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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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102/103

深層

「バカバカバカ! なんで開けちゃうのよ!」


「開けてはおらぬ。仕舞っただけだ」


「どう見ても開けたのと一緒でしょ!」


ヨーちゃんがわめくが、マオは素知らぬ顔で受け流す。その代わり、明確な反応を示すものが2名居た。


「どうしたの? クロン、レラン」


「エリザ様は平気なのですか……?」


「うぅ、体が勝手に震える」


クロンとレランは、自らの肩を抱いて震えていた。扉があった時はそれほどでも無かったが、扉が無くなると同時に、扉の奥に何かがあると強制的に感じさせられている。


「取っ手すらない無い扉なんだから、開けちゃダメに決まってるでしょ!」


「ならば、横の壁を壊せば良かったのか?」


「そう言う問題じゃ無い!」


その横では、マオとヨーちゃんがまだ言い合いを続けている。


「うるさい……。が、我を目覚めさせたことは褒めてやろう」


奥から、何かが静かに近づいてきていた。そして、近づくと同時にクロンとレランがガタガタと体の震えが大きくなる。


「あ、ああ……」


「ひっ、ひあぁ」


クロンとレランは、すでに話す事もままならないほど恐怖を感じていた。自らがドラゴンの姿であっても絶対に敵わないと本能で感じ取ってしまっている。鎧の妖精であるヨーちゃんは本能が無いから平気だが。


「……リッチ?」


「我をただのリッチだと思うな。初代魔王の我が、自らこの世界の瘴気を潤沢に吸収し、究極体に成ったカオスリッチであるぞ」


「やっぱり、魔王の一人称は我なのね……」


ソルナの呟きに答えたカオスリッチ。そして、どうでもいいことに反応するエリザ。2人はカオスリッチを前にしても変化はない。うっすらと照らされたカオスリッチは、時間の経過を感じさせないほど豪華なマントと、気色悪い血管の様なものが浮き出た鎧をつけていた。


「貴様らが封印の扉を解除したのか? あれは、どこぞの神が我を封印するために用意したものだったはずだが」


「へぇ、そんな特殊なものだったのね。あとで、盾とかに加工できないか見てみましょう」


「それよりも、クロンとレランが辛そうだ。ソルナ」


「バリアー」


ソルナは、マオの言いたいとを汲んでクロンとレランの周りに瘴気を防ぐバリアを張った。おかげで、クロンとレランの体の震えはある程度収まる。しかし、カオスリッチに対する恐怖からの震えは残っていた。


「クカカカカッ。面白い能力だ。お前が今代の勇者か?」


「そうだけど、なんで?」


「伝説の鎧を装備できるものは勇者しかおらぬからな」


「あっ、これをちゃんと伝説の鎧って判断するんだ……」


ソルナは、首からかけているヨーちゃんネックレスを触る。


「過去には、何度も我に勇者たちが戦いを挑んできておる。だが、そやつらを何度倒そうと鎧はどこかへと飛び去り、封印の扉は残った。だが、今回はいつもとは違うようだな」


本来、封印の扉はヨーちゃんを装備した勇者が触れる事で開く仕組みになっていた。だが、裏ボスと言うべき魔王リッチは、当然普通の魔王よりも強いため、いつからか誰も近寄ってはならない場所となっていた。なお、ヨーちゃんは勇者が死ぬたびに元に位置に戻るうえ、自らが伝説の鎧であるという記憶以外は消去されている。また、伝説の鎧は封印を解くカギとして女神が用意したものであるため、この世界では最高峰の防御力を誇る装備ではあるが、最強になれるほどの性能はない。


「ここは戦うには狭いだろう? 我が場を用意しよう。ディメンジョン・フィールド」


カオスリッチが、膨大な魔力を使って魔法を唱えると、景色が歪んで直径数キロの半円が出来る。わざわざ戦う場を用意するのは、初代魔王という矜持があるためであり、普通に不利になるだけである。


「さあ、我を楽しませよ。今代の勇者よ。そして、お前を殺したのちには再び世界を支配するとしよう」


初代魔王。最強にして最悪の、女神の上司である神によって封印された勇者ですら手に負えない化物。なお、わざわざ封印が選ばれた理由は「なんでお前の仕事を俺が片付けなければならないだ。自分でやれ」という上司神の怠慢なだけである。ちなみに、女神では絶対に倒すことは出来ないため、ずっと残り続けている。






 



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