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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第50話 酸弾と長剣の戦術

 アイアン・ゴーレムが腰元まで引いた右拳を鋭く突き出してきた。


 その鈍重そうな巨体からは想像できないほどの速さで突き出された拳撃を、剣身で受け流す。


 今度は左腕を横薙ぎに振るってくる。


 跳躍して回避した直後、さらに踏み込みながら右拳を突き出してきた。


 (フェイントか……!?)


 再び剣身で受け流す。


 鉄と鉄が擦れ合う甲高い音とともに、小さな火花が散る。


 アイアン・ゴーレムが突き出した右拳が地面を穿った後、俺は再び【突進】を発動して距離を詰め、その場で大きく跳躍した。


 鳩尾辺りに埋め込まれた魔石を狙って長剣を振り下ろそうとするが、【危険察知】が右側から迫る危険を教えてくれる。


 視線を向けると、視界全体を埋め尽くす巨大な拳が目前まで迫っていた。


 俺は咄嗟に長剣で防御の体勢を取ったが、長剣越しに物凄い衝撃が伝わり、岩壁に吹き飛ばされてしまった。


 「ブモッ……」


 ロック・ゴーレムと戦った時も同じような状況に陥ったが、衝撃や威力はロック・ゴーレムとは比べ物にならなかった。


 アイアン・ゴーレムは岩壁にめり込んだ俺を見て、すぐに右拳を腰元まで引くと、容赦なく鋭く突き出してきた。


 ドゴォーン!


 「ブモッ……」


 俺は咄嗟に両腕を交差して防御の体勢を取ったが、両腕の上から伝わる物凄い衝撃が全身を駆け巡り、思わず弱々しい鳴き声を上げてしまった。


 しかし攻撃はそこで止まらず、アイアン・ゴーレムは鋭く左拳を突き出してきた。拳撃の嵐が俺を襲う。


 「ブモッ、ブモッ、ブモッ……」


 交互に何度も拳を叩き込まれ、俺は岩壁に深くめり込んでいく。


 (コ、イツ……崩落なん、て、お構いなし、に、全力で拳を叩き込んできやがる……)


 俺はなす術なく殴られ続ける。そして何度目かの拳を受け止めた時、両腕から「ピシッ」と嫌な音が聞こえた。


 (痛ッ……骨に罅が、入った……)


 「このままじゃ一方的に殴られ、殺される」と思った俺は、【身体強化】を発動した。


 『物理攻撃力』『物理防御力』『移動速度』が『×1.5倍』に強化され、アイアン・ゴーレムの能力値を上回る。


 そして、アイアン・ゴーレムが突き出した右拳を引いた瞬間、岩壁にめり込んでいた身体を起こし、素早く跳躍する。


 アイアン・ゴーレムの左肩に着地すると、そのまま長剣を振り下ろし、左肩を勢いよく斬りつけた。


 スパッ!


 左肩を綺麗に切断され、アイアン・ゴーレムの左腕が地面に落下する。


 するとアイアン・ゴーレムは、一歩、二歩と後ずさる。俺は思わず左肩から飛び降り、距離を取る。


 アイアン・ゴーレムは反撃に移ることなく、右腕で魔石を庇う動きを見せる。


 (……魔石は攻撃させないつもりか。それは厄介だな)


 あの邪魔な右腕を斬り落とすには、長剣を振るわなければならない。だが先程のアイアン・ゴーレムの攻撃で、長剣を振るたび、両腕に痛みが走る。


 【身体強化】で鉄も容易に斬れるようになったとはいえ、全力で振るえるのは、あと数回が限界だろう。


 俺は小刻みに震える両腕を一瞥すると、アイアン・ゴーレムを鋭く睨みつける。


 アイアン・ゴーレムは左腕を失ってもなお、その威圧感に揺らぎはない。


 暫し、お互いに睨み合った後、先にアイアン・ゴーレムが動く。


 左腕を失っているのに、平衡感覚に支障はないようで、先程と同様、鋭く右拳を突き出してきた。


 俺は咄嗟に飛び退いて躱すと、長剣を振り上げ、右拳を両断しようとしたが、ズキッと痛みが走り、攻撃を中断せざるを得なかった。


 しかしこのまま何もしないわけにはいかず、左手を拳銃の形にして、引き戻される右拳に向かって【酸弾】を射出した。


 酸液の弾丸が着弾したアイアン・ゴーレムの右拳は、白い煙を上げる。


 (致命傷にはほど遠いけど、間違いなく強度は下がっているはずだ。上手く力が乗らなくても、両断できる可能性はある)


 それに、今回は右拳だったが、両足を重点的に攻めれば、アイアン・ゴーレムは立つこともままならなくなる。


 そう考えた俺は、【酸弾】のクールタイムが終わるまでは長剣で斬りつけ、クールタイムが終われば酸液の弾丸を浴びせることにした。


 傷口から浸透した酸液は、白煙を上げながら内部を蝕んでいく。


 ズキッと痛む両腕を振るい、アイアン・ゴーレムの右足を斬りつける。


 すると、腐食して強度が低下していたこともあって、真っ二つに両断することに成功した。


 右膝辺りを両断されたアイアン・ゴーレムは、僅かに体勢を崩す。そして支えを失った巨体が、轟音とともに地面へ倒れ込んだ。


 俺は倒れたアイアン・ゴーレムに素早く駆け寄ると、すぐに魔石を狙う━━ことはせず、万が一にも反撃されないように、右腕と左足を斬り飛ばすことに注力する。


 なんとか右腕と左足を使い、なお立ち上がろうとするアイアン・ゴーレムを警戒しながら、長剣で斬りつけ、酸液の弾丸を浴びせる━━それを繰り返す。


 そしてようやく、右腕と左足の切断に成功した。


 (ハァ、ハァ……ようやく、か。もう満足に長剣を振れそうもない)


 両腕をダラリと下げながら、四肢を失ったアイアン・ゴーレムの身体に飛び乗る。


 ゆっくりと魔石のもとまで進むが、胴体だけになったアイアン・ゴーレムが反撃に移る様子はない。


 「大丈夫そうだな」と思いながら、魔石の上に長剣を突き立てる。


 そして、最後に渾身の力を込めて長剣を刺し込むと、パキンッと魔石が真っ二つに割れた。


 『Lv.48にUPしました』


 レベルの上昇を知らせる声が鳴り響く。


 『Lv.49にUPしました』


 『Lv.50にUPしました』


 『進化条件を満たしました』


 『個体名:オーク・グラディエーターは個体名:オーク・ジェネラルに進化します』


 進化促進を知らせる声が聞こえると、身体が熱を帯びて、バキッボキッと身体を内部から作り変えられる感覚に襲われ、思わずアイアン・ゴーレムの身体に手をつく。


 その間も体温は上昇し続け、耳障りな音が洞窟内部に響き渡る。


 『進化が終了しました』


 『Lv.51にUPしました』


 『Lv.52にUPしました』


 進化が終わっても、まだレベルは上昇し続ける。


 『Lv.53にUPしました』


 『Lv.54にUPしました』


 ……レベルの上昇を知らせる声が、ようやく鳴り止んだ。


 膝に手をついて立ち上がり、手をグーパーして両腕の様子を見る。


 (……痛みは完全になくなったな)


 しっかりと力も入るし、なんの違和感もない。


 それどころか、全身に力が漲っている。


 進化によって、傷も完治した。


 俺は長剣を抜くと、真っ二つに割れた魔石を貪り喰らう。


 スキルレベルアップを知らせる声は聞こえなかったが、それはアイアン・ゴーレムが所持するスキルのレベルが、すでに高レベルだったからだろう。


 アイアン・ゴーレムとの死闘を思い返しながら、周囲を見渡す。


 レベル上げ、スキル獲得、上位種の討伐━━この狩場でやり残したことはもうない。


 アイアン・ゴーレムがサラサラとした砂のように、風に乗って消失したのを見届けると、洞窟の入口へ向かう。


 そのまま岩山を下り、遠目に見える巨大な壁に囲まれた街を大きく迂回するように移動し、巨大な壁が小さくなってきたところで、街道に合流した。


 そして、近くに生えていた木をふと見た時、木が少し小さく感じた。


 慌てて木に駆け寄ると、以前なら見上げていた枝葉が、今ではすぐ頭上にあった。


 さらに自身の身体を見てみると、ぽっこりとした腹がさらに引き締まり、腕や足に浮き出ている筋肉が少し大きくなっていた。


 (オーク・ジェネラルか……一匹も率いる部下がいないなんて、それは指揮官じゃないだろう)


 そんな皮肉にフッと笑みを浮かべ、街道を北に向かって歩き始めた。

 読了後、リアクション、ブックマークなど、是非よろしくお願いします。

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