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やり直し令嬢は、断罪の舞台を「密室」に変える 〜証拠不十分で婚約破棄は成立しませんわ〜  作者: 和三盆


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第11話:王家の選択——守るのは体面か、未来か

 王宮は、静かに揺れていた。


 公開審理の余波は、確実に広がっている。

 “事故”は調査案件となり、

 王宮工房の名は公に出た。


 それはすなわち——

 王家の威信に、傷が入ったということ。


 だが。


(傷は、隠せば膿みますわ)


 私は、そう考えていた。


 王宮からの正式な召喚。


 今度は非公式ではない。

 王家の紋章が刻まれた、重厚な封書。


 ——国王陛下、直々の謁見。


 私は、ゆっくりと息を整えた。


 玉座の間は、これまでのどの部屋よりも静かだった。


 中央の玉座に座すのは、

 この国の頂点——現国王レオポルド。


 その両脇には、

 第二王子アルノルト。

 そして、王弟ローデリヒ公。


 ——三者三様の視線。


「エレーナ・ヴァン・クロムウェル」


 国王の声は、老いてなお強い。


「そなたの行いにより、

 王宮は揺れている」


「承知しております」


 私は、深く一礼した。


「王家の威信は、国家の柱だ」


 ローデリヒ公が口を挟む。


「それを損なう行為は、

 いかに正しくとも、許されぬ」


「では、お伺いします」


 私は、顔を上げた。


「威信とは、

 虚構の上に築くものでしょうか?」


 空気が張りつめる。


「……そなたは、

 何を守ろうとしている」


 国王が、静かに問う。


 私は、迷わなかった。


「王国の未来です」


 視線をまっすぐ向ける。


「体面を守るために腐敗を放置すれば、

 いずれ国そのものが崩れます」


「だが、混乱もまた危険だ」


「ええ」


 一歩、前へ。


「だからこそ、

 公開の場で、論理で裁く必要があります」


「父上」


 アルノルトが、初めて口を開いた。


「私は、

 エレーナ嬢の姿勢を支持します」


 ローデリヒ公が、鋭く睨む。


「王家の内情を晒すつもりか?」


「晒すのではない」


 アルノルトは、きっぱりと言った。


「正すのです」


 沈黙。


 長い、長い沈黙の後。


 国王は、ゆっくりと立ち上がった。


「……王家は、

 誤りを犯さぬ存在ではない」


 その声は、広間に深く響く。


「だが、

 誤りを正す力を持たねばならぬ」


 ローデリヒ公が、目を見開く。


「陛下……!」


「調査は継続する」


 国王は宣言した。


「そして、

 エレーナ・ヴァン・クロムウェル」


 視線が、私に向く。


「そなたを、

 王家直属の“特別監査官”に任ずる」


 広間が、どよめいた。


「……よろしいのですか」


 私は、慎重に問う。


「王家の内部を、

 私が調べることになりますわよ」


「承知の上だ」


 国王は、静かに言った。


「そなたが敵に回るより、

 味方である方が良い」


 私は、わずかに笑った。


「味方ではありません」


 一礼。


「論理の側に立つだけです」


 国王は、初めて微笑んだ。


 謁見後。


 回廊でローデリヒ公が低く呟く。


「……危うい賭けだ」


「ええ」


 アルノルトが応じる。


「だが、

 停滞よりはましでしょう」


 遠くで、鐘が鳴った。


 王宮を出ると、空は澄み渡っていた。


(体面か、未来か)


(王は、未来を選んだ)


 だが、それは同時に——

 敵を明確にしたということでもある。


 私は、扇子を握り直した。


「特別監査官、ですか」


 小さく笑う。


「肩書きは増えましたけれど、

 やることは同じですわね」


 ——嘘を解き、

 論理で裁く。

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