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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第47話 特殊なオークと森の異変

 一匹のオークが、岩山の頂上付近でステータスウィンドウを表示し、所持スキルの詳細を確認している頃。


 迷宮都市から護衛依頼を受けた、以前オークに盗賊の襲撃から守られたパーティーが、活動拠点の迷宮都市に戻ってきていた。


 彼らは戻るなり、冒険者ギルドへ向かった。


 木製の両開き扉を開けて中へ入ると、一行は真っ直ぐ受付嬢のもとへ向かった。


 「緊急で報告したいことがある」


 受付に来るなり真剣な表情で話しかけてきたので、受付嬢は姿勢を正した。


 「……どのような報告でしょうか?」


 「護衛依頼の道中、盗賊の襲撃を受けた」


 「なるほど。盗賊の出没報告ですね。詳しい場所は分かりますか?」


 受付嬢はカウンターの下から周辺の地図を取り出し、広げた。


 「場所は……ここだ。この街から一時間ほどの場所で、山林の中から突然襲われた。おそらく、山林のどこかに盗賊共の拠点があると思う」


 地図の一点を指差しながら、詳しく報告する。


 「貴重な情報、感謝いたします。すぐに討伐依頼を出したいと思います。報告は以上ですか?」


 「いや、盗賊の件よりも大事な報告がある」


 受付嬢は疑問を浮かべながら、改めて姿勢を正した。


 「……どのような報告でしょうか?」


 「盗賊に襲われた時、突然乱入者が現れた。小柄なオークで、鉄製の長剣を持っていた」


 「小柄なオーク……?」


 「あぁ。通常のオークは二メートル近い巨体だが、奴は十代半ばの子供と変わらない背丈だった」


 「この街から南の街の付近にオークが出没する狩場がありますが、あそこには通常のオークが生息しているだけで、集落ではありません。考えられるとしたら、どこかの狩場から移動してきた個体でしょう」


 「俺もそう考えています。ですが異常なのは、武器を扱うということです。二十人近い盗賊を一方的に斬り伏せるほどの実力がありました」


 「それほどの強さを……ダンジョンの中でもないのに、なぜ武器を扱うオークが」


 「よく分かりませんが、早急に討伐するべきでしょう。このまま野放しにすれば、いずれ強大な力を手にして人間に牙を剥くと思います」


 「分かりました。ギルドマスターへ報告し、まずは調査依頼を出したいと思います。危険性が確認された場合、緊急討伐依頼へ切り替えます」


 「あぁ、そうしてくれ。報告は以上だ」


 「ありがとうございました」


 受付嬢への報告を終えてパーティーメンバーのもとへ戻ろうとした時、新たな一行が冒険者ギルドへ入ってきた。


 先頭を歩くリーダーは、迷宮都市でも数少ないCランク冒険者であり、この街で活動する冒険者の中で知らぬ者はいない。


 そんな彼に、一人の冒険者が声をかけた。


 「おい、ベン! コボルト・キングを討伐しに行ったのに、随分と戻りが早くねぇか?」


 ベンは険しい表情を浮かべながら答えた。


 「俺もよく分からないんだが……狩場に行ったら、ほとんどコボルト達がいなかったんだ」


 「いなかった……? どういうことだ?」


 「コボルトもハイコボルトも、現れても数匹。上位種に至っては、全く姿が見当たらなかった」


 「なんだそれ?」


 「ただ、森の中には乾いた大量の血痕があって、血の匂いが残っていた。戦闘痕もあった。だが肝心の死体が一匹もなく、集落にはコボルト・キングを含めて一匹もいなかった。本当にどうなってんだよ……」


 コボルト・キングが討伐されたとなれば、冒険者達の間で話題が持ちきりになるほどの大事だ。


 それゆえ、冒険者が討伐した場合は必ずギルドへ報告が上がる。


 「おい、受付の姉ちゃん! ベンがこう言ってるが、誰かコボルト・キングを討伐したのか?」


 「いえ。ここ最近、討伐報告は上がっておりません」


 「では、誰が……」


 ベンが言葉を溢すと、周囲の冒険者達も互いに顔を見合わせ、「どういうことだ?」という表情を浮かべた。


 「それに、狩場の個体数が前例がないほど少ない。あれほど減っているとなると、複数のパーティーが協力でもしないと無理だ」


 「だが、ベン。俺達はそんな話、聞いたことないぞ。それほどの規模で動きがあれば、嫌でも耳に入るだろ」


 「……確かに、そうだな」


 「ダンジョンに潜っている連中の仕業か? だがそれでも、ギルドに報告しないのはおかしい」


 冒険者達が顔を見合わせる中、先ほど報告を行った男――ビリーは、「まさか……」という表情を浮かべていた。


 (まだ断定はできないが、冒険者の仕業じゃないなら……あのオークか? いや、流石に考え過ぎか? だが、盗賊二十人を一方的に斬り伏せるほどの実力があるなら……)


 決定的な証拠があるわけではない。だが、もしそうだとしたら――。


 (もし関係しているなら、放置できる相手じゃないな)


 そう思ったビリーは、再び受付嬢のもとへ向かった。


 「どうしました? ビリーさん」


 「あくまで予想だが、冒険者の仕業でないとすると、件のオークが関わっているんじゃないかと思って」


 「なるほど。コボルトの森の異変にも関わっている可能性は、ゼロではありませんね。分かりました。改めて貴重な報告、ありがとうございました」


 「あぁ」


 ビリーは受付を離れ、パーティーメンバーのもとへ戻った。


 顔を見合わせていた冒険者達も、いくら考えても答えが出ないと悟り、それぞれの日常へ戻っていった。



 業務を終えた受付嬢は、ギルドマスターの執務室へ向かった。


 コンコンコン。


 「入れ」


 「失礼します」


 部屋の主の許可を得て入室すると、執務机の上に羊皮紙を広げ、何かを書き込んでいる初老の男性がいた。


 男はペンを置いて受付嬢へ視線を向け、用件を尋ねた。


 「それで? 用件はなんだ?」


 「ビリーさんから報告が二つありました。一つ目は、盗賊の出没についてです。地図のここ――この街から一時間ほどの場所で、盗賊の襲撃を受けたとのことです」


 「分かった。まずは調査依頼を出そう。盗賊達の強さや人数、人質の有無などを確認次第、討伐依頼に切り替える」


 「分かりました。二つ目は、特殊なオークの報告です。身長は十代半ばの子供と同じくらいで、鉄製の長剣を扱うオークが確認されました。ビリーさん達が盗賊に襲われているところへ乱入し、二十人近い盗賊を倒したそうです」


 「小さいオークというだけでも珍しいのに、武器まで扱うのか……しかも二十人近い盗賊を壊滅させた? ……確かに、無視できんな」


 「はい。それと三つ目の報告なのですが、本日ベンさんのパーティーがコボルトの森へ行ったところ、コボルト・キングを含め、集落に魔物の姿はなかったそうです。冒険者ギルドでは、コボルト・キングの討伐報告は受けていません」


 「何が起きている……」


 「もし件のオークが関わっているのであれば、戦力はビリーさんの証言以上ということになります」


 「そうか。異常事態が立て続けに起きたとなると、偶然とは思えんな。慎重に事を進める必要がある。件のオークも、まずは調査依頼から始めよう。受注できるランクは『C』からで、最低でも二パーティー以上だ」


 「分かりました。報告は以上です」


 「そうか。では、下がってくれ」


 「失礼します」


 受付嬢が退室したのを見届けると、ギルドマスターは椅子に深く腰掛け、小さく息を吐いた。


 「武器を扱う小さなオークか……しかも、コボルトの森の異変。本当に偶然なのか?」


 羊皮紙の上を指で叩きながら、険しい表情を浮かべた。


 「嫌な予感がするな。何事もなければいいんだが……」


 そう呟くと、ギルドマスターは再びペンを手に取った。しかしその表情から、不安の色が消えることはなかった。

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