15
──次に私が目を覚ましたのは翌日の昼だった。商会の三人も基本的に来るのは週一だし、暇だ。
……体は……、今日も怠くて動けそうにない。
…………そういえば、あの後、ウィルはどうなったのだろうか?
「……シャロル。」
「はい、お嬢さま」
シャロルは側に控えていたようで、直ぐに応答があった。
「……昨日、ウィルはあの後、どうなったの?」
「はい、ウィルは暫く錯乱して暴れた後、現在は自室の物置小屋で大人しく謹慎しています」
「……そう。それじゃ、私はもう少し寝るわ……」
ま、これでウィルも少しはこの世界に馴染めるだろう。私はそう思い、二度寝するので──、
「お嬢さま、眠る前に、少しでも食べ物を口にしてください」
カラカラとカートをベッドの横に押してくるシャロル。そのカートの上には胃に優しそうな料理が載っていたが、私は構わず眠ろうとした。が、鼻腔をくすぐる食事の匂いに、グーとお腹が反応してしまう。
「……分かったわ」
眠ろうとしていた私はよっこいしょと上半身を起こす。
カートに載るは、お粥風のパエリア料理だった。その匂いは嗅ぐだけでも食欲をそそる。
「では、失礼します。ふーふー、はい、どうぞ」
「あーん。もぐもぐ、ゴックン。美味しい♪」
シャロルは私のベッドに腰掛けると、お粥風のパエリアを食べさせてくれた。うーん、空きっ腹に染みる。
私はシャロルに、あーんをして貰い、お粥風のパエリアを完食するのであった。
──数日後。
謹慎を解かれたウィルが復帰したが、先日のような動揺はなく、普段通りであった。
──そして、私が五月病にかかって約一ヶ月が過ぎて、ジメジメした季節。この世界にも梅雨があるようで、そんな季節。
私は漸く鬱が抜けて、五月病より快復したのだった。
「──うーん、よし!」
シャロルがやってくるより早く起き、ベッドから抜け出した私は自らカーテンを開ける。そして、窓を開けると、まだ、顔を出したばかりの朝日が優しく私を照らす。
「すーはー、あー、空気が美味しいです」
梅雨の合間の晴れの日。さて、今日からはしっかりと、お父様のお手伝いもしないと。もっとも、書類の量は半分未満にしてもらわないと。
私はシャロルたちがくるより前に普段着のドレスに着替える。流石にヘアのセットやメイクは侍女たちがこないと無理なので、一先ず、サイドテーブルに置かれたボウルの水で顔を洗い、水挿しからコップに水を注いで呷る。
「おはようございます、お嬢さま。って、お嬢さま、もう、よろしいので?」
使用人用の扉を開き入ってきたシャロルは、既に普段着のドレスに着替えた私を見て、目を間開く。
「ええ、ご覧の通り。全快しましたわ!」
私は自然に微笑み、シャロルにそう返す。
「ああ、お嬢さま、よかったです、全快されて」
少しオーバー気味なリアクションではあるがシャロルは私の全快を喜び、
「さっそく、侯爵様たちにお伝いせねば……──」
「待って、シャロル」
「あ、はい、何でしょうか?」
「私のヘアセットとメイクをお願い。流石にこの頭ではお父様たちに失礼だわ」
「はい! 畏まりました!」
勢い勇んで私の部屋を出るより先に、私のヘアセットとメイクを頼む。




