↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/53

第20話 弱点は魔法、されど届かず

 冒険者ギルドに張り出されていた護衛依頼の内容が、『自分達が生まれ育った村までの護衛』だったので、村に戻るついでに依頼を受けた。


 入口近くで護衛対象の商人と合流し、朝早くに出発。


 幸い天気も良く、周辺には狩り慣れた魔物しかいないため、商人のオッサンと談笑しながら街道を進んでいた。


 しかし、ふと周囲を見渡した時、これまで見たことのない異質な存在を発見した。身長は十代前半の子供くらいで、肌の色は薄茶色。


 そんな人型の何かが、街道に背を向ける形でその場にしゃがみ込んでいた。


 (人間……ではないよな。じゃあ、魔物か? だが、襲ってくる素振りはないな)


 そう思っていると、仲間達も異質な存在に気づく。


 「……なんだ、あれ?」


 長槍を扱い、同じく前衛で戦うエイブラムが、俺と同じように疑問を口にした。


 「待って、【看破】で確認してみるわ」


 魔法を扱い、後衛を務めるアデラが、魔物の正体を探る。


 「……あの魔物は、オークよ」


 「「オーク!?」」


 俺とエイブラムは驚きの声を上げ、アデラに視線を向けた。


 「待て、アデラ。オークは2メートルもある巨体だと聞いたぞ。あれはどう見ても小さすぎる。間違いじゃないのか?」


 念のため、アデラにもう一度確認するが……。


 「もう一度確認してみたけど、間違いなくオークよ。よく聞いて。レベルも能力値も、私達より高いわ。それに、所持スキルが多すぎる」


 それを聞いた俺は、一つずつ確認していくことにした。


 「レベルは?」


 「19」


 「能力値は何が優れていて、何が弱点だ?」


 「『物理攻撃力』と『技術力』が『100』を超えているわ。他も『50』以上と高いけど、『魔法防御力』と『状態異常抵抗力』が『38』と低いわ」


 「なら、魔法攻撃が重要になるな。所持スキルは?」


 「スライムやゴブリン、ホーン・ラビットのスキルを持っているわ。それに、【格闘術】【身体強化】【看破】━━人間のスキルまで獲得しているみたい」


 奴の情報を聞いた俺とエイブラムは、言葉を失った。他の魔物のスキルまで扱えて、さらに人間のスキルまで……。


 明らかに普通じゃない。そして、自分達の手に負える相手でもない。


 その場に重苦しい沈黙が落ちる。護衛対象の商人さえも、俺達の暗い雰囲気を感じ取り、青褪めた顔で奴を見つめていた。


 「……皆、聞いてくれ。俺達は今、護衛依頼の真っ最中だ。目的は依頼者を目的地まで届けることで、奴と戦うことじゃない。幸い、奴の意識はこちらに向いていない。このままゆっくりと通り抜けるぞ」


 「あぁ、分かった」


 「分かったわ」


 平常心を装いつつ、最大限警戒しながら進み出すと、突然奴がこちらへ振り向いた。


 (マズイ……!)


 「エイブラム、アデラ!」


 「おう!」


 「えぇ」


 すぐに二人の名前を呼び、依頼者と馬車を守るように陣形を組む。俺とエイブラムが前衛、アデラが後衛。


 しばしお互いに視線を交わす。黄色く濁った瞳、指先の蹄、突き出た腹━━確かに、人間ではない。


 自分達よりも圧倒的に小柄で、軽く肩を押せば倒れてしまいそうな見た目ではあるが……なぜだろう。


 本能が「逃げろ!」と強く叫んでいる。


 気づけば、背中を冷たい汗が流れていた。


 だが、民の生活を守る冒険者になった以上、護衛対象を置いて逃げるわけにはいかなかった。


 街道上に静寂が落ちる。お互いの呼吸音や衣服が擦れる音、唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえる。


 そして最大限警戒していたからか、奴が何かをする素振りを見せた瞬間、俺は咄嗟にアデラへ向かって叫んでいた。


 「アデラ! 魔法を撃て!」


 「分かっているわ! 敵を穿て、魔力弾マナ・バレット!」


 アデラが即座に反応し、魔力弾マナ・バレットが奴に向かって放たれる。だが奴は、いとも簡単に回避した。


 すぐに次の行動へ移ろうとした時、「ブモォオオオオオ!」と耳障りな雄叫びが響き渡る。


 先程までの様子とは打って変わり、濃密な殺意を纏い、口元から涎を垂らしながら、俺達に向かって突撃してきた。


 「アデラ! もう一度、魔法だ! 今度は奴の動きを止めろ!」


 「分かったわ! 敵を拘束しろ、魔力縄マナ・ロープ!」


 魔法陣から飛び出した水色に輝く長縄が奴に巻きつき、動きを止める。


 「よし! エイブラム、行くぞ!」


 「おう!」


 俺達は素早く駆け出し、長縄を振りほどこうと暴れている奴に接近。右側から俺が長剣を振り下ろし、左側からエイブラムが脇腹に向かって長槍を突き出す。


 奴は本能のままに暴れている様子で、防御や回避行動を取る素振りを見せない。そのまま俺達の刃が奴の身体に吸い込まれるが……。


 「「なっ━━!?」」


 俺達は同時に、驚愕の表情を浮かべた。俺の長剣は右肩を浅く斬り裂いた程度で止まり、エイブラムの長槍は刃先がほとんど刺さっていない。


 小柄な見た目とは裏腹に、恐ろしく頑丈な身体。自分達の攻撃では、ほとんど奴に傷をつけられないと悟る。


 やはり攻撃の中心はアデラに担ってもらい、自分達は撹乱と足止めに徹するしかない。


 「アデラ! 俺達がコイツを足止めする! 隙を狙って、魔法で攻撃し続けろ!」


 「分かったわ!」


 言い終えた間に、奴は魔力縄マナ・ロープの拘束から抜け出す。再び雄叫びを上げたかと思うと、一気に距離を詰めて右拳を振るってきた。


 咄嗟に剣身で防御するが、拳が長剣にめり込むことも厭わず、圧倒的な力で押し込んでくる。


 「オラァ! よそ見するんじゃねぇよ!」


 奴の左側面から、エイブラムが鋭く長槍を突き出す。奴の意識がエイブラムに向き、長槍を掴んだ。


 「ぐっ……コイツ……」


 力で押し負けているエイブラムは長槍を引き抜こうとするが、微動だにしない。


 奴は一度右に腕を振るったかと思うと、左へ勢いよく振り抜き、エイブラムは吹っ飛ばされた。


 エイブラムは何度も地面を転がり、街道横の草原に投げ出される。


 長槍を失って丸腰のエイブラムを今狙われるわけにはいかないので、すぐに間合いを詰めて長剣で斬りかかる。


 「クソッ!」


 しかし、奴の身体に浅い斬痕を刻むだけで、反撃に振るわれる拳撃を防ぐのが精一杯だった。


 (小柄な身体のどこに、これほどの力がある……!?)


 「アーロン! 退がって!」


 アデラの指示に従って奴から一度距離を取ると、水色に輝く矢が横切り、奴の額に命中した。


 「ブモッ……」


 俺達の攻撃よりは効いたらしく、奴は苦悶の唸り声を漏らしながら一歩二歩と後退る。だが、まだ致命傷には程遠い。


 「アデラ! 魔力は大丈夫か?」


 「今ので底をついたわ。すぐにポーションで回復する!」


 「分かった! エイブラムは大丈夫か?」


 「問題ない!」


 アデラがポーションで魔力を回復させている間、俺とエイブラムで時間を稼ぐ。


 エイブラムは吹っ飛ばされた際に脇腹を痛めたのか、脇腹を押さえながらも奴が手放した長槍を回収し、前衛に復帰した。


 なんとしても奴を倒し、この場で生き残る。俺は改めて気合いを入れ直す。背後では、商人が怯えた声で馬を宥めていた。


 「エイブラム! 踏ん張れよ!」


 「任せろ!」


 依頼者とアデラに奴を近づかせないため、俺達は長剣と長槍で猛攻を仕掛け始めた。


 俺が長剣で斬りつけ、エイブラムが長槍を鋭く突き出す。


 だが、何度刃で斬りつけても、傷口から血が流れ出ても、奴の濁った瞳から殺意は消えない。


 むしろ、雄叫びは先程より激しさを増していた。

 読了後、リアクション、ブックマークなど、是非よろしくお願いします。

 「面白い!」や「お疲れ様です」など一言でいいので、コメントを書いて頂けると、励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。