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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第9話 新たな狩場を求めて

 森に差し込む僅かな光を頼りに木々を避けながら、【気配察知】で捉えた場所へ向かう。


 対象まで残り10メートルを切ったところで一度立ち止まり、暗闇の向こう側を注視する。


 身体の大半は暗闇に覆われて視認できないが、差し込む光が足元を照らしているため、そこに何かがいると分かる。


 対象へ視線を向けながら【看破】を発動すると、目の前の空中に半透明のウィンドウが表示される。


━━━━━━━━━━

(簡略ステータス)

・ゴブリン Lv.5

・平均能力値 19

・所持スキル

 【棍棒術】【気配察知】【逃走】

━━━━━━━━━━


 名称は『ゴブリン』。スライムと並んで、異世界転生モノでは最もメジャーな魔物だ。


 現在の俺の能力値の平均は『45』。単純な数値だけを比べると、およそ二倍の開きがある。


 (ゴブリンはすでに100匹以上討伐しているし、能力値には二倍の差がある。なら、新たに獲得したスキルを試すのにちょうど良いか)


 理性的に思考している一方で、【暴食】の衝動がじわじわと強くなってくる。


 ……腹が減ッタ。


 ……喉が渇ク。


 ……早く喰らいタイ。


 理性を失う前に決着をつけるため、勢いよく駆け出す。


 前方のゴブリン達も【気配察知】と足音で敵の接近を察し、こちらへ振り返る。


 しかし暗闇で視界が不明瞭なため、敵の姿を明確に認識できず、困惑しているのが雰囲気で伝わってくる。


 目と鼻の先まで距離が縮まったところで、ようやくお互いに敵の姿をはっきりと視認した。


 ゴブリンが慌てて棍棒を振り上げる。俺は大きく右拳を振り上げ、力任せに振り抜いた拳がゴブリンの顔面を殴打する。


 「グギャ……」


 ゴブリンは棍棒を取り落とし、吹っ飛んで地面を転がる。


 一匹目が立ち上がる様子を見せないので、俺は視線を左へ向ける。


 残り二匹のうち、二匹目が「グギャー!」と雄叫びを上げながら棍棒を振り上げ、こちらへ向かってくる。


 「グギャ!」


 振り下ろされた棍棒を左腕で受け止め、ゴブリンの横っ腹へ蹴りを放つ――が、勢いをつけすぎて軸足がブレ、その場に転倒してしまう。


 ゴブリンがそれを好機と捉え、再び棍棒を大きく振り上げる。


 俺は即座に右手を拳銃の形にして、ゴブリンの顔面目掛けて【酸弾】を射出した。


 酸液の弾丸を顔面に受けたゴブリンは棍棒を手放し、両手で顔を覆いながら膝をつく。


 これで二匹目も無力化。


 残りは一匹。


 しかし三匹目は形勢不利と悟るや、【逃走】で逃げ始める。俺は【身体強化】を発動し、後を追いかける。


 (確かに、普段よりも速くなってるな!)


 【逃走】で移動速度が強化されているゴブリンに余裕で追いつき、背後から後頭部目掛けて右拳を振り抜こうとした――が、途中で足がもつれ、押し倒すように二人揃って転倒した。


 それでもゴブリンは必死に逃げ出そうともがくので、俺は馬乗りになったまま後頭部に力一杯右拳を振り抜く。


 「ボコッ!」と鈍い音が響いた後、ゴブリンの生命活動は完全に停止した。


 (ふぅ……最初の頃よりは短時間で制圧できるようになったが、まだまだ【格闘術】も【身体強化】も使いこなせていないな)


 本来どちらも自身の強さに補正がかかるスキルだが、獲得したばかりで慣れていないせいか、むしろ致命的な隙を晒してしまっていた。


 先程の戦闘は、単に上回る能力値でゴリ押ししただけに過ぎない。


 (【逃走】のレベルを上げる間に、できるだけ慣れておかないとな)


 体力を消耗したことで、【暴食】の衝動が軽減される。


 理性を保った状態でしっかりと反省しながら、足元で死んでいるゴブリンに近づき、首元に齧り付く。


 一匹目を腹に収めた後、二匹目、三匹目と喰らっていく。しかし、すでに上位種を味わってしまっているせいか、渇きも食欲も満たされることはない。


 それでも【逃走】のレベル上げのため、【気配察知】を頼りに狩場内を駆け回り、明らかに個体数が減ったゴブリン達を討伐し続ける。


 そして――50匹目。


 『【逃走】Lv.5にUPしました』


 夜もだいぶ深まった深夜――目標を達成した。


 (ハァ、ハァ、やり切った!)


 完全な暗闇に覆われた森の中には、世にも珍しい、両手でガッツポーズするオークがいた。



 地平線の向こうから昇った朝日が、優しく温かな光で森を照らしている。


 目標を達成した俺はあの後、木の幹に背中を預けて腰を下ろし、目を閉じてみた。


 一晩中動き回ったはずなのに、眠気は一切なかった。


 頭に靄がかかることも、目がしばしばすることも、身体の倦怠感もない。


 魔物には、睡眠が必要ないのかもしれない。


 正直、転生前にこの特性が欲しかった。そうすれば、どれだけ働いた後でも読書やゲームを楽しめたのに。


 だが、今の俺にできることは魔物を狩るくらいだ。娯楽も話し相手もいない。


 おかげで【格闘術】と【身体強化】にもだいぶ慣れてきたが。


 (さて――そろそろ森を出るか)


 この狩場では上位種の討伐とスキルレベルの目標を全て達成したので、これ以上留まる必要はない。


 それよりも新たな狩場へ向かい、新たなスキルを獲得したり上位種を討伐したりした方が、より効率的に成長できる。


 俺は立ち上がり、右往左往しながらもなんとか森を抜け、再び南北に伸びる街道へ戻ってきた。


 新たな狩場を求めて、街道を北へ向かう。

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