↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侯爵令嬢は商会に引きこもりたい!  作者: 白月 仄
1話 四章 花火と誘拐事件と
PR
21/56

21

 魔法陣を用いた打ち上げ花火の試作品の実験当日。

 予定よりも早く実験日の日時が露見し、ならばと、逆に大々的に宣伝広告を王都近辺の町村に流布。その結果、現在、王都中には観客がわんさかと溢れていた。普段から、お祭り騒ぎな王都は今や英雄の凱旋パレードを待つ民衆の様相を呈していた。

 時刻は夕刻。

 花火は夜に上げるのがセオリー。なので、試作品といえど打ち上げは夜になってから。

 さて、実験の成果を拝む前に、

「ビヴィア、これは日頃からお世話になっている貴女へのお小遣いよ。今日は一杯遊んできていいわ」

 普段は侍女服のビヴィアに煌びやかなドレスを着せ、お小遣いも渡す。

「え? マジ? マジでいいの?」

「ええ。存分に遊んできていいわよ」

 ビヴィアは「いいのか?」と確認する。当然、私はそれに首を縦に振り肯定する。

「よっしゃーっ! 私の時代がキター!!」

 有頂天で喜び吠えるビヴィア。私は車の扉を開け、

「さあ、行ってらっしゃい♪」

 彼女を送り出す。

「うん♪ 行ってくる♪」

 そう言って、ビヴィアは車の後部座席の開いた扉をくぐって夜の王都に飛び出した。

「では、後は予定通りに──」

 私はビヴィアに侍女を付け彼女の後を追わせる。言っておくがビヴィアの護衛ではない。悪巧みをしている連中に捕まった時用の連絡係だ。

「──さて、私たちも行きましょう」

 侍女に変装した私は、車の後部座席から外に出る。続いて、シャロルとウィル。私は既に遠くに背中が見えるビヴィアを一瞬だけ一瞥。そして、そうするのが当然のように自然な侍女の所作で王都を囲う城壁の上へ。


 今日は城壁の上が開放されている。但し、私たちが向かっている城壁の上の見晴台の区域は関係者以外立ち入り禁止の特別席だ。

 階段前に立つ番兵に、我が家の招待状を見せ、城壁の上の見晴台へ。

「──うっひょー! ここだけ、人数が少なくて、広々とした絶景かな! だな!」

 はしゃぐウィルを他所に私は前以て仮設の更衣室にて、ドレスへと着替える。普段着とは異なり、さすがに一人では着れず、シャロル他、複数人の侍女たちに手伝ってもらう。

「──はい、お嬢さま、終わりました。」

「ありがとう」

 メイクもバッチリな私は意気揚々と仮設の更衣室のカーテンを開き、見晴台の特等席へ。

「お待たせしました」

「……う、うむ」

「……」

「こんばんは、お嬢さま……」

 特等席には渋い表情(かお)のナルタス様、プックリと不満顔のサミラーナ、魔法使い二人の態度にどうしていいか困るクリスティーナの三人が先に座っていた。サミラーナに至っては私のスケープゴートゆえか、今回の実験には、この段階にいたっても反対のもようだ。

「そう、不貞腐れないでよ、サミラーナ。」

 私は席に着き、侍女がサッと配膳した紅茶を一口啜り、

「実験が成功すれば、あなたは英雄に匹敵する名声を手に入れるのよ」

「実験に失敗すれば、凶悪犯を見るのと同じ目で見られてしまいます!」

 私の言葉に間髪入れず、反論するサミラーナ。だが、その心配は無用、と言っても無理な話か……。

「……のう、お嬢さま。今からでも、この実験を止めにせぬか?」

「もう、ナルタス様も心配しすぎですよ。例え、失敗しても、打ち上げ場所は有事に於ける防衛陣地予定地ですから、王都に被害は出ません」

 さらに一口、紅茶を啜ってナルタス様の心配に対する言葉に返す。

 ──予定外の実験日の漏洩。おそらく、我が侯爵家の商会の躍進に嫉妬した連中の工作の可能性が大。だが、私はそこを逆手にとり、近隣の町村に実験の内容を明かして大々的に宣伝した。同時に今日の王都のテキ屋が出店される良い場所を申請していた。結果、

「実のところ、成功しても、失敗しても、スーバニュ商会は丸々黒字なのよね♪」

 ──ま、実験の失敗の可能性は限りなく低いけどね。そして、思わぬ、臨時収入。我がスーバニュ商会は、今日だけで年間の総売上高の四割近くに匹敵する売上が見込まれている。

「……あはは、お嬢さまは商売上手ですね」

「偶々よ、たまたま♪」

 クリスティーナのおべっかに笑って対応。

「──さて、そろそろ、頃合いね」

 私は侍女に指示を出し、侍女は城壁の見晴台から暗闇の彼方に見える打ち上げ会場に向けて、マジックアイテムの懐中電灯で合図──モールス信号──を送る。

 そうして、暫し、この場に無音の静寂が広がった時、


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。