ヒナ(46)、鑑定される
第1章 目覚め編
名前欄を前に、私は迷っていた。
本名は、七海ひなた。でも、この体でそれを書くと、「七海ひなた(46)」になる。それは、さすがに、可愛すぎる。
「……ヒナ、でいいや」
私は、名前欄に「ヒナ」と書いた。エマが、用紙を受け取って、読み上げる。
「ヒナ、さん。お年は、四十……六歳」
「はい」
「……ヒナ、さん。四十六歳」
「二回言わなくていい!」
エマの目が、私の顔と用紙を、三往復した。
ホールのあちこちから、笑いをこらえる声が聞こえる。
「ヒナちゃんだってよ」
「四十六だぞ」
「ちゃん付けは、きついだろ」
「ちゃんは、悪くないし!」
ちゃんは、悪くなかった。
エマは、気を取り直して、カウンターの下から、透明な水晶玉を出した。
「では、簡易鑑定をします。手を、かざしてください」
言われた通りにすると、水晶が、ぼんやりと光る。エマが、中をのぞき込んで、少し眉をひそめた。
「魔力は……三、ですね。ほぼ、ありません」
「三! ワンチャン、増える?」
「増えません」
即答だった。
「スキルは……加齢臭、レベルMAX。腰痛、二日酔い……」
エマは、そこで、言葉を切った。
「……あの、どうして、加齢臭だけ、レベルMAXなんですか?」
「私が聞きたいよ!」
エマは、そっと目をそらした。
「それと、このカードなんですが。登録日が、十年以上前になっていますね。でも、名簿を調べても、該当する記録が、どこにもなくて」
「記録が、ない?」
「はい。なので、新規の再登録として処理します。ランクは、Fからになります」
十年以上前の、カード。記録のない、持ち主。
胸の奥が、また、ちくりとした。
エマは、気を取り直したように、笑顔を作った。
「ギルドのランクは、F、E、D、C、B、A、そして最高位のSです。依頼は、あちらの掲示板から、ご自分のランクに合ったものを選んでください。失敗すると、違約金がかかることもあるので、ご注意を」
「わかった。あの、ちなみに、今日、泊まる場所は」
「所持金は、お持ちですか?」
「……ゼロ」
「まずは、掲示板を、ご覧ください」
優しい笑顔が、逆に、つらかった。




