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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第24話 夜山に響く雄叫び

 初めて人間を喰らった俺は、一度は「罪を背負って生きていこう」と決意した。


 当初の予定通り街道を北へ向かって進み始めたが、中々消えてくれない罪悪感に苛まれ続けた。


 本能に突き動かされていたため、人間を喰らった時の感触などは覚えていない。ただ、とても甘美だったことだけは、身体が覚えていた。


 その時に感じた味と残っていた血痕を見るに、俺が人間を喰らったのは紛れもない事実だった。


 だから、なんとか気持ちを取り直して行動を再開したわけだが、〝人間を殺した罪の意識〟が消えずに残り続ける。


 (……俺は人間を殺した。『本能に抗えなかった』なんて言い訳にもならない。俺は取り返しのつかないことを……でも、今まで感じたことのない美味さだった)


 そう思った瞬間、俺は自分が怖くなった。


 罪悪感で吐き気がするはずなのに、脳裏に焼き付いて離れなかったのは、喰らった瞬間の甘美な味だった。


 思い出すだけで唾液が滲み、腹の奥が熱を帯びる。もう一度人間と遭遇した時、「喰わない」と断言できる自信がなかった。


 (……人間を喰らったことで、もう本当に取り返しのつかないところへ来てしまったのか)


 後戻りできない予感に気を紛らわすため、アーロンの遺品――長剣へ目を向ける。


 ほぼ身の丈もある長剣だが、試しに両手で握って振ってみると、軽々と振れた。


 技術など皆無の力任せな振り方だが、傍から見れば全く重さを感じさせないだろう。


 ――なら、片手はどうだろうか?


 右手で長剣を振るってみると、両手で振った時と同様、全く重さを感じない。長剣を振るうたび、空気を裂く音が耳に届く。


 技術はない。ただ膂力だけで振るわれた一撃は、周囲の草花を大きく揺らした。


 あとは技術が伴えば、実際の強さも増すだろう。


 それと、アーロンから獲得した【剣術】が、一体どんな効果をもたらしてくれるのか。


 ステータスウィンドウを表示し、項目をタップして詳細説明を確認しておく。


━━━━━━━━━━

・能力名 【剣術】

・分類  常時発動型パッシブ

・効果

 長剣や短剣など、〝剣〟に分類される武器を扱う時、攻撃および防御動作に補正。

 また、熟達速度にも補正がかかり、スキルレベルが上昇しやすくなる。

━━━━━━━━━━


 先ほどまで不安定だった剣筋が、数回振るっただけで僅かに安定していく。まるで身体が、〝剣の扱い方〟を学習しているようだった。


 全くの素人でも、ある程度剣を扱えるようにしてくれるのは、正直ありがたい。


 地道な修練が必要であれば、当分この長剣がお荷物になっていただろうからな。


 さらに熟達速度にも補正がかかるので、長く使い続ければ、いずれ剣の達人並みに扱えるようになるかもしれない。


 ただ、才能の有無がどのように関わってくるかは気になるところだ。


 熟達速度に補正があるとはいえ、才能の差までは埋められないかもしれない。もっとも、今の俺に確かめる術はないが。


 スキルが存在するこの世界なら、そういった研究をしている者もいるだろうが、今の俺には知りようがない。


 それよりも今は、狩場を巡って地力をつけ、自己防衛のために力をつけなければ。冒険者と遭遇すれば、十中八九戦闘になるからな。


 そんなことを考えながら、長剣を振るう。


 上段からの振り下ろし、下段からの斬り上げ、左右からの薙ぎ払いなど、動画で見た動きを見様見真似で再現する。


 早く狩場を見つけなければならないので、十回・二十回と回数を決め、振り終えたら歩みを再開するという流れで、街道を進んでいく。


 天高く昇っていた太陽が徐々に傾き、ほとんど地平線の向こうへ隠れてしまった頃、遠目に新たな街を発見した。


 周囲を取り囲む防壁が木の柵ではなく、聳え立つ城壁だったため、〝村〟ではなく〝街〟と判断した。


 城壁の上には炎が灯っており、人々の声が風に乗って微かに聞こえてくる。あの内側には、人々の生活がある。


 城壁の向こうにはどんな街並みが広がり、どんな人々が暮らしているのかとても気になるが……今は無理だから、考えないようにする。


 それよりも、街道の手前から枝分かれした道が東へ向かって伸びており、その先は山の中へと続いていた。


 パッと見た感じでは、山の中に建物など人間が生活している様子はない。となると、あそこが狩場になるのだろうか。


 この時間帯なら人間はいないだろうと判断し、枝道を進んで木々の生い茂る山の中へ入った。


 【夜目】があるので、視界は問題ない。木々の間を抜けて進んでいると、【気配察知】が右前方の気配を捉えた。


 一瞬「人間か!?」と警戒を強めたが、気配の正体は人間ではなかった。


 身長は二メートルほどの巨体で、でっぷりと突き出た腹、豚あるいは猪に似た頭をしている。


 (もしかして……)


 俺は逸る気持ちを抑えて、【看破】を発動した。


━━━━━━━━━━

(簡略ステータス)

・オーク Lv.25

・平均能力値 62

・所持スキル 【棍棒術】【突進】【嗅覚強化】【物理攻撃耐性】【精力絶倫】

━━━━━━━━━━


 なんと、ここに来て俺と同じオーク。思わず胸が高鳴る。


 身長に大幅な違いはあれど、身体的特徴はほぼ同じ。それに俺は「ブモブモ」とオークの言葉らしき音しか喋れない。


 人間には拒絶される。だが、同じ魔物なら違うかもしれない。俺にも、ようやく居場所が見つかるかもしれない。


 そう思って慎重に近づこうと一歩踏み出した時、奴が騒めき出す。


 ブラックウルフの上位種――ダークウルフよりも格上で、分厚い脂肪と筋肉に覆われた体躯。


 【暴食】の衝動が雄叫びを上げ、瞬く間に俺の理性を侵食していく。


 (ぐっ……待て。アイツとはもしかしたら――)


 しかし、衝動に抗うことは許されず、俺は夜の帳が下りた山の中で雄叫びを上げた。


 「ブモォオオオオオ!」


 木々が騒めき、枝に止まっていた鳥たちが一斉に飛び立つ。


 俺は口元から涎を垂らしながら奴へ向かって突撃し、気づけば、握っていた長剣を投げ捨てていた。


 ――喰いたい。


 その欲望だけが、俺の頭を埋め尽くしていた。

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