6.公爵家長男 2
翌日の朝。私は寮部屋の窓から外に着地し、クラスへと近道で向かった。勿論、あのアーサーに見つからないようにするため。私は二日酔いで気だるそうにしていた。
気持ち悪い…。まぁ、あのロイド殿下は視察?で3日間いないからひとまず安心よね…。いや、アーサーがいるけどさ。
私はあたりをキョロキョロと見る。
アーサーとは、クラスも違うし流石に授業を止めるような野蛮な真似はしないでしょ。…それに聖女の私に、ましてや女を毛嫌いしているのに話かけてはこないでしょ?
ズキンと痛む頭をおさえる。
それにしても、頭が痛いのよね。…昨夜のことも微妙に途切れてるっていうか。アーサーの馬を盗んだっていうのは覚えてるんだけど…。なんで盗んだん私?選択肢とか出ちゃったのかな?多分、攻略対象だもんね。
ま、今日も授業を頑張りますか!
✧✧✧
キーンコーンカーンコーンという授業の終わったチャイムが鳴った。その直後だった。
「せ、い、じょ、さぁま!」
いきなりローレシアが後ろから抱きついてきた。
「…その呼び方、嫌なんだけど。」
私は露骨そうな表情を浮かべる。
「あぁ、ごめんごめんジョゼア。…ね、昼食食堂はやく行こ!」
「あ…。」
アーサーって食堂行くっけ?いやいやいや。女嫌いのあの男が食堂に行ってるって噂、聞いたことないし。
「うん!行こ!」
ーー大丈夫だよね?
✧✧✧
食堂。そこは、この学びやでひととき過ごせる私にとっては幸せの場だ。
アイスおいしい〜。やっぱ、二日酔いにはこれっきゃない!
聖女だからって王家が負担をしてくれるなんて、なんて素晴らしいっ!こういうときには主人公に転生してよかったって思うのよね〜!
「昼からアイス?」
「おいしいですよ。食べます?」
「んじゃ、1口もらう。」
私がスプーンでローレシアにアイスを1口分けようとしたそのときだった。
キャアア!!
とかいう女子?の奇声。
「あら。なにかしら?」
「どこかのイケメンでも来たんじゃ…!?」
なんとここへ来たのはあのアーサー公爵であった。驚きのあまりに口をポカンと開けてしまう。
な、なんでここに…!?
すると、あの男と目があってしまったのだ。咄嗟にテーブルの下に隠れる。
「ジョゼア?どうしたの?」
「ローレシア…。あの男から、私を離して!」
「転移異能を使えばいいじゃない。こんなときこそ。」
「…あと1分後にできるようになる。」
「あ〜、二日酔いの影響ね〜。ジョゼアぐらいじゃないの?お酒飲むの。」
「元平民だから仕方ないじゃん!」
アーサーも飲みそうだったけど。
そんなやり取りをしてく内に足跡はだんだんと近づいてくるのだった。
「わぁお。推しが来てる…。」
「そんなこといいから、あと1分足止めを!」
「誰を足止めするって?」
それはアーサーの声だった。私は恐る恐る顔を見上げる。そこには冷徹の顔をした氷のイケメンがいた。
いつも以上に凍ってる…。
私はしっかりとテーブルについて、ふたたびアイスを食べ始める。
落ち着け私…。平然と振る舞えばこの男も…。
「公爵様。ご機嫌麗しゅう。」
「そういう誤魔化しはいい。」
ローレシアは「は…イケメン。」と意外と静かに拝んでいた。なにやらニヤニヤとして私達を見てくる。
いや、そんな関係じゃないから。
「俺を連れて転移しろ。」
「…へ?」
すると、彼は私の耳元で囁いた。
「それともみなに知られたいのか?」
そのときだった。丁度60秒がたった。私はアーサーに少し触れ学園の裏に転移をした。
「はぁ…ぜぇ…はぁ…。」
流石に転移するときに加護を持ってない人を連れて行くのは、疲れるわ…。ま、多分二日酔いのせいだけど。
…気持ち悪い。
そんななか、私はアーサーを見た。アーサーは相変わらず氷。いや、いつも以上に氷だった。
「単刀直入に言う。馬を返せ。」
私はその言葉に笑顔で答えた。
「なんのことでしょうか?」
もうしらばっくれよう。処刑されないために。
私の様子にアーサーは面倒くさそうな表情を浮かべた。そして、ため息をつく。
「お前は聖女だ。処罰は簡単にはできない。馬を返してもらえればいい。」
その言葉に「…え!」と笑みを浮かべ、潔く馬の場所を吐く。
「馬はこの学園の元食料庫にあります。あ、ちゃんと掃除したので綺麗ですよ。」
聖女パワーで。
「そうか。ならいい。…処罰はできないが、これだけは言っておく。」
アーサーは真剣な目で私を見た。
「俺に必要以上に二度と関わるな。」
え〜イケメンと関われなくのぉ。ちょっと寂しい。…ん?でもこれって選択肢回避?じゃね?
そのときだった。ウィンドウが私の目の前に出現したのだ。
…ん?え?へ?今かよっ!?
『ーー公爵家長男に必要以上に二度と関わるなと言われた。1.土下座をして馬を盗んだことを誤り、その言葉忘れないでと言い残す。2.了解です。と言って服を脱ぐ。3.わかりました。と言って最後に一発殴らせてもらう。』
…これはさ、もう一択しかなくない?
私は躊躇いもせず、1を押した。そして、身体が勝手に動く前に自分自身で土下座する。
「馬を盗んで申し訳ございませんでした。」
いや、流石に謝らないとでしょ。
「おい。詫びを求めているのか?」
「いいえ。」
私はしっかりと立ち上がり、口角をあげてアーサーに言った。
「さっきの言葉、絶対忘れないでくださいね!」
じゃないと選択肢が出ちゃうもん。
私はそう言い残しこの場を後にした。
「あんな女…はじめてだな。」
アーサーの目にはジョゼアは美しく写ったのだった。
『ーーピコン。アーサーからの好感度が9増えました。』




