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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第44話 コボルト・キング討伐

 コボルト・キングの鋭い爪が顔と胸を抉り、裂けた傷口から血が流れ出る。


 左目の下から右の顎下にかけて皮膚が裂け、胸骨に爪が食い込み、斬痕が刻まれる。


 「ブ、ブモォ……」


 傷口を左手で押さえながら、一歩、二歩と後退る。


 直後、コボルト・キングが右足を振り抜き、俺は左側頭部に重い蹴りを受けて大きく吹き飛ばされた。


 ドンッ! バサバサ!


 木の幹に勢いよく衝突し、枝葉が揺れる。俺は木の幹に背中を預けるように倒れた。


 (ぐっ……痛ぇ。【物理攻撃耐性】があっても、結構深く抉られた。顔も胸も焼けるように痛いが、目を傷つけられなくて良かった)


 木の幹に手をついて立ち上がり、体勢を立て直す。傷口は焼けるように痛むが、なんとか歯を食いしばって耐える。


 そして、悠然と歩み寄るコボルト・キングを鋭く睨みつける。


 その目には余裕があった。


 深手を負った獲物が、どこまで足掻くのかを見定めるような眼差しだった。


 俺は【突進】を発動して駆け出す。風を切り、流れ出る血を撒き散らしながらコボルト・キングの目前まで迫ると、長剣を鋭く振り下ろす。


 ガキンッ! ピシッ。


 コボルト・キングは左手の鋭い爪で長剣を受け止めるが、その直後、爪に小さな罅が入る。


 それを見た俺は長剣を再び振り上げ、爪を叩き斬ろうとする。しかしコボルト・キングは咄嗟に飛び退き、それを回避した。


 距離を開けて、睨み合う俺とコボルト・キング。


 コボルト・キングは自身の罅割れた爪を見た後、再び俺を見据える。


 その目から、獲物を見る余裕は消えていた。


 代わりに宿っていたのは、強敵と対峙する戦士の眼差しだった。


 それにしても――


 (今度は身体を硬直させる何か――おそらく【威圧】だろうけど、それを使用してこなかったな)


 コボルト・ジェネラル達は、身体を硬直させる能力を使用してこなかった。


 だから、スキル構成がほぼ同じという点で、〝身体を硬直させる何か〟は【威圧】だと推測できた。


 しかし、今の攻撃に対しては使用してこなかった。


 使用していれば俺に大きな隙ができて、さらに深手を負わせるチャンスだったはずなのに。


 (考えられるとしたら、クールタイムがあったから使用してこなかった。そう考えるのが自然だ)


 そうなると、次は使用してくる可能性が高い。今のところ俺には抗う術がないので、【威圧】がくると身構えておくことしかできない。


 そして、コボルト・キングに攻撃の機会を与えてはいけない。与えてしまえば、【威圧】で動けなくなったところを即攻撃される。


 だから、俺が攻め続けるしかない。


 できれば【威圧】を使用する機会を与えず、使用されたとしても即攻撃に移れないようにするべきだ。


 そうと決まれば――


 膠着状態を破ったのは、俺だった。


 全力で駆け出し、長剣を鋭く振り下ろす。しかし今度は、コボルト・キングは爪で防御せず、飛び退いて回避する。


 俺の剣撃が爪を叩き斬れることは、先程の攻防で判明している。だから、まともに組み合うことはせず、回避に専念するつもりだろう。


 それが分かっていても、俺は攻撃の手を緩めない。上段からの振り下ろし、横薙ぎ、下段からの斬り上げ――果敢に攻め続ける。


 体格差は歴然なので、俺は足を狙う。


 俺の狙いを理解しているようで、コボルト・キングはその場から飛び退いて回避を続ける。


 そして――


 「グルルラァアアア!」


 俺が再び攻撃を仕掛けようとした時、コボルト・キングが森全体に響き渡る雄叫びを上げた。


 (くっ……ここでか)


 指先一つ動かなくなり、恐怖が心を支配する。


 【威圧】がくると分かっていても、「次か?」「今度こそくるか?」と警戒し続けていると、精神が擦り減る。


 だから時間経過とともに、【威圧】への警戒が甘くなっていた。


 いや、もしかしたらコボルト・キングがクールタイム明けでもすぐに【威圧】を使用してこなかったのは、このためだったのかもしれない。


 コボルト・ジェネラルよりも遥かに統率力に優れていて、同種や冒険者相手の実戦経験も豊富そうだった。


 経験から【威圧】の有効な使い方を見出していても、なんらおかしくはない。


 そして、右側から迫る鋭い爪。


 (ヤバい! 今度は目を狙ってきた!)


 コボルト・キングも俺の機動力を奪うため、あえて目を狙ってきたのかもしれない。


 (ぐっ……動け! 動け! 動けぇえええ!)


 全身に力を込め、纏わりつく恐怖を吹き飛ばすように、心の中で叫ぶ。


 指先は動かない。


 足も動かない。


 それでも、せめて目だけは守ろうと、必死に首を捻る。


 コボルト・キングの鋭い爪が目前に迫った瞬間――


 (あっ……ぶねぇ!)


 俺は咄嗟に顔を逸らし、鋭い爪が頬を掠めた。


 (ハァ、ハァ、ハァ……動いた!)


 運が良かったのかは分からないが、顔を動かすことに成功した。


 (なんとか命は繋いだ。だが、また【威圧】を使ってくるはずだ。その前に決着をつけないと!)


 俺は【身体強化】を発動する。


 五分間という制限はあるが、一時的に『物理攻撃力』『物理防御力』『移動速度』が『×1.5倍』に強化される。


 決着をつけるために発動したが、万が一爪撃を回避できなくても耐えられるようにする狙いもある。


 「ブモォオオオオオ!」


 俺は雄叫びを上げて、距離を詰める。


 「グルルラァ!?」


 想定以上の速度で迫ってきたことで、コボルト・キングが初めて動揺を露わにする。


 長剣を鋭く振り下ろすと、コボルト・キングは回避を捨て、爪で防御してきた。


 ザシュッ!


 俺の長剣を受け止めたコボルト・キングの爪が真っ二つに両断され、破片が宙を舞う。


 想定外が続いたせいで、コボルト・キングは致命的な隙を晒した。


 俺は素早く長剣を突き出し、コボルト・キングの右足を刺し貫く。そのまま薙ぎ払うように振るい、右足に深い斬痕を刻む。


 「グルルラァ!」


 激しい痛みでコボルト・キングが絶叫する。俺はその絶叫を無視して、左足を狙う。


 「グルルラァアアア!」


 悲鳴とは違う雄叫びが響いた時、俺の身体が硬直した。


 (くっ……ここで【威圧】か!)


 焦る俺を他所に、コボルト・キングは爪を突き出す。今度は切り刻むのではなく、刺し貫く目的で鋭い爪が胸に迫る。


 今度は避け切れず、鋭い爪が俺の皮膚を突き破る。しかし【身体強化】のおかげで、そこまで深くは刺さらなかった。


 刺し貫けなかったことに驚いたコボルト・キングは、思わずその場から飛び退く。


 そして、俺の身体を縛っていた【威圧】の効果が切れた。


 (奴は手負いだ! 攻撃を緩めるな!)


 【威圧】が解けた直後、俺は駆け出し、コボルト・キングの左足を狙って長剣を振るう。


 右足を傷つけられて思うように動けないのか、コボルト・キングは回避せず、拳で防御体勢を取る。


 だが、【身体強化】発動中の俺の攻撃力はコボルト・キングの防御力を上回り、防御に回した拳も斬り裂かれてしまう。


 「グルル……」


 両拳と右足から血を流しながら、必死に俺の猛攻を耐えるコボルト・キング。しかし、その目にはまだ闘志が揺らめき、諦めた様子はない。


 (そんなことは関係ない。このまま攻め続ける!)


 左足を執拗に狙う俺と、ボロボロの拳で防御するコボルト・キング。


 「グルルラァアアア!」


 四度目の、他者を畏怖させるような雄叫び。


 しかし今度は、背筋がゾワっとする感覚を覚えたが、身体が硬直するほどではなかった。


 (なんだ……? 身体が硬直しない? もしかして【状態異常耐性】のおかげか? それとも、同じ対象には効力が落ちるのか? なんにせよ、身体が動かせるならこっちのもんだ!)


 「ブモォオオオオオ!」


 俺は腹の底から雄叫びを上げて、コボルト・キングが突き出した右拳を前腕ごとバッサリと斬り裂く。


 そして長剣を横薙ぎに振るい、左足の膝から下を斬り飛ばす。


 「グルルラァアアア……!」


 体勢を崩して頭が下がってきたタイミングで跳躍し、コボルト・キングの首元へ向かって長剣を一閃。


 コボルト・キングの頭が宙を舞った。


 空中で一回転した頭が地面へ転がる。


 最後まで闘志を失わなかった瞳から光が消え、巨体がゆっくりと地面へ崩れ落ちる。


 『Lv.40にUPしました』


 『進化条件を満たしました』


 『個体名:ハイオークから個体名:オーク・グラディエーターに進化します』


 (ハハハ。やっぱり思った通り、レベル40で進化するのか)


 身体が急激に熱くなり、平衡感覚を保てなくなって地面に膝をつく。バキッボキッと不快な音とともに、身体が作り替えられる感覚に陥る。


 そして、コボルト・キングの爪で負った傷から血が止まり、裂けた皮膚がみるみる塞がっていく。


 やがて傷跡すら残さず、完全に消失した。


 (ハァ、ハァ……身体を作り替えられる感覚は二度目だが、慣れそうにないな)


 『進化が終了しました』


 『Lv.41にUPしました』


 『Lv.42にUPしました』


 まだレベル上昇を知らせる声は鳴り止まない。


 『Lv.43にUPしました』


 『Lv.44にUPしました』


 ようやく声が鳴り止む。


 (コボルト・キングは強敵だった。ハイオークを倒して上位種に進化して、強くなったつもりだったけど、まだまだ上がいることが知れたな。さらに強くなったけど、慢心してはいけない)


 消耗した体力を回復させるように、コボルト達の死体を喰らい、最後にコボルト・キングの死体を喰らう。


 (コボルト達の肉よりも柔らかくて、美味いな! だがやっぱり――)


 ふと脳裏に浮かんだのは、あの日喰らった人間の味。


 コボルト・キングの肉ですら霞んでしまうほどの、濃厚な甘味と酸味。


 無意識のうちに唾液が溢れる。


 胃袋の奥が、空腹を訴えるように蠢いた。


 (いやいや、駄目だ。人間のことは考えるな)


 俺は魔物的な考えを振り払うように、コボルト・キングの死体を食べ進める。


 『【威圧】Lv.4を獲得しました』


 (さて、進化したことで身体の調子も万全だし、集落の中でも探索してみようかな)


 そう思って俺は、集落の中を歩き回り、粗末な小屋の中などを確認していった。

 読了後、リアクション、ブックマークなど、是非よろしくお願いします。

 「面白い!」や「お疲れ様です」など一言でいいので、コメントを書いて頂けると、励みになります。

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