第6話 学ぶ魔物と理性で喰らう
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・能力名 【気配察知】
・分類 常時発動型
・効果
周囲で動く生物や物体の気配を捕捉可能。
・有効範囲 半径15メートル。
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俺が醜悪な魔物たちの気配を正確に捕捉できたのは、このスキルの効果によるものだったのか。
スキルレベル『3』で15メートルなら、スキルレベル『10』では50メートルまで有効範囲が拡大するということ。
それだけ広範囲の気配を捕捉できるなら、事前に敵の奇襲を未然に防ぐことができる━━非常に便利なスキルだ。
(ついでだ。奴らから獲得した他のスキルも確認し━━)
風切り音とともに、俺の目の前を小石が通り過ぎる。
(ッ……!)
慌てて小石が飛んできた方向へ視線を向けると、先程逃した奴らと同じ個体かは分からないが、奴らが五匹姿を現した。
俺は少しばかり回復した体力で木の幹を支えに立ち上がり、真正面から奴らと対峙する。
(とりあえず、先程と同じ戦法で殲滅するか……)
俺は足元に置いていた棍棒を拾い上げ、身体を反転させて、一目散に奴らとは反対方向へ逃走。
少ししてから後ろを振り返ると、それぞれバラバラに俺を追いかけてくる奴ら。
状況を確認した俺は一度足を止め、完全に後ろへ振り返る。一番近くにいる個体に狙いを定め、手を拳銃の形にする。
休憩を挟んだことで、【酸弾】のクールタイムは終わっている。
指先に酸液の弾丸を生成し━━射出。
酸液の弾丸は真っ直ぐ、一番近くにいた個体の額目掛けて飛んでいく━━が、棍棒を顔の前に持ってこられ、着弾を防がれた。
(なっ━━!? クソッ、やっぱりさっき逃した個体か。あの攻撃は一度見せてしまったから、二度目は通じないってことか)
俺が一瞬驚きの表情を浮かべたのを見て、一番近くにいた個体は笑みを浮かべ、疾走を開始。
(こうなったら数的に不利だが、一匹ずつ確実に仕留めるしかない!)
━━俺も疾走を開始。
彼我の距離が瞬く間に縮まると、お互いに棍棒を振り上げる。棍棒と棍棒がぶつかり合い、一匹目の棍棒が力負けする。
そして棍棒を薙ぎ払うように振るい、ソイツの左側頭部を殴打して、吹き飛ばす。
「グギャ……」
(これで一匹目━━)
地面を転がっていく個体を流し見ながら視線を前へ向けると、二匹目が目の前に迫っていた。
軽く跳躍したソイツは、勢いよく棍棒を振り下ろす。
俺は脳天に衝撃が走り、軽く前傾姿勢になる。頭がクラクラするが、一歩踏み出して踏ん張る。
すぐに顔を上げ、棍棒を振り上げる。
振り下ろした棍棒はソイツの棍棒に受け止められるが、力負けして蹈鞴を踏み、後退する。
(今だっ!)
距離を詰めてトドメを刺そうとしたが、前方から小石が飛んできて、俺の額を穿つ。
(ッ……)
俺は左手で額を押さえながら後退。するとその隙をついて、体勢を立て直したソイツが棍棒を振り上げ、俺の後頭部を殴打。
視点が定まらなくなり、俺は地面に倒れ伏す。しかし、また頭や背中を乱打されると思い、地面を転がりながらその場を離れる。
痛みを堪えて立ち上がり、敵を視界に捉える━━三匹目が目の前まで迫り、棍棒を振り上げている。
振り下ろされた棍棒を左腕で受け止め、ソイツの右側頭部を力一杯殴打する。
吹き飛んでいくソイツを流し見た後、【気配察知】が接近する気配を捉える。視線を向けると、二匹目が迫っていた。
俺は手を拳銃の形にして、クールタイムの終わった【酸弾】を射出。ほぼ目と鼻の先に迫っていたソイツは回避する間もなく、酸液の弾丸を顔面で受ける。
「グギャ……」
両手で顔を押さえ、頭を左右に振りながらその場に膝をつく。その脳天目掛けて棍棒を振り下ろし、ソイツを無力化する。
(ハァ……ハァ……あと二匹)
「「グギャギャ……」」
残りの二匹は途中で足を止め、俺を警戒する素振りを見せる。
連続の集団戦で疲弊しているためか、【暴食】の衝動に理性が侵食されることなく戦えている。
今ならまだ相手にできる余力はあるが……。
「「グギャ」」
二匹は徐々に後ずさりながら、十分に距離が開いたところで、一目散に【逃走】で逃げ去った。
それを見た俺は、疲労からその場に腰を下ろす。殴られた頭がズキズキと痛む。
「ハァ……ハァ……痛ぇ。奴らにも知能があって、俺との戦いを経て、一戦目より二戦目の方が手強かった」
【暴食】のおかげでトントン拍子に強く成長できて、少なからず達成感と充実感を覚えていた。
これなら、〝異世界無双〟も夢じゃないなと。
だが、この狩場に来て改めて痛感した。
俺はまだまだ弱い。
せっかくの第二の人生、生活に不自由ないようにもっと強くならなければ。
そのためにも、【暴食】の衝動に任せるのではなく、自分の意思で敵を喰らって糧とし、強くなる必要がある。
(よし!)
俺は膝に手をついて重たい腰を上げると、未だに焼け爛れる痛みに悶えている二匹目を押し倒し、喉元に齧り付く。
肉を食いちぎる感覚、骨を砕く感覚、内臓を咀嚼する感覚。改めて実感すると、吐き気を催すほど気持ち悪い。
それでも、喰わなければならない。
嗚咽が止まらず、あまりの不味さに涙が出て、思わず胃の内容物を吐き出してしまうが━━それでも無理やり、口へ運ぶ。
不味い━━不味いはずなのに、手が止まらない。
【暴食】も俺が強くなるのを後押ししているのかもしれない。
仕留めた三匹をなんとか腹に収めたが、相変わらず腹が満たされることはない。休憩と食事を挟んだためか、渇きと食欲が強くなってきた。
(マズイ、マズイ! このままじゃまた本能に支配される。理性が残っているうちに、奴らを見つけないと)
俺は【気配察知】を頼りに、全力で駆け出す。
体力を消耗して渇きと食欲を抑えつつ、奴らを喰らって強くなるために。
━━10匹目。
『【棍棒術】Lv.4にUPしました』
『【気配察知】Lv.4にUPしました』
『【逃走】Lv.3にUPしました』
━━50匹目。
『【逃走】Lv.4にUPしました』
━━100匹目。
『【棍棒術】Lv.5にUPしました』
『【気配察知】Lv.5にUPしました』
この狩場に存在する魔物を狩り尽くす勢いで走り回り、およそ100匹ほど討伐して喰らった。
一度足を止めて息を整える。
戦っている最中に何度もスキルレベルが上昇したことで、明らかに火力と速度が増していた。
一撃で奴らを殴殺できるようになり、逃げた個体がいても、追いつくことが容易になった。
成長実感を明確にするため、ステータスウィンドウを表示。
レベルアップには至らなかったが、能力値の平均は『26』から『32』まで上昇。『物理攻撃力』に至っては、一番伸びている『物理防御力』に並んだ。
「ハァ……ハァ……オェ、さ、流石に疲れ、た。常時体力を消耗していたおかげで、集団相手にも戦えた。体力向上にも繋がるし、鍛錬には良い方法━━」
ふと、ビッグ・スライムの時に感じたような、美味そうな気配。
【気配察知】で気配のする方向へ視線を向けると、醜悪な魔物よりも一回り大きい人影が佇んでいた。
(アイツはまさか、上位種━━あ、ヤバい! アイツを見てしまったら━━)
自然と一歩踏み出す足を力を込めて制止しようとするが、俺の理性はそこまでだった。あっという間に本能に侵食された。
……あぁ、ウマソウダ。
……クイタイ。
……クワセロ!
口元に溢れた涎を撒き散らしながら、俺は無意識に走り出していた。
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