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暫くすると、お父様は王宮に仕事をしに戻り、お母様もお茶会に出掛けた。
時間は既に午後。
私は何もする気が起きないので、ボーッと寝ている。
──コンコンコン。
「──お嬢さま、クリスティーナ様たちが、お見舞いに来られました」
「……入って、もらって……」
「はい、失礼します」
私の部屋の扉を開け中へと入ってくる三人。シャロルは扉の横で控え、全員が入ると扉をパタンと閉める。
「おや? 今朝、倒れられたと聞いたが、案外と元気そうじゃな」
「はい、三人の顔を見たら、元気が出てきました」
ベッドの横にきたナルタス様とクリスティーナ、そして、サミラーナの顔を見て何故か、それまで出なかった元気が出てきた。
私は上半身を起こして、
「クリスティーナ、新しい魔導灯──懐中電灯の売れ行きはどうかしら?」
「え? ……えっと、ちょっと、待っててね」
何故かクリスティーナは面食らった顔になり、それから急いで鞄を漁り、書類を取り出して、
「……ええ、順調よ。流石は我らが商会のマーケティング部ね。ターゲット層に合わせての販売で、今のところは他の商会とは角が立ってないわ」
「まあ、素晴らしいわ! これなら、早速、次の段階に行けるわね」
ハイテンションの私に、怪訝な表情になるサミラーナ。
「……えっと、お嬢さま、そんなにはしゃいで大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ」
私はニコリとしてサミラーナに大丈夫をアピールする。ホントにさっきまでの鬱が嘘のよう。
「ナルタス様、次は庶民の家向けの明かりですわ!」
私はナルタス様やクリスティーナ、サミラーナとの会話に熱中した。庶民向けに敢えて明かりの質を抑える、などの白熱した話し合いが行われ、あれやこれやと会議の時間は賑やかに過ぎていった。他の雑音が聞こえないほどに。
三人が帰ると、私は電池の切れたようにベッドに倒れ込んだ。
「……あー……、もう……なにも……しない……」
怠い、ホント、怠い。
シャロルが玄関まで三人を見送りしているので、今はウィルと二人きり。
「……ねえ、マコト。本当に大丈夫?」
どうやら、シャロルが席を外しているので、前世のノリで心配してくるウィル。
だが、ぶっちゃけウザい。五月病の所為かもしれないが、
「……いい加減にしてよ、前世の名前で呼ぶの……。本当にウザいから」
それは私の本音で、ウィル──いや、前世の続きを生きる実には残酷な言葉だろう。しかし、これが現実。今を生きるのは小兎 誠ではなく、フィーリア・ミセリアレブス・レーグラ。小兎 誠は既に過去の人物。
私は体に力を入れるのも億劫ゆえ、ウィルが、どんな顔をしているかも見る余裕などない。それに、いつまでも、前世気分ではウィルの命に関わる。ちょうど、よかったのだ。
「…………なんで? ねえ、なんで? なんでよ!?」
男が女口調は違和感バリバリ。それに、ニホンゴで喚かれても、もう何を言ってるのか分からない。ただ、口調だけは分かったが……。
「……ねえ、マコト! ねえ、ったら!」
……だから、前世の名前で……
──バンッ!
「──ウィル!? お嬢さまに何をしているのですか?!」
……ああ、シャロルが戻ったようだ……。




