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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第15話 異質な子供オークの謎

 何かに突き刺されたような鋭い痛みが全身に走り、本能に呑み込まれていた理性が覚醒する。


 気づいたら、目前に人間達の構える方盾が行手を塞ぎ、その上から剣や槍が伸びてきて、俺の顔や胴体を突き刺していた。


 幸い、皮膚の表面を軽く突き破る程度で致命傷には至らないが、傷口から血が流れ出て、あたりは血生臭い。


 響き渡る人間の怒声。何を喋っているかは分からないが、声色から決死の覚悟のようなものが感じ取れる。


 理性を取り戻した俺は、自分が何をしていたのか理解した。


 人間を襲っていた。その事実に嫌悪感はある。


 だがそれ以上に、無意識のまま人間を襲っていたことへの恐怖が勝っていた。


 動揺と体力の消耗、ダメージの蓄積により、俺は即座に距離を取る。


 (ハァ……ハァ……自分から襲っておいてなんだけど、死にたくない! このままじゃ袋叩きにされるかもしれないから、どこか身を隠せる場所は……)


 距離を取りながら周囲へ素早く視線を走らせ、身を隠して休める場所を探す。すると、村の東側に森を発見した。


 (あの森に身を隠そう。魔物がいる可能性はあるが、このまま人間達に囲まれるよりはマシだ)


 そう判断すると、森に向かって全速力で逃げ始めた。


 途中で人間達の動向が気になり、肩越しに振り返る。一部の人間が追おうと飛び出してきたが、途中で足を止め、追跡を諦めたようだ。


 (何があったかは分からないが、こっちにとっては好都合だ!)


 俺は前方に視線を戻し、駆け込むように森の中へ入って行った。



 未知の魔物――オークの撃退に成功した冒険者達は、一部を見張りとして残し、残りは冒険者ギルドへ戻っていた。


 ギルドに戻ると、一階のロビーでギルドマスターと受付嬢が待っていた。


 「皆、大した怪我もなく無事に戻ってきたようだな。村を守ってくれて、本当に感謝する。それで、エイベル。詳しい報告を聞かせてもらえるか?」


 「あぁ。最初に未知の魔物と戦ったのは、アランのパーティーだ。だが、アラン達では力不足で、エイミーが俺達に助けを求めてきた。そうだな?」


 視線を向けられたアラン達は、神妙に頷く。


 「現場へ急行し、未知の魔物の正体はオークだと判明した。レベルは14、他の魔物のスキルや人間のスキルを所持した異質な魔物だった。今回はなんとか撃退に成功し、奴はブラックウルフの縄張りに逃げ込んだ。今は村の入口に見張りを何人か置いてきた。報告は以上だ」


 エイベルの報告を黙って聞いていたギルドマスターは、少し思考を巡らせた後、口を開いた。


 「まず、アラン達に尋ねたい。オークとの遭遇状況について、詳しく教えてもらえるか?」


 三人は顔を見合わせて頷くと、代表してアランが説明し始めた。


 「俺達がいつも通りホーン・ラビットを狩ろうと狩場へ向かったら、奴はいました。おそらく奴はホーン・ラビットを食い荒らしていたようで、足元は夥しい量の血で草原が真っ赤になっていました」


 「そうか。アラン達が向かった時には、すでに狩場に居たというわけだな。しかし、付近の狩場にオークが生息する場所はない。一体どこから現れたのか、それが気になるな……アラン、説明を続けてくれ」


 「はい。俺達はオークとは分からなかったので、『討伐すればランクアップに繋がるかも』という安易な考えで戦いを挑みましたが、全く敵わず、村まで撤退して応援を呼ぶことにしました」


 「……確かに軽率な判断だったな。一歩間違えれば、お前達はこの世に居なかっただろう。今回は運が良く、良い勉強になったな。ただ、撤退して応援を呼ぶ判断は良かった」


 「はい。今回のことを教訓として、今後は軽率な行動を控えるようにします。俺からの報告は以上です」


 「報告ご苦労。次は、オークのレベルについてだな。一般的なオークは下級冒険者の壁であり、主に中級冒険者の討伐対象だ。それなのにそのオークは、レベル14。Fランク程度でしかない。何か考えられることはあるか? エイベル」


 「俺達が相手にしたのは、アラン達よりも背の低いオークの子供でした。それが何か関係あるのかもしれません」


 「子供? それなら、ますますおかしい。先程も言ったが、付近にオークが生息する狩場はない。それに、もしどこからか移動してきたとしても、親がいないのはどういうことだ?」


 「全く見当もつきません。不審な点はまだあります。そのオークは、スライムやゴブリン、ホーン・ラビットのスキルだけでなく、【格闘術】や【身体強化】など人間のスキルまで所持していたんです。明らかに通常の個体ではありません」


 「なぜ、これほど多種多様なスキルを所持しているのか。魔物のスキルだけならまだしも、人間のスキルまで使いこなすとなれば、見た目やレベル以上に危険な魔物だ」


 「その通りです。実際『物理攻撃力』は『92』もあり、私達の二倍以上です。もし一対一で戦うとなったら、私達の誰も倒せないでしょう」


 「今回は数的有利で撃退できたというわけか。それで、奴は手負のままブラックウルフの縄張りに向かったんだな?」


 「はい。致命傷を与えることはできませんでしたが、多くの刺し傷が身体に刻まれ、血も流していました。あの状態で森を生き残れるとは思いません」


 「その点については、私も同意見だ。レベルだけ見ればオークの方が高いが、それでもそれほど差はない。群れで襲われて、いずれ死ぬだろう」


 「そうなることを願うばかりです」


 「よし、分かった。戦いの後ですまなかったな。今日から五日間、村の周囲に見張りを立て、狩場へ向かうのを禁止する。その代わり、巡回警備を緊急依頼として報酬を支払う。突然ですまないが、皆にも協力してほしい」


 「……分かりました。事情が事情ですからね。皆も分かったな?」


 「「「「「おう!」」」」」


 「では、私は本部へ送る報告書の作成があるから、これで失礼する。それと、今回は私の奢りだ。是非、楽しんでくれ」


 「「「「「ありがとうございます!」」」」」


 ギルドマスターは二階の執務室へ向かう途中、「もし生き延びていた場合、厄介なことになるかもしれんな……」と漏らしたが、その呟きは冒険者達の喧騒に掻き消された。


 冒険者達はワイワイと騒ぎながら各々テーブルにつき、併設された料理屋で飯と酒を頼み、オーク撃退を祝して乾杯した。



 冒険者達が祝杯を挙げている頃――。


 ブラックウルフの縄張りへ逃げ込んだオークは、血の匂いを撒き散らしながら、森の奥へと踏み込んでいた。


 呼吸するたびに身体中の刺し傷が痛み、足元へ血が滴り落ちていた。

 読了後、リアクション、ブックマークなど、是非よろしくお願いします。

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