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──朝食後。登城するお父様を見送り、今日の午前中は予定が空いているので自室に戻る。
シャロルとウィルも私に続き、私が部屋に入ると定位置で待機。
さて、暇とあらば、
「シャロル、筆と紙を持ってきて」
「はい、お嬢さま」
新しい商品の魔法陣を描きませんと。先日の会議において、庶民への明かりの普及は上々。
「どうぞ、お嬢さま」
「ありがとう」
シャロルが持ってきた紙を広げ、筆にインクを付けて早速、マジックアイテムの核である魔法陣を描く。今度の商品は、鍋型の湯沸かし器。蓋付きで一度スイッチを入れて、そのままで使えるのは一時間に設定。スープなどの煮込みにも対応可能。
「うん、これは、イケそうね。」
となると、特許庁に新しいマジックアイテムの特許を申請しませんと。この商品は、誰でも扱える新たなマジックアイテムを次なるステージに押し上げる物になりますわ。
「……えっと、後は……──」
私は脇目も振らず魔法陣の構築に没頭した。途中でウィルが話し掛けてきたが、雑音ゆえに取り合わず、昼を告げる王宮の鐘が鳴るまで、魔法陣を描き続けた。
ちなみに、庶民向けには鍋型の湯沸かし器だが、裕福層や貴族向けに魔石で動く最新型のコンロも考案。コンロの方は、他の商会が真似しやすいよう敢えての設計にしてある。
「お嬢さま、今日のお昼ご飯は、シェフ特性のポトフですよ♪」
「あら、ならシャロルもウィルも一緒に食べましょう」
「よろしいのですか?」
「ええ。ここは私の自室ですし、お鍋は一つの鍋を皆でつつくのが楽しく美味しいのよ」
「では、僭越ながら、御相伴に与ります」
……あら? ウィルからの返事がない。ふと、彼のことを見やると、
「…………」
不貞腐れていた。どうやら、先程まで魔法陣を描いていたときに、私が無視したのを根に持っているようだ。
──小さい奴。おっと、はしたない、はしたない。
「──どうやらウィルは、いらないようですので、二人で食べましょう」
私とシャロルはポトフの鍋が置かれたテーブルの席に座り、鍋からソーセージと葉野菜を取り分けのフォークで一纏めで取り、
「はい、シャロル♪ あーん♪」
「え!? お嬢さま!?」
「ほーら、あーん♪」
私は構わず、シャロルに差し出す。根負けしたシャロルは渋々、
「分かりました。あーん、ハムハム、ゴックン。はぁー、美味しいです♪」
「うんうん、そうよね♪」
美味しく食べたシャロルに満足し、私は取り分けフォークで煮崩れしていないニンジンを取り、
「あーん、パク。モグモグ、ゴックン。あはー、美味しい♪」
ポトフをシャロルと美味しく堪能するのであった。
午後になり、ナルタス様たちがやって来た。
「──ほう、湯沸かし器に新型のコンロですか」
「お嬢さま、この湯沸かし器の魔法陣はどうなっているんです?」
ナルタス様は私が昼前に描いた魔法陣に感嘆し、サミラーナは魔法使いなのに魔法陣の構造を問うてきてた。勿論、私はサミラーナに懇切丁寧に教える。
「庶民向けに湯沸かし器、裕福層や貴族には新型コンロですか。しかも、コンロの方は他の商会が敢えて真似しやすい造りとは……」
クリスティーナは、私の考えに舌を巻いた。
そうして、今日の会議も時間いっぱいまで白熱し、やがて、
「──うむ、では商会の工房に持ち帰って試作品を造ってみよう」
「……うう、やっぱり、魔法陣の刻印は私ですか?」
「当然」
「まあ、サミラーナはお嬢さまのスケープゴートだから、仕方ないわ」
こうして、私考案の湯沸かし器と新型コンロの試作品の製作が決定して、今日の会議は幕を閉じるのだった。




