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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第13話 村門に響く足音

 未知の魔物の雄叫びを聞いたアラン・バート・エイミーの三人は、即座に後ろへ振り返り、逃げ始めた。


 「バート、エイミー! 全速力で村に向かって走れ! 殿は俺が務める。お前らは振り返らずに走れ!」


 正式に決めたわけではないが、アランはパーティーのリーダーとしての責任感と、言い出しっぺの罪悪感から、自分が殿を務めることにした。


 本当なら誰よりも早く逃げ出したい。それでも、大切な仲間を守るためにここで踏ん張るべきだと判断した。


 幸い、村まであと少し。


 「ブモッ、ブモッ、ブモッ」


 奴の息遣いが徐々に近づいていると感じ、肩越しに振り返ると、すぐそこまで迫っていた。


 (速い! ここは俺が時間を稼いで、二人を逃がさないと!)


 アランは足を止め、振り返って、真正面から奴の相手をすることにした。


 「ブモォオオオオオ!」


 再び雄叫びを上げて迫る奴は、自分より体が小さいにもかかわらず、その気配の荒々しさにアランは気圧された。


 「くっ……うぉおおおおお!」


 自らを鼓舞し、圧しかかるプレッシャーを振り払うため、負けじと大声を上げながら、真正面から飛びかかってくる奴の顔面に長剣を振り下ろす。


 しかし奴の体は想像以上に頑丈で、長剣は皮膚の表面を浅く斬るだけだった。しかも奴は、顔面に長剣が刺さったまま、流血も痛みもお構いなしに長剣を押し返してくる。


 「ぐぅ……なんて力だ」


 後ろ足を大きく引き、【身体強化】を発動した状態でも、どんどん押し込まれていく。


 「ブモォオオオオオ!」


 涎と血が混ざったものを撒き散らし、間近で雄叫びを上げる奴の姿に恐怖し、アランの足が僅かに竦む。


 踏ん張りが効かなくなり体勢を崩したアランに、好機と見た奴が上から大きく口を開け、噛みつこうとした。


 黄色く濁った瞳、血と涎に濡れた口元、悪臭混じりの吐息。


 目の前に迫る死を前に、アランの思考が真っ白になる。


 (ぁ……俺死ぬ……)


 死を覚悟した瞬間、奴の脳天に何かが飛来し、意識がアランから逸れた。その隙に素早く脱出し、体勢を立て直す。


 背後から二つの足音が迫る。アランは振り向きもせず、後ろに控える人物へ礼を言った。


 「ありがとう。エイミー」


 「気にしないで。私達はパーティーなんだから。それよりも、一人で戦おうとしないで」


 「悪い。バートも来てくれたんだな」


 「当たり前だ。お前だけにカッコつけさせるわけにはいかねぇよ」


 「ありがとう」


 アランはフッと微笑み、頼もしい仲間達に感謝する。すぐに気持ちを切り替えた。


 「バート、エイミー。村はもうすぐそこだ。着いたらすぐに冒険者ギルドへ助けを呼ぶぞ」


 「分かってるわ。それよりも、アイツをどうするの?」


 「エイミーの魔法で拘束して、逃げる時間を稼ぐ。その間に村まで逃げて、俺とバートは残って防衛だ。エイミーは冒険者ギルドへ助けを呼んでくれ」


 「おう!」


 「分かったわ! 敵を拘束しろ、魔力縄マナ・ロープ


 エイミーの前方に展開された魔法陣から水色の長縄が現れ、奴へ向かって飛んでいくと、体に巻きついて動きを封じた。


 「ブモッ、ブモォオオオオオ!」


 「今だ! 村まで走れ!」


 体に巻きついた長縄を振りほどこうと暴れ始めた奴を横目に、三人は一目散に村へ向かった。


 無事に村の入口へ到着した三人は、先ほど決めた通りに動き始める。


 アランとバートは入口前に陣取り、奴の侵入を防ぐ。エイミーは村の大通りを駆け抜け、急ぎ冒険者ギルドへ向かった。


 「バート、気張るぞ!」


 「おう!」



 初めての現地人。


 少しでも情報を得ようと【看破】で情報収集していたら、突然胸の奥がざわつき、【暴食】の衝動ではなく、殺戮衝動に理性が呑み込まれた。


 気づけば俺は人間に襲いかかっていて、胸の辺りへの衝撃と背中に走った鋭い痛みで、かすかに理性が戻った。


 状況を理解し、もう後戻りはできないと悟った。


 (駄目ダ、ニンゲンを襲うナンテ! 今は違うケド、同じニンゲンなんだ。殺シタラ駄目だ!)


 かろうじて残った理性を振り絞り、殺戮衝動に抗おうとするが、全く体が言うことを聞かない。


 そんな僅かな抵抗も虚しく、「人間を殺したい!」という欲求が俺の思考を支配した。 


 (グッ……アァ…。ヤメ、ロ。コロシタク、ナインダ)


 それでも、俺は止まらない。


 逃げ始めた人間達を、追わなくてもいいのに必死に追いかける。人間を殺すために。


 景色が流れるように後方へ遠ざかり、逃げる人間達との距離が徐々に縮まっていく。


 体勢を崩した赤髪の少年に近づき、噛みつこうとする。


 (グッ、ァ……タベタク、ナイ……)


 少年の顔が近づくにつれて、今度は【暴食】の衝動まで顔を覗かせた。


 理性が警鐘を鳴らした瞬間、脳天に衝撃が走った。前方へ視線を向けると、残り二人がこちらへ向かってきていた。


 俺の意識が逸れた隙に、赤髪の少年は体勢を立て直し、二人と合流する。それでも衝動は一切衰えず、三人へ突進しようとする。


 ━━が、黒髪の少女が何かをした瞬間、体が思うように動かせなくなった。


 (ァ……コレナラモウ……)


 三人が再び逃げ始めたので「人間を殺さずに済んだ」と安堵したのも束の間。


 無意識に筋肉を膨張させるように力を込めると、全身に巻きついた水色の長縄がギチギチと音を立てる。


 「ブモォオオオ……!」


 そして━━


 バキンッ!


 魔力縄マナ・ロープを引きちぎる。


 ━━逃さない!


 その言葉だけが頭の中で何度も反響する。


 気づけば俺は、再び人間達を追っていた。



 大通りを駆け抜けたエイミーは、冒険者ギルドの前に到着すると、木製の両開きのドアを勢いよく開け放ち、中へ飛び込んだ。


 ギルド内が静まり返る。


 酒盛りをしていた冒険者や受付嬢の視線が一斉に集まり、何事かと目を見張る。


 「皆、力を貸して! 狩場に見たことのない魔物が現れたわ! 私達じゃ太刀打ちできないくらい強いの! 今、アランとバートが入口で防衛しているわ! 急いで!」


 鬼気迫る叫びを聞いた冒険者達の顔から酔いが消え、すぐにコップを置いて椅子から立ち上がった。


 「俺は他の奴らも呼んでくる!」


 「すぐに現場へ向かうぞ」


 「アリス嬢! すぐにギルドマスターへ報告してくれ!」


 「わ、分かりました!」


 「エイミー! 現場へ案内しろ!」


 「えぇ、ついてきて!」


 受付嬢のアリスはすぐに階段を上り、ギルドマスターの執務室へ向かった。冒険者達はエイミーを先頭に、アランとバートの待つ現場へ走り出した。

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