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バグだらけのVRクソゲーでRTA走ってたら、なぜか現実の異世界だった件 ~「壁抜けカニ歩き」で魔王城をショートカットしたら、神の如き空間跳躍の使い手だと勘違いされています~  作者: 伊桜 瑠夏詩
第1章:Any%走者、世界を壊す

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第13話:スポーンキル(出落ち)の幾何学と、オーバーフローの巨像

白亜の貴族街の中央に位置する、円形の広場。

その中心には、天高くそびえる壮麗な『女神像』が建っていた。これこそが王都のファストトラベル(ワープ)を解放するためのキーオブジェクトだ。

「よし、着いたぞ。この台座のクリスタルに触れればフラグが立つ」

「主様、お待ちください。あの女神像の周囲には、王都の防衛システムである『神聖結界』が張られています。触れれば、王都全土の警備兵が殺到する仕組みに……」

「(分かってるよ。クリスタルに触れると『3分間、大量に湧いてくる衛兵から生き残れ』っていう、無駄に長い防衛イベントが始まるんだろ。しかも敵は無限湧きだ)」

俺はシルフィアの警告をスルーし、女神像の台座には向かわず、広場の石畳の上をウロウロと歩き始めた。

「主様……? 何を……」

「ちょっと待ってろ。今、『座標』を合わせてる」

俺は広場の特定のレンガの模様を見つめながら、ミリ単位で立ち位置を調整し、足元に『違法な火薬爆弾』を一つコロンと置いた。

そして、そこから斜め右に正確に5歩歩き、また一つ爆弾を置く。今度は後ろへ3歩下がり、さらに一つ。

「(この防衛イベントの敵(衛兵)は、ランダムに湧いているように見えて、実は『固定された8箇所の座標』から順番に出現するプログラムになっている。つまり……)」

俺は闇商人から強奪した数百個の爆弾の中から数十個を取り出し、広場中の『何もない空間』に向かって、緻密な計算に基づいた配置で等間隔にバラ撒いていった。

シルフィアは、その不可解な行動を息を呑んで見つめていた。

(……一見すると無作為に置かれているように見えるが、違う。爆弾の配置は完璧な幾何学模様……いや、魔法陣を形成している! 主様は、この広場全体を一つの巨大な『祭壇』に作り変えようとしているのだ!)

シルフィアの勘違いが加速する。

(だが、なぜあの位置に? あの空間には何もない。ただの虚空に、凄まじい威力の爆薬を配置する意味とは……まさか!)

「よし、スポーン位置(湧き潰し)のセット完了。NPC、お前は爆発に巻き込まれないように俺の真後ろに立ってろ」

「は、はいっ!」

俺は頭のフライパンをカンッと叩き、女神像の台座にあるクリスタルに手を触れた。

『警告。不法侵入者を検知しました。神聖防衛プロトコルを起動します』

『女神の剣たちよ、悪しき者を排除せよ』

無機質なシステム音声が広場に響き渡ると同時に、空が赤く染まり、けたたましいアラームが鳴り響いた。

「来ます、主様! 空間が歪み、神聖騎士の軍勢が転送されて——」

シルフィアが双剣を構え、広場を取り囲むように発生した8つの「転送の光」を睨みつけた。

光の中から、重武装の騎士たちが実体化しようとする。

「排除開始——」

騎士の一人が言葉を発しようとした、その瞬間。

実体化した騎士の足の当たり判定ヒットボックスが、俺が「出現座標と全く同じ位置に、1ミリの狂いもなく事前配置していた爆弾」の起爆スイッチ(接触判定)を踏み抜いた。

ドガァァァァァァァァァァァンッ!!!!

「……へ?」

シルフィアが呆けた声を漏らす。

広場に転送されてきた8人の騎士たちは、剣を抜くどころか、完全に実体化する前の「出現モーション」の途中で爆炎に包まれ、一瞬にして光の粒子となって消滅したのだ。

『ウェーブ1、クリア。続いてウェーブ2を開始——』

システムがすぐさま次の増援を同じ座標に転送してくる。

しかし、俺は一つの座標に対して『3個の爆弾』を重ねて置いていた。

ドガァァァァァァァァァンッ!!

「……」

またしても、現れた瞬間に爆散する騎士たち。

一歩も動かず、剣を振るうことすら許されない、完全なる『0フレームでのリスキル(出落ち)』である。

「よしよし、完璧な『湧き潰し』だ。これで俺は何もしなくても、3分間のイベントが終わるのを待つだけ……」

俺はHP1の赤いオーラ(火事場バフ)を纏ったまま、腕組みをして連鎖する爆発を眺めていた。

一方、俺の背後に立つシルフィアは、恐怖と畏敬のあまりガクガクと震え、その場に膝をついていた。

(……見透かしている。主様は、神の軍勢が『いつ、どこに、どのような形で』現れるのかを、完全に予知しておられたのだ!)

シルフィアの瞳に映るのは、敵が現れた瞬間に次々と虚無に還っていく、理不尽極まりない光景。

(戦いすら起こらない。神がどれほど兵を送り込もうとも、主様が敷いた『因果の陣』の上では、この世に誕生することすら許されずに死んでいく! これが、ことわりを支配する者の力……!)

『ウェーブ5、クリア。ウェーブ6を開始——』

ズドォォォンッ!!

『ウェーブ6、クリア——』

順調に敵が自動爆破されていく中、俺はふと嫌な予感を感じた。

防衛イベントは「3分間耐える」か「規定数のウェーブをこなす」ことで終了する。しかし、リスキルがあまりにも速すぎたせいで、わずか10秒で数十ウェーブが処理されてしまったのだ。

「(……まずい。これ、敵の処理速度が速すぎて、ウェーブ管理のプログラムが『オーバーフロー(桁溢れ)』を起こすんじゃ……)」

俺の予感は的中した。

ピーーーーッ!!

突然、システムのアラームが異常なバグ音を発してフリーズした。

空の赤い光が明滅し、空間がガラスのようにひび割れ始める。

『エラー。規定討伐数を異常超過(255ウェーブ突破)。防衛レベルをMAXに強制引き上げします』

『最終防衛機構【黄金の巨像ペナルティボス】を起動』

ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

広場の中央で動かなかったはずの、高さ30メートルを超える巨大な『女神像』に、突如として禍々しい魔力が宿った。

石の表面が剥がれ落ち、中から黄金に輝く機械仕掛けの巨神が姿を現す。

通常プレイでは絶対に呼び出されることのない、チート行為や不正を検知した際にのみシステムが投下する、絶対に倒せない『処刑用ボス』だ。

「な、なんという事ですか……! 女神の御神体そのものが、我々を滅ぼすために動き出した……!?」

シルフィアが絶望的な声を上げる。

黄金の巨像が、広場を丸ごと叩き潰すような巨大な拳を振り上げた。

しかし。

俺は自分のHPバーが『1』であることを確認し、頭のフライパンをクイッと押し上げて不敵に笑った。

「(ペナルティボスの出現……RTAにおいては完全な想定外だ。だが、あの巨像の『振り下ろし攻撃』……あの巨大な腕の当たり判定を利用すれば……王城の最上階まで、一気に『プロップ・サーフィン』で飛べるんじゃないか?)」

「主様! 防げません、お逃げを——!」

「逃げる? 冗談言うなNPC」

俺はインベントリから初期装備の『ひのきの棒』を取り出し、天を覆う巨大な拳に向かって、HP1のまま真っ直ぐに駆け出した。

「あれは敵じゃない。空を飛ぶための『極上の足場エレベーター』だ」

システムの処刑者たる黄金の巨神と、ただのバグ利用者の狂気の激突。

物理演算の崩壊バグ・バトルが今、幕を開けようとしていた。

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