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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第18話 満身創痍の死闘

 ブラックウルフとの戦闘で意識を失っていた俺は、全身に針を突き立てられたような悪寒が走り、弾かれるように飛び起きた。


 悪寒の正体を探ろうとした瞬間、左肩に大きくて黒い顎が迫っており、そのまま噛みつかれて軽々と持ち上げられた。


 (ぐっ、ぁ……痛い痛い痛い!)


 鋭い牙が肉を裂いて食い込み、左肩に激痛が走る。咄嗟に顎を掴んで振り解こうと暴れると、顔を振られて投げ飛ばされた。


 勢いよく木の幹に衝突し、ズズーと木の根元に倒れ込む。


 (クソッ。連戦で疲労困憊なのに、また新たな敵か!?)


 なんとか木の幹を支えにして立ち上がり、前方に視線を向ける。


 そこには、ブラックウルフよりも一回り大きい漆黒の狼がいた。


 「グルルル……」


 ブラックウルフとは比較にならない威圧感。低い唸り声が響くだけで、森の空気が重く沈む。


 俺は即座に【看破】を発動して、新たな敵の正体を探る。


━━━━━━━━━━

(簡略ステータス)

・ダークウルフ Lv.20

・平均能力値 46

・所持スキル 【嗅覚強化】【咬合力強化】【追走】【夜目】

━━━━━━━━━━


 (……そうだった! あれだけブラックウルフを倒したんだから、上位種が出現する━━なのに、俺は気持ち良く寝てたってことか)


 これまでスライム・ゴブリン・ホーンラビットと、通常種を多く倒せば上位種が出現するのは分かっていた。


 それなのに、その可能性を失念していたとは……でも、あの時は本当に限界だったんだ。


 今はまだ運良く生き残っているんだから、これからのことを考えよう。


 まずアイツは、ブラックウルフの上位種━━ダークウルフ。レベルは俺よりも高いが、平均能力値は俺の方が高い。


 ブラックウルフを喰らい続けたことで、スキルの性能も俺の方が上だ。


 だが、奴は体力も調子も万全なのに対して、俺は連戦と怪我で疲労困憊。形勢は確実に、こちらが不利だ。


 それでも、ここで踏ん張らなければ、ただ喰われて終わり。そんなのは真っ平御免なので、必死に足掻いてやるつもりだ。


 幸い、奴一匹だけのようだしな。


 俺は覚悟を決め、拳を構えて腰を落とす。俺と奴の間に沈黙が訪れ、ピンッと糸が張るように緊張感が高まっていく。


 奴は迂闊に距離を詰めない。左に向かって歩き始めたと思ったら右に向かって歩き出し、俺の意識を左右に振りながら、徐々に距離を詰めてくる。


 彼我の距離が縮まるにつれて、感覚が研ぎ澄まされる。


 しかしここで、噛まれた左肩に痛みが走り、俺が顔を顰めて隙を晒した瞬間、奴は一気に加速。


 瞬く間に距離を詰めると、口を大きく開けて噛みつこうとしてきた。咄嗟に俺は横へ転がるように回避する。


 間一髪で躱して起き上がると、奴はすでに目前。俺は素早く飛び跳ねて、攻撃を回避した。


 (あっぶねぇ! それよりも、意外と高く跳べたな)


 筋力値が伸びたおかげか、【跳躍】のレベルが高いからか。いずれにせよ、小太りの見た目からは想像できないほど、今の動きは身軽だった。


 着地すると同時に駆け出し、奴に向かって突撃する。奴は勢いそのままに、俺から逃げるように走り始める。


 奴も速い。だが【追走】が発動している今、徐々に距離は縮まっていく。


 このままでは追いつかれると悟ったのか、いきなり方向転換して俺に突撃してきた。


 (上等だ!)


 俺は走りながら右手を拳銃の形にして、奴を引きつける。


 奴は俺が変な動きを取ったことで一瞬警戒する素振りを見せたが、一向に何かをする気配がないと判断し、突撃を続行する。


 あとおよそ3メートルというところで、奴の顔面に向かって【酸弾】を射出。


 しかし、すんでのところで軽く飛び跳ねて躱され、勢いそのままに突撃してくる。


 「グルルラァァ!」


 雄叫びを上げて接近してくる奴に対して、俺は【身体強化】を発動。一時的に『物理攻撃力』『物理防御力』『移動速度』が1.3倍に強化される。


 奴が口を大きく開けて噛みつこうとしてきたところを狙い、さらに姿勢を低くして奴の胴体に腕を回し、力任せに押し返す。


 最初こそ後ろ足で踏ん張っていたが、徐々に力で押し負け、そのまま俺に抱えられた形で走らされる。


 抱えて走る俺に対して、奴は右肩に噛みつき、なんとか拘束を振り解こうとする。右肩から血が流れ出て、通り過ぎた場所にポツポツと落ちていく。


 (ぐっ……早く! 早く、どこかの木にぶつかれ!)


 奴を抱えたまま走っているため、前方が見えない。ただ木の幹にぶつけることだけを考えて、がむしゃらに走り続ける。


 底をついた体力をなんとか振り絞り、気合いだけで走り抜けていると━━


 ドゴォッ!


 凄まじい衝撃が森に響き、木の幹がミシミシと悲鳴を上げる。


 「ギャンッ!」


 目的通り、木の幹に勢いよく衝突。衝撃と痛みが背中に走り、思わず右肩から口を離すダークウルフ。


 その隙を狙って、俺は胴体へ【身体強化】も乗せた渾身の一撃を振り抜く。バキバキッと骨が砕ける感触が、右拳から伝わってくる。


 だが、この程度でやられるとは思っていない。俺はすぐに右拳を引いて左拳を振り抜き、さらに骨を砕きにいく。


 「ギャンッ!」


 痛みで思わず鳴き声を上げた奴は、必死の抵抗で俺の頭に噛みつこうとする。それを防ぐため、俺は奴の顎下に向かって右拳を振り上げた。


 下顎を砕いた。これなら、もうまともに噛みつけないはずだ。あとはトドメを刺すだけだ。


 胴体を滅茶苦茶に殴りつけ、下がってきた顔面も左手で木の幹に押し付けながら、右拳を何度も叩き込む。


 森の中に、枝葉が揺れる音とダークウルフの骨が砕ける音が、断続的に響く。


 「ブモォオオオオオ!」


 最後に渾身の一発を顔面に叩き込むと、奴は力なく木の根元に倒れた。


 『Lv.15にUPしました』


 『Lv.16にUPしました』


 脳内に、立て続けにレベル上昇を知らせる声が鳴り響く。しかも、一つや二つじゃない。


 『Lv.17にUPしました』


 『Lv.18にUPしました』


 『Lv.19にUPしました』


 ……一気に五つ。


 声が聞こえなくなったところで、俺はドサっとその場に座り込む。


 (今回は、邪魔な下位種がいなくて本当に良かった。一匹だけだったから、なんとか勝てたな)


 連戦に次ぐ連戦での辛勝ではあったが、勝ちは勝ちだ。


 およそ100匹のブラックウルフを喰らったばかりだというのに、今の戦闘で本当の本当に体力が底をついたため、「ぐぅぅぅぅぅ」とお腹の虫が鳴る。


 足元に転がるダークウルフの死体に近づき、生え揃う鋭い牙の一本をへし折って毛皮を裂く。


 露わになった肉に勢いよく齧り付き、体力を回復させるように貪り始める。


 (ぷはぁ! 喰った、喰った! あぁもう疲れすぎて、動く気になれない……)


 木の幹に背中を預けながら、空を見上げる。


 空は完全に暗闇に染まり、薄暗かった森は【夜目】がなければ、一寸先も見通せないほど暗い。


 森には風に揺られる枝葉の音が響くだけで、先程までの喧騒が嘘のように、不気味なほど静かだった。


 まるで森全体が、俺という怪物の誕生を恐れているかのように。

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