ビヴィア、街へ出るわよ! 皆、私服に着替えてきなさい!」
そう命令するのだった。
屋敷の敷地、使用人が使う門の前。私服に着替えた私たちは、
「──す、すまん、遅れたか?」
一番最後に着たウィルに、私は、
「はぁー、あなたね、執事見習いなんだから、いち早くきてなさいよ!」
そう文句を言う。
「……いや、オレの自室は屋敷裏の物置小屋だし、マコ──お嬢さまたちより先に着くのは物理的に無理だぜ!」
まだまだ、前世の感覚が抜けないウィルを一瞥。ま、それはいいわ。
「それぐらいの気概で行動しなさいって、言ってるのよ!」
「……ああ、分かったよ」
まあ、これで振り回される側の気持ちがウィル──ここは敢えて、実にも分かったことだろう。前世の意趣返しのつもりではないが、そうなってしまう。
詰まりは、これが前世からの縁なのだろう……。
「それじゃ、行きましょうか」
「はい、お嬢さま」
「おう!」
「わーい、久々の外だー♪」
門番に出掛けてくる旨を伝え、私たちは街──屋敷の敷地から王都市街へ。




