↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/53

第28話 遠くなる温もり

 山林の中に朝霧が漂う静かな時間帯、俺はハイオークを喰い尽くした後、その場から移動せず、身体の調子を確かめていた。


 ハイオークに進化を遂げたことで何が変わったのか、顔を両手でペタペタ触ったり、両腕両足をさまざまな角度から見たりするが、正直よく分からない。


 転生直後に確認した時と、身体的特徴は何も変わっておらず、強いて挙げるなら、視線の高さが変わったくらい。


 鏡で実際に確認したわけじゃないので断言はできないが、おそらくレベル10ごとに身長が5〜10センチほど伸びている。


 なので現在の身長は、およそ130センチ。小学校の高学年――その中でも、小さい部類に入ると思う。


 なんとか接戦を制してハイオークに勝利したわけだが、傍から見れば小さな子供が屈強な大人を捩じ伏せたのと同じことで、明らかに異様な光景だろう。


 というか、俺が本当にハイオークなのかも怪しい。オークもハイオークも二メートルはある巨体だったのに、なぜ俺だけが幼体なのか。


 世界を知るたびに、謎は深まるばかりだ。


 さて、考えても分からないことはさておき、自身の成長を確かめるため、ステータスウィンドウを表示する。


 一番優れているのは『物理攻撃力』で『177』。その他にも、100の大台を超えた能力値がいくつかある。


 確かな成長は実感できる。


 だが、この世界の基準を知らない以上、自分が強者なのかは分からない。


 どれほど成長すれば、この世界で安全に生きていけるのか。


 そしていつになれば、【暴食】の衝動に怯えずに済むのか。


 できれば人間の街で情報収集をしたいところだが、魔物であるがゆえに、人間の住む街には行けない。


 現状は見えないゴールを目指して、ひたすら狩場を巡って強くなるしかない。


 (……せめて、【暴食】の衝動くらいは抑えられるようにならないと)


 人間と遭遇すれば、待ったなしの殺し合いに発展するからな。


 とりあえず感覚的に、レベルを上げれば衝動は軽減されるので、人間を殺さないよう手加減できるまでは、レベル上げを頑張ろう。


 少し話が脱線したが、続いて、貯まったスキルポイントを何に割り振るか考えよう。


 現在のスキルポイントは『24』。今の俺は長剣で戦い、切り札として【身体強化】を使用している。


 となると、【剣術】と【身体強化】に割り振るのが妥当だろう。


 まず、スキルポイントを『9』消費して――


 『【剣術】Lv.4にUPしました』


 『【剣術】Lv.5にUPしました』


 次に、同様にスキルポイントを消費して――


 『【身体強化】Lv.4にUPしました』


 『【身体強化】Lv.5にUPしました』


 残りのスキルポイントは『6』。これは、適宜新規スキルが必要になった時のために残しておく。


 【身体強化】は詳細説明が変わり、強化倍率が『×1.3倍』から『×1.5倍』に。クールタイムも『21秒』から『15秒』に縮まった。


 実際に発動してみれば、拳撃や蹴撃で発生する風圧も、移動時に流れる景色の速さも、以前より明らかに増している。


 現状の確認は済んだ。この狩場ではこれ以上の成長を望めないし、次の狩場に移動しよう――そう思った時。


 【気配察知】が気配を捉えた。視線を向けると、散々狩り倒したオークだった。


 (……まだ朝も早いし、人間なわけないか)


 俺はいつも通り、長剣を構えて戦闘体勢を取る。


 「ブモッ!?」


 すると奴は、俺を見て驚きの声を上げた後、全身を震わせ、その場から動かなくなった。


 (……なんだ? 油断を誘っているのか?)


 これまでとは違う動きを取る奴に対して、俺は警戒心を高める。【気配察知】で潜む仲間がいないか確認しながら、オークの一挙手一投足を注視する。


 ジリジリと距離を詰めていくが、奴が攻撃動作に移る様子はない。ただその場で微動だにせず、俺を畏怖の籠った瞳で見つめ返すのみ。


 ついに長剣の間合いまで距離を詰めたが、何も変化はない。


 (コイツ……無抵抗で殺される気か?)


 しばらく長剣の切先を向けても何も変化がないことに違和感を覚えた俺は、構えを解き、「ブモブモ」と話しかけてみた。


 しかし、反応は薄い。俺の言葉を理解している様子はない。


 じゃあ、この反応はなんだ?


 以前の俺と今の俺。何が違う?


 少し思考を巡らせた後、答えに辿り着く。あまりにも変化が薄かったため忘れていたが、俺はハイオークに進化していた。


 つまり奴からしたら、俺は上位の存在。


 ゴブリンの狩場に現れた上位種も下位種を統率するような動きをしていたから、本能的に服従しているのかもしれない。


 その可能性に思い至り、警戒は解かないまま奴の身体に触れる。しかし、反撃される素振りはない。


 (マジか! ようやく俺にも仲間が――いや、仲間じゃないか。正しくは、部下か?)


 反応的には、味方でも敵でもない感じだけど……それよりも、どう意思疎通を図るか。言葉を理解できないなら、ジェスチャーくらいしか思いつかないが……。


 しかしゴブリンの上位種は、特にジェスチャーする様子もなく、鳴き声だけで下位種を統率していた。


 (じゃあやっぱり、言葉が通じるんじゃないか?)


 そう思ってしまう。だからもう一度、念のため――


 「ブモブモ、ブモッ(俺の意思が分かるなら、鳴いてくれ)」


 「ブモッ!」


 (えっ……!? 今鳴いたのか? ということは、意思が伝わったのか!?)


 「ブモブモ、ブモッ(もう一度、鳴いてくれ)」


 「ブモッ!」


 (おぉ、やっぱり! しっかり伝わってる! えっじゃあ、なんでさっきは反応なかったんだ?)


 「ブモブモ、ブモッ(さっきはなんで、反応しなかったんだ?)」


 ……無反応。


 (……なんだ? さっきと同じ反応……「鳴いてくれ」って命令は理解したのに、人間的な会話には無反応……)


 どうやら奴は、単純な命令しか理解できないらしい。しかも、自分が可能な行動に限る。


 「ブモブモ、ブモッ(棍棒で木の幹を攻撃しろ)」


 「ブモッ!」


 ドゴォーン!


 奴は命令通り、木の幹を棍棒で殴打した。


 「ブモブモ、ブモッ(俺の意思が分かるなら、頷いてくれ)」


 「……」


 やはり無反応。


 「棍棒で攻撃しろ」は理解できるが、「頷く」という概念そのものは分からないらしい。


 だから他にも、「木の幹に向かって突進しろ」だったり、「匂いを嗅ぎ分けて仲間の居場所を教えろ」とかなら、奴も理解できるのだろう。


 (なるほどなるほど。そうなると、どれだけ部下を増やせるかも気になるな)


 早速他のオークにも試してみるべく、奴に「一緒に行動しろ」と命令し、他のオークを探す。


 【気配察知】で見つけた二匹目のオークも同様の反応を示し、「一緒に行動しろ」と命令すれば、素直についてくる。


 そのまま三匹目、四匹目と試してみるが、問題なく成功。


 (もしかしてコイツらとなら……独りじゃなくなるのか?)


 そう思ったのも束の間、ふと大事なことを思い出した。


 (俺には【暴食】があるから、腹が減ったら、せっかくついてきてくれたコイツらも喰らう可能性がある。それに、オークが群れで行動していたら、確実に冒険者に狙われるだろうな)


 直視したくない現実が、そこにはあった。少なくとも、今の俺では仲間を作ることはできない。


 (時間を共有すれば、情も湧く。そんな情に苛まれながら、仲間を喰らうなんて……俺にはできない)


 だから、従えたオーク達には「仲間を探しに行け」と命令する。オーク達は命令通り森の奥へ消えていく。


 その背中を見送りながら、俺は胸の奥が妙に痛むのを感じていた。


 進化して強くなったはずなのに、俺は相変わらず独りだった。

 読了後、リアクション、ブックマークなど、是非よろしくお願いします。

 「面白い!」や「お疲れ様です」など一言でいいので、コメントを書いて頂けると、励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。