所持品チェックしたら詰んでた
第1章 目覚め編
腰をかばいながら、なんとか立ち上がる。
改めて見回すと、ここは石造りの大きな橋の下だった。低い天井は、橋のアーチの裏側。さっきの水たまりは、川岸のよどみだったらしい。空き瓶は、数えるのをやめた。
「とりあえず、持ち物チェック。基本でしょ」
ボロボロの革ベルトに、小さな袋がぶら下がっていた。
中身は、銅貨が五枚。しわくちゃの布切れ。そして、擦り切れたカードが一枚。
カードには「ギルド」と読める文字があった。
言葉も文字も、なぜか普通に読める。そこだけは、神様に感謝しておく。説明は省かれたけど。
ただ、名前の欄だけが、不自然に真っ白だった。
インクが消えたみたいに、何も書かれていない。登録日らしき数字も、かすれて読めない。ずいぶん古いカードだ。
そのとき、胸の奥が、ちくりとした。
理由は、わからなかった。二日酔いの頭痛とは、位置が違う。
「……気のせい、気のせい。それより、こういうの、ステータスとか出るんでしょ。ステータスオープン!」
何も起きない。
橋の上を、荷車の音が通り過ぎていく。急に恥ずかしくなった。
「……ステータス、オープン」
小声で言い直した瞬間、目の前に、半透明の板が、ぱっと浮かび上がった。
「出るんかい! さっきの恥ずかしいの、返して!」
【ステータス】
名前:(未設定)
年齢:46歳
種族:人間
職業:無職(元・冒険者)
HP:42/120
MP:3/3
【スキル】
・加齢臭(Lv.MAX)
・腰痛(常時発動)
・二日酔い(継続中)
「スキルしょぼすぎない!? てか、加齢臭だけレベルMAXなの何!? いらない努力の結晶じゃん!」
名前が「未設定」なのも、カードの空白と重なって、また胸がちくりとした。
そして、画面の一番下に、灰色の文字が薄く滲んでいるのに気づく。
【ユニークスキル:解放条件を満たしていません】
「……なにこれ。めっちゃ気になるんだけど」
考える間もなく、お腹が、ぐううう、と鳴った。
橋の上から、人の声と、朝の鐘の音が聞こえてくる。町が、近いらしい。
「まずご飯! 考えるのは、その後!」




