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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第26話 空虚を埋める命の数

 戦闘音と血の匂いに釣られて姿を現したのは、五匹のオーク。俺を取り囲むように陣取り、下卑た笑みを浮かべたり、鼻息を荒くしている。


 (……獲物と見定められた状態で通じるか分からないが、試すだけ試してみるか)


 先程は衝動に理性が呑み込まれて話し合う余地すらなかったが、今は理性を取り戻している。


 なら、試してみる価値はある。


 「ブモ、ブモブモ、ブモ?(俺の言葉が分かるか?)」


 対話を試みたが……奴らの反応は変わらず、俺を殺して喰う気満々の様子。少なくとも、目の前のオーク達と意思疎通を図るのは不可能らしい。


 他の魔物や人間と意思疎通できないことは仕方ないとして、同じオーク相手でも通じ合えないとは……。


 今の俺には、理解し合える相手はいないらしい。


 俺は涙を隠すように一瞬俯くが、すぐに顔を上げる。今は、敵と対峙している状況。悲しむのは、後でもできる。


 それよりもまずは、目の前の敵を倒すことに集中。目尻に浮かぶ涙を拭って、長剣を力強く握り直す。


 そして━━


 「ブモォオオオオオ!」


 悲しみを吹き飛ばすように雄叫びを上げると、直線上にいる個体に狙いを定める。強く地面を蹴り上げ、疾走する。


 瞬く間に距離が詰まると、奴は棍棒を高々と振り上げた。


 (上段からの振り下ろし! ━━なら!)


 鋭く振り下ろされた棍棒を飛び退いて躱し、棍棒を踏み台にして跳躍。奴の脳天目掛けて、長剣を振り下ろす。


 ザシュッ!


 奴は頭から胸の辺りまで真っ二つに斬り裂かれ、大量の血を噴き出しながら、ゆっくりと地面に倒れる。


 先程よりも、明らかに斬れやすくなっている。


 レベルがオーク達に追いつき、スキル補正込みの能力値では上回っているので、俺の攻撃が通じるようになったのだ。


 「ブモォオオオ!」


 右側から二匹目のオークが迫る。直前で棍棒を振り上げ、薙ぎ払うように棍棒を振るう。


 左側から巨大な壁のように迫る棍棒に対して、長剣を振り下ろす。棍棒自体はオークほど頑丈ではないらしく、あっさりと両断した。


 「ブモッ……!」


 愛用の武器が両断されたことに驚き、思わず後ずさる奴の懐へ素早く潜り込む。


 今度は、頭だけを斬り落とすように長剣を振り抜く。首元から血が噴き出し、頭が宙を舞う。


 巨体は、力なく地面に倒れた。


 残り三匹。


 そのまま右前方にいる個体に狙いを定めた時、後ろから急接近する気配を捉えた。素早く振り返ると、肩を突き出した巨体がすでに目前に迫っていた。


 「ブモッ……」


 俺は防御体勢を取る暇もなく、真正面から突進を受ける。体格と体重に大きな開きがあるため、軽々と吹き飛ばされる。


 木の幹に激しく衝突し、根元に背中を預けるように倒れ込む。しかし俺は、すぐに起き上がり、長剣を構え直す。


 上昇した能力値と【物理攻撃耐性】のおかげで、衝撃は凄まじかったが、ダメージは少なかった。


 残りの三匹が連なるようにして駆け出す。ドスンドスンッという足音とともに、周囲の枝葉が揺れる。


 最初に俺のもとへ到着した個体が棍棒を振り上げた瞬間を狙い、左手を拳銃の形にして【酸弾】を射出。


 「ブモッ! ブモ……」


 顔が焼け爛れる痛みで棍棒を手放し、両手で顔を押さえながら膝を折り、何度も地面を転げ回る。


 (……こいつは後回しでいい)


 すぐに視線を上げ、四匹目に狙いを定める。酸弾を受けた奴が手放した棍棒を左手で拾い上げ、迫り来る奴に向けて投げつける。


 「ブモッ!」


 驚きの声を上げながらも、奴は飛来する棍棒を同じく棍棒で叩き落とす。


 その隙に距離を詰めていた俺は、その場で跳躍すると、奴の脳天に長剣を振り下ろした。


 (これで、あと一匹!)


 最後の個体に視線を向けると、奴は怯える様子を見せ、方向転換して逃げ始める。


 (逃すか!)


 【身体強化】を発動して能力値を強化した後、素早く疾走。あっという間に距離を縮め、背中を斬りつける。


 「ブモッ!」


 背中を斬りつけられた痛みで転倒した奴の後ろ首に、深々と長剣を突き刺してトドメを刺した。


 そのまま捕食行動には入らず、酸弾を受けて苦しんでいる奴のもとへ向かい、長剣を振り抜いて頭を斬り落とす。


 (ふぅ……終始有利に戦えた気がする。武器のおかげか、それとも俺も成長したのか。なんにせよ、着実に成長はしている)


 そのことに満足していると、ドクンッと胸が鳴った後、渇きと食欲が沸々と湧き上がり、口元に涎が溢れ出る。


 (本当に厄介だな。【暴食】は……)


 衝動のままに、近くに転がる死体に口をつける。皮膚と肉を食いちぎり、まだ温かい内臓を飲み込むたびに、【暴食】が歓喜の声を上げる。


 『Lv.25にUPしました』


 『【突進】Lv.3にUPしました』


 『【物理攻撃耐性】Lv.6にUPしました』


 『【精力絶倫】Lv.3にUPしました』


 しかし、それはほんの一瞬。人間を喰らった時のような強烈な愉悦は感じられず、心は満たされない。


 (この空虚な心を満たすには、また人間を喰らうしかない。でも、そんなことはできないから、"質"ではなく"量"で誤魔化すしかない)


 同じ過ちを繰り返さないためにも、この狩場でオークを狩り続けるしかない。


 空に浮かぶ月明かりが差し込み、点々と山林の中を照らす中、俺は【気配察知】と【夜目】を頼りに他のオークを探す。


 見つけ次第、強襲して喰らう。


 血の匂いに誘われて集まったオーク達も次々と殺し、【暴食】の衝動を鎮めるためだけに、狩場を蹂躙する。


 月明かりの下、オーク達の悲鳴とグチャグチャという不気味で不快な音が響き渡る。


 ━━50匹目。


 『Lv.26にUPしました』


 『【突進】Lv.4にUPしました』


 『【物理攻撃耐性】Lv.7にUPしました』


 『【精力絶倫】Lv.4にUPしました』


 「ブモッ! ブモッ……」


 「ブモォオオオオオ━━」


 オーク達の雄叫びや悲鳴が絶え間なく響き渡り、一瞬静まり返ったと思ったら、濃密な血の匂いが風に乗って山中に広がる。


 ━━70匹目。


 『Lv.27にUPしました』


 『【棍棒術】Lv.6にUPしました』


 『【突進】Lv.5にUPしました』


 『【精力絶倫】Lv.5にUPしました』


 夜もだいぶ深まり、もうすぐ夜明けを迎える頃、狩場は不気味なほど静まり返り、オークの息遣いすら聞こえない。


 (ハァ、ハァ、ハァ……駄目だ。全く満たされない。狩場内を走り回ったから余計なんだろうけど、空腹感はここへ来た時と変わらない)


 オークを大量に喰らったにも関わらず、空腹感が消えることはなかった。


 (自分でも不思議に思うが、こんな小さい身体のどこに、あれだけの量が入って━━)


 自分の身体構造について不思議に思っていると、背後に突然気配を捉えた。オークを倒しまくったため、終盤は【気配察知】にもほとんど反応がなかった。


 だから「まだ取り逃した個体がいたのか」と思って背後へ振り返ると、そこには一匹のオーク。


 だが、背格好や特徴は同じなのに、オークよりも強大な気配を纏っている。オークと対峙した時よりも威圧感があり、空気が重く感じる。


 この気配の感じ方には覚えがある。これまで何度も戦ってきた"上位種"の気配だ。


 (こいつを喰ったら、少しは腹が満たされるか?)


 俺は逸る気持ちを抑えながら、長剣の切先を奴に向ける。


 狩場を走り回って極限まで体力を消耗しているせいか、理性を呑み込むような【暴食】の衝動は、比較的軽い。


 理性を保てている今なら、上位種であろうと勝機はある。


 俺と奴はしばらく睨み合った後、次の瞬間、同時に地面を蹴っていた。

 読了後、リアクション、ブックマークなど、是非よろしくお願いします。

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