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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第39話 片足の将軍

 コボルト・ジェネラルに統率された三匹の動きは、見事だった。


 コボルト・シャーマンが即座に魔法陣を展開し、風の弾丸を放つ。その後を追うように、コボルト・ファイターが迫る。


 さらに、コボルト・ハンターが背後へ回り込むように移動を始める。


 (ッ━━! 迷いがない。連携の練度が段違いだ!)


 しかし、俺は慌てない。何度も戦ってきた相手だ。大体の戦闘方法は把握済みである。


 目前に迫った風の弾丸を身体を捻って躱し、続いて距離を詰めてきたコボルト・ファイターが突き出した右拳を、頭上を飛び越えるように跳躍して躱す。


 (先に、コボルト・シャーマンを潰す!)


 厄介な遠距離攻撃を封じるため、コボルト・シャーマンに向かって駆け出す。


 コボルト・シャーマンは慌てることなく魔法陣を展開し、その中から顔を覗かせたのは風の矢だった。


 初見の攻撃に不意を突かれた俺は咄嗟に身体を捻って躱すが、左肩を抉られる。


 (痛ッ! クソ……次を放たれる前に仕留める!)


 【突進】を発動して瞬く間に距離を詰めると、長剣を振り上げる。


 (オラァ━━ッ……)


 振り下ろそうとした瞬間、右側頭部に衝撃が走り、吹き飛ばされた俺はズサァーと地面を転がる。


 【物理攻撃耐性】のおかげで、大したダメージはない。


 咄嗟に体勢を立て直すと、コボルト・ジェネラルが右足を振り上げた姿勢で静止していた。


 (……そうか。ジェネラルに蹴り飛ばされたのか。統率力に目が行っていたが、近接戦闘もファイターと同等の実力があるんだったな)


 思考している間に、コボルト・ジェネラルがコボルト・ファイターとコボルト・ハンターを呼び寄せる。


 俺も長剣を構え直す。


 (このままシャーマンを狙ったところで、ジェネラルに邪魔されるだけだ。連携を崩すためにも、まず狙うべきはジェネラルだな)


 暫し睨み合っていると、コボルト・ジェネラルが「グルルラァ!」と鳴き、振り上げた右腕を下ろす。


 直後、コボルト・ファイターとコボルト・ハンターが少し距離を開けて並走する。真ん中は、コボルト・シャーマンの射線が通る位置だ。


 コボルト・シャーマンが展開した魔法陣から風の矢が放たれ、左右からはコボルト・ファイターとコボルト・ハンターが迫る。


 そして真正面からは、風の矢。


 退路は後ろのみ。


 (いや、後ろに逃げても意味はない。逃げれば奴らを調子づかせるだけだ。活路は前にもある!)


 俺は風の矢を屈んで躱すと、コボルト・ファイターとコボルト・ハンターが攻撃を仕掛ける前に、低い姿勢で走り出す。


 狙いは一直線に、コボルト・シャーマン。


 距離を詰める途中で左手を拳銃の形にして【酸弾】を射出━━と同時に、コボルト・ジェネラルが「グルルラァ!」と鳴く。


 コボルト・シャーマンは咄嗟に身体を捻って躱そうとするが、右肩に酸液の弾丸が着弾した。


 右肩を左手で押さえながらこちらを睨みつけるコボルト・シャーマン。そのままトドメを刺そうと距離を詰めると、コボルト・ジェネラルが動き出す。


 だが俺の意識は、最初からコボルト・ジェネラルに向いていた。


 コボルト・ジェネラルが先程と同じように蹴り飛ばそうと右足を放った瞬間、俺は即座に身体をそちらへ向ける。


 咄嗟に長剣を振り抜く。刃が右足を捉えた瞬間、骨を断つ重い手応えが腕に伝わった。


 「グルルラァ……」


 予想外の反撃だったのか、コボルト・ジェネラルは一瞬驚きの表情を浮かべ、左足でトントンと後退る。


 (よし! このままトドメを━━)


 そう思った時、【魔力感知】が魔力を捉えた。咄嗟にコボルト・シャーマンの方へ振り向くと、魔法陣から風の矢が射出されていた。


 (ッ! ぐっ……ぁ……)


 左肩に風の矢が突き刺さる。鋭い痛みが全身を駆け抜けるが、長剣を地面に突き刺して倒れないよう堪える。


 「ブモォオオオオオ!」


 痛みを誤魔化すように雄叫びを上げると、【毒牙】を発動しながらコボルト・シャーマンの左肩に噛みつく。


 「グルルラァ!」


 コボルト・シャーマンが悲鳴を上げる。それを無視して【咬合力強化】も発動。ミシミシ、バキッと骨を噛み砕き、肉を食いちぎる。


 コボルト・シャーマンが膝から崩れ落ちるのを見届けていると、後頭部に衝撃が、右肩に軽い痛みが走る。


 コボルト・ファイターとコボルト・ハンターが背後から襲いかかってきたのだ。


 (チッ、邪魔だ!)


 地面に突き刺した長剣を逆手に握り、後方へ向かって突き刺す。「グルルラァ……」という鳴き声とともに、右肩から口が離れる。


 (コボルト・ハンターは無力化した。次は━━)


 左後方へ振り向くと、目前に右拳が迫る。咄嗟に身体を捻って躱し、【身体強化】を発動。


 一歩踏み込んで懐に入り、長剣を振り下ろす。脳天から股下にかけて真っ二つに両断され、コボルト・ファイターは息絶えた。


 (残りは、シャーマンとジェネラルのみ!)


 二匹にトドメを刺そうと動きかけた瞬間、コボルト・シャーマンの風の矢を受けた左肩がズキッと痛む。


 (ぐっ……我慢しろ! 休むのは、二匹を仕留めてからだ!)


 気合いを入れ直し、連携が崩れた今、優先して倒すべきコボルト・シャーマンに目を向ける。


 右肩は酸液で焼け爛れ、左肩は肉がなくなり骨が露わになっている。「グルル……」と低く唸るだけで、魔法を行使する余力はないようだ。


 瞬く間に距離を詰めて、コボルト・シャーマンの首を斬り飛ばす。


 (あとは……)


 周囲に視線を走らせると、コボルト・ジェネラルはなんとか左足でバランスを保ちながら、徐々に距離を取っていた。


 しかし、戦意を失ったようには見えない。それどころか、隙を窺いながら後退しているように見える。


 (まだ逆転を狙っているのか? だが、逃がさない!)


 全力で駆け出し、背後から強襲する。コボルト・ジェネラルは牙を剥き、なんとか左足で身体を支えながら、鋭く右拳を突き出す。


 (無駄だ!)


 突き出された右拳ごと前腕を斬り飛ばす。それでも、コボルト・ジェネラルは怯まない。目から闘志は消えていなかった。


 そのまま左足だけで跳ねると、残った左足を鞭のように振り抜き、鋭い蹴りを放ってくる。


 それさえも長剣で斬り飛ばし、片腕と両足を失ったコボルト・ジェネラルは地面に落下する。


 (死ね)


 最後まで鋭く睨みつけるコボルト・ジェネラルの目を真っ直ぐ見返しながら、喉元に長剣を突き刺す。


 「グルル……」


 力なく鳴いた後、長剣を引き抜くとバタリと地面に倒れた。


 「ブモォ……」


 全個体を始末したことで張り詰めた緊張が解け、その場にドサッと腰を下ろす。


 (統率された意思と迷いのない連携……ここまで厄介だとは。たとえ個体戦力で上回ろうとも、練度の高い集団には負ける可能性がある。強くなったつもりでいたが、まだまだ足りないな)


 それはそうと、身体を回復させるためにも、まずは奴らを喰わなければ。


 コボルト・ジェネラルの死体を見下ろす。これまで戦ってきたコボルト達とは、明らかに違う相手だった。


 グチャグチャ……バキボキッ……ゴクッ。


 『【統率】Lv.4を獲得しました』


 全てを腹に収めた後、俺は立ち上がる。まだ左肩は痛むが、戦闘に支障はない。


 【気配察知】と【夜目】を頼りに森の奥へ進むと、複数の気配を捉えた。


 (まだまだいるようだな。さらなる成長のためにも、俺の糧となってもらおう)

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