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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第49話 鉄の格闘家

 息を殺し、真っ暗な洞窟の内部を慎重に進んでいく。すると、二体目のロック・ゴーレムを発見した。


 ロック・ゴーレムも【振動感知】で俺の存在を認識したのか、こちらへゆっくりと振り向き、鈍重な動きで迫ってきた。


 この時俺は、不思議な感覚を味わっていた。


 ロック・ゴーレムが足を踏み出すたび、微細な振動が足の裏を通して伝わり、どこから振動が発生しているのか理解できる。


 ただ、今は目視でも確認できているから、この不思議な感覚は「錯覚か?」と思ってしまう。


 なので、一度後方に大きく飛び退き、ロック・ゴーレムから距離を取ってから、背中を向けて目を閉じる。


 すると、先程と同様に微細な振動が足の裏を通して伝わる。


 そして、振動の発生源からロック・ゴーレムがどの方向に居て、どれくらい離れているのか自然と理解できる。


 (……これが【振動感知】の効果か)


 気配や魔力は【気配隠蔽】と【魔力隠蔽】があるから、スキルレベル次第では敵の存在を把握することはできない。


 でも俺には、匂いを嗅ぎ分ける【嗅覚強化】、周囲の温度差を可視化する【温度差可視化】、振動の発生源を把握する【振動感知】がある。


 ある程度スキルレベルも上がり、有効範囲も拡大しているので、少なくとも以前よりは遥かに敵を見失いにくくなった。


 (だが、油断はできない。もしかしたら、匂いも体温も、振動すら遮断するスキルがあるかもしれないからな)


 スキルに頼り切りにならず、常日頃から慎重に行動する癖をつけておく必要があると思った。


 改めてロック・ゴーレムの方へ振り返り、長剣の切先を向ける。


 頑丈な岩で構成された身体は一見弱点がないように見えるが、鳩尾の辺りに埋め込まれた魔石が動力源となっているのは、先程の戦闘で判明している。


 わざわざ身体を傷つける必要はなく、魔石さえ破壊できれば、ロック・ゴーレムは生命活動を停止する。


 俺はゆっくり一歩一歩近づいてくるロック・ゴーレムに対し、【突進】を発動して瞬く間に距離を詰める。


 ロック・ゴーレムは動きを止め、ゆっくりと右腕を振り上げる。


 (遅い!)


 俺はその場で大きく跳躍し、魔石に向かって長剣を振り抜く。


 パキンッ!


 魔石が真っ二つに割れると、ロック・ゴーレムは右腕を振り上げたまま、微動だにしなくなった。


 『Lv.45にUPしました』


 そしてそのまま、ゆっくりと地面に倒れる。轟音とともに洞窟内部が揺れ、天井から砂埃や小石が降り注ぐ。


 俺はロック・ゴーレムの上に飛び乗り、魔石を取り出し、バリッボリッと貪り喰らう。


 (この調子でどんどん倒していくぞ!)


 俺はさらに洞窟の奥へと足を進める。


 二体目のロック・ゴーレムが地面に倒れた時の揺れに釣られて、ロック・ゴーレム達が奥からゾロゾロと迫ってきていた。


 俺はニヤリと口角を上げ、全力で駆け出す。


 ロック・ゴーレム達の動きは鈍重なので、俺の攻撃を認識できていても対応が間に合わず、簡単に魔石を割られて沈黙していく。


 ━━20体目。


 『Lv.46にUPしました』


 『【振動感知】Lv.6にUPしました』


 その後も、現れたロック・ゴーレム達を次々と討伐していく。一方的な蹂躙が続き、気づけば洞窟内の魔力反応は随分少なくなっていた。


 ━━50体目。


 『Lv.47にUPしました』


 『【格闘術】Lv.7にUPしました』


 『【振動感知】Lv.7にUPしました』


 日中に冒険者達が狩場で活動していたからか、意外と個体数が少なく、50体目を討伐した頃には、洞窟内部は静寂に包まれていた。


 そして気づけば、洞窟の最深部まで辿り着いていた。


 (……付近にロック・ゴーレムの魔力は感じないな。レベルもスキルレベルも上げられたし、もうこの狩場に用はない)


 そう思って来た道を戻ろうとした時、違和感に気づいた。道にロック・ゴーレム達の死体が一つも残っていなかったからだ。


 (どういうことだ……?)


 周囲を見渡しても、身体を構成していた岩が全く見当たらない。


 (倒すのに夢中になっていたから気づかなかったが、動力源である魔石を失うと、身体を構成していた岩は消失するのか……?)


 もちろん確証はない。


 だけど、俺が洞窟に足を踏み入れた時、日中冒険者達が討伐したロック・ゴーレム達の死体はなかった。


 そうなるとやはり、魔石を失うと身体を構成していた岩は跡形もなく消失するという予想は、的外れではないと思う。


 (まぁそこまで気になることじゃないし、わざわざ確かめる必要もないか)


 それと、冒険者達が狩場を後にした時に身軽だったのは、あの麻袋に魔石だけを入れていたからだろう。


 (魔石しか素材がないとなると、ロック・ゴーレムのランク次第だけど、あの冒険者達は儲かっているのかなぁ)


 そんなことを考えていると、直後、背筋に冷たいものが走った。同時に、足の裏から微細な振動が伝わってくる。


 (……何かが近づいてくる?)


 いや、この感覚は━━


 振動の発生源の方へ視線を向けた。


 そこにいたのは、ロック・ゴーレムと酷似した巨体。しかし、その身体を構成しているのは、岩ではない。


 鈍く銀色に輝く金属だった。


 (岩じゃない……鉄か?)


 ロック・ゴーレムとは違う。


 ただ立っているだけなのに、圧倒的な存在感を放っていた。


 その巨体から漂う威圧感に、自然と全身に力が入る。


 俺はこちらに近づく魔物の正体を詳らかにするため、【看破】を発動した。


━━━━━━━━━━

(簡略ステータス)

・アイアン・ゴーレム Lv.55

・平均能力値 202

・所持スキル 【格闘術】【振動感知】【物理攻撃耐性】

━━━━━━━━━━


 (アイアン……鉄。岩の次はさらに頑丈な鉄のゴーレムか。レベルも平均能力値も高い)


 だが、身体的特徴がほぼロック・ゴーレムと同じなので、鳩尾の辺りに埋め込まれた魔石が確認できる。


 ということは、討伐方法も同じ可能性が高い。


 (ならまずは、正攻法で━━)


 俺は【突進】を発動し、一気に距離を詰める。


 だが。


 ギィィィン!


 「ッ……!?」


 鋭く振り下ろした長剣は、魔石へ届く寸前で弾かれた。アイアン・ゴーレムの左腕が、胸元の魔石を庇うように割り込んでいたからだ。


 (防がれた……!?)


 ロック・ゴーレムとは違う。


 コイツは、自ら魔石を守った。


 俺は反射的に後方へ飛び退いた。


 次の瞬間、アイアン・ゴーレムがゆっくりと拳を構える。その動きは、あまりにも自然だった。


 胸元の魔石を隠すように添えられた左腕。


 半身になった姿勢。


 洗練された構え。


 まるで━━武術を修めた格闘家のようだった。

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