2.王子ロイド殿下 1
…行きたくない。
翌日の朝、私は不登校になるかを考えた。けれど、聖女である私は強制的に身体が勝手に学園へと向かってしまったのだ。
最悪。いや、主人公に生まれたことも、イケメンにも囲まれることも幸せだ。…でも、あのクソ乙女ゲーって。…クソ選択肢で私を殺す気?
私が門をくぐり、学園の教室へと向かう長い廊下を歩いていると、昨日殴ってしまった王太子のロイドがいた。
私はそれにすばやく反応をし、物陰に隠れる。
「ロイド様、今日も素敵でいらっしゃいますわ〜。」
「文化祭、一緒に回りません?」
「是非私と!」
「ロイド様、今日も顔面国宝っ!」
「…ロイド様、その顔のお怪我はどうされたのですか?」
女子たちのそう言った声を私は物陰を通して聞いていた。
いや、私も同感だよ?別にこうして隠れてるのも、王子が嫌いってわけじゃない。むしろ、乙女ゲー世界のイケメンなんだから会いたいし、結婚したいとも思う。
でも、あのクソ選択肢の中じゃあ、もしかしたら『自分の首を締める。』とか、自殺行為が出てきそうで怖い。
…さっきも服を脱ぐって選択肢出てきてたし。あーゆーのが普通に出てくるもんなの?いや、怖い怖い。
だから、とにかく攻略対象からは距離を置こう。そうすれば、選択肢は出ないはず…。
そのときだった。王子がこちらに気づいた。そして、どんどんとこちらに向かってくる。
いや、来ないで!また変な選択肢が来ちゃうから。
私は気づいていないフリをして、急いでこの場から離れようとした瞬間、王子が私の名を呼んだ。
「ジョゼア!」
私はその声に身体が勝手に止まってしまった。
「丁度よかった。話したいことがあってな。」
なくていい、ほんとに。ろくなことが起きないから。ほんとに。怖い怖い。
ロイド・パティスリー。この国の王太子殿下。ゲーム内でも結構女子からモテモテで。…ま、定番あるあるのキャラね。
この男はゲームの攻略対象で、メインルートだ。…つまり、選択肢が危険な可能性がある。
逃げたいのに、逃げれない…。くそっ!なにかな。昨日のことを謝れとか?怖いよ。
「今度の文化祭、一緒にまわらないかい?」
すると、そのときだった。またまたウィンドウみたいなものが私の目の前に現れたのだ。
『ーーー王子に文化祭を一緒にまわらないかと誘われた!1.風邪を引く予感がすると断る。2.気安く私に話しかけないでもらっても?3.服を脱ぐ。』
なんでまたこんな選択肢なの!?しかも、この前も服を脱ぐなかった!?却下よこれだけは絶対に。
私はウィンドウの右上に表示されている砂時計マークが緑のことを再度確認した。
赤になると、まずいからはやく決めないと。…なんで断るしかないの!しかも、断り方にもほどがある!でも…。
私は自身の指をウィンドウの1の部分に持ってきた。
2だと最低女になるし、まだ1の方が馬鹿な女と思われるだけだよね?
私は深呼吸をして、1の選択肢にすることにした。すると、口が勝手に開いてしまう。
「お誘いありがとうございます、殿下。ですが、文化祭当日、私風邪を引きそうな予感がしていまして。せっかくのお誘いですが、申し訳ございません。…なんでしたら、そこの女性方とご一緒になられたらいかがでしょうか?」
なんだよ、風邪を引きそうな予感って。…ま、ある程度カモフラージュできたんじゃない?
私がチラッとロイドを見ると、彼は急に笑い出すのだった。
「ジョゼアは、未来が分かるのか?」
「…女の勘ですので。」
んま、聖女だから最悪の場合、ゴリ押しでどうにかなりそうだけど。
「では、その風邪をはやく治すことのできるよう、私が見守っていてやろうか?」
「いえ、結構です。」
そんなことしたら、また変な選択肢が出てきてしまう。…嫌だよ。そのうち、服を脱ぐが全部の選択肢とかになりそうだし。
「あ、もうこんな時間!私、ヨビダサレテタンダッタ〜!」
「…最後の方から、情がなくなっていないか?」
私はそんなロイドの声を無視して、学園の廊下をかけていき、ロイドから距離をとっていった。
無理無理無理無理。選択肢が嫌すぎる。ここは、距離を置かないと。あぁ、でもよかった。昨日殴ったことは許してくれてそうね。
『ーーーピコン。王子からの好感度が5増えました。』




