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異世界行っても料理する ~料理して材料集めてまた料理~  作者: デビルぱんだ


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五十四話 その後……

 唐揚げとフライドポテトのレシピを提供から約半年が経過した。


 屋台のほうはというと「塩唐揚げ」は従来の「醤油唐揚げ」に負けず劣らずの大ヒットを記録した。フライドポテトも相変わらず好評で、そろそろ落ち着いてもいいのでは?と思っているのだがうれしいことに行列は絶えない。


 レシピを提供して最初にギルドから「契約金」として振り込まれた額を見た時は本気で驚いた。思っていたよりも桁が多く、思わずアイリスとルナの三人で顔を見合わせて硬直してしまったのを覚えている。その後、他の店へのレシピ提供金も額が大きく、収益の数パーセント分が入ってくる額が落ち着いているなと思っていたが、普通に考えるとそれも相当な額なので最近は金銭感覚がさらにおかしくなっている。


 現在、王都の宿場町や酒場、屋台でも唐揚げやフライドポテトがメニューに並んでいる。中にはその店のスパイスを使ってアレンジを加えている店もあるようだが、俺は自信を持って言える。


(……悪いが、俺の味にはまだ誰も追いついちゃいない)


 ついでに、他店には厳しい弱点があった。唐揚げに使うココ鳥や油で使うボア、俺は狩りをして仕入れをしているが、他店では市場などで買うのが基本だ。その分コストが上がりなかなか利益にならないこともあるようだ。

 三か月前に屋台の場所が変わり、中央広場のいいところに場所が変わっている。

 さらに、従業員二人の成長も目覚ましい。今では仕込みもほとんど俺が手伝うこともなく日中の営業はほぼアイリスとルナの二人に任せている。アイリスは完全に店の「頭脳」となり、売上管理から在庫の予測まで完璧に達成。ルナは持ち前の明るさで屋台にくる客を対応しているためか一部でファンがいるという。二人とも料理の腕は上達してかなり順調だ。


 屋台を二人に任せられるようになったのにはもう一つ理由があった。


「カケル!待ってたぞ!今日も衣が黄金に輝く『トンカツ』を作ってくれ!あれを食さねば、残りの国務に集中できん!」


 月に数回、城に呼ばれては料理を作っていた。国王は完全にトンカツの虜。

「城の料理人にレシピを渡すから彼らに作らせればいいのでは?」と進言したのだが、国王は首を横に振った。俺のじゃないとダメらしい。


 とりあえず、俺が調理の過程で無意識に込めている「何か」が、彼らの生命力や魔力を回復させるらしい。その証拠に、最初に城にきたときスープで救われた王妃エルゼ様は徐々に元気になり、今では食欲も戻って庭園を散歩されるまで回復した。スープのレシピを渡し、城の料理人が作ったスープを飲んでもらったが生命力や魔力が回復することはなかった。だがスープを飲むことはできたのでここまで回復できた。回復後はあっさりしたものは固形物でも食べられるようになったので薄味のオムレツやサンドイッチなど作ることがあった。


 そして城へ行くたびに俺を悩ませるのが、リリアーヌ王女だった。彼女の料理熱心さは変わらず、俺が新しいメニューを提供するたびに、目を輝かせて調理場に来ては観察される。


「まあ、カケル様!そのお肉のこね方、どのような魔力操作を実施していらっしゃいますの?」

「いや、魔力じゃなくて、手の熱で脂が溶けないように……って、王女殿下、近いです!」

「え? よく見えませんわ。もっと近くで詳しく教えてください」


 彼女は観察に熱中するあまり、距離感が完全にバグっていた。ふと気づけば、お互いの髪が触れ合い、彼女の甘い香りが鼻腔をくすぐる。恐ろしいことに、俺が振り向いた瞬間に頬と頬がひっつくレベルまで近づいてくるのだ。さらには意図的なのかそうじゃないのかわからない程度に胸が当たってきたりもする。


(……この王女、狙ってやってるわけじゃないよな?天然なのか?それとも俺をからかって楽しんでるのか……?)


 王族とのそんなドタバタな話も、今では半ば日常のようになっていた。


 仕入れのために森へ入る頻度も増えた。ココ鳥やボアを狩り続け、たまに遭遇する中位〜上位の凶悪な魔物を討ち返りちにし続けた結果、冒険者ギルドで俺は評価された。


「カケルさん、おめでとうございます!本日を以て、Aランクの昇格が決定いたしました!」


 受付嬢にそう言われた時は、耳を疑った。ただの料理人が気づけば王都に数十人しかいない注目の戦力「Aランク冒険者」になっていたのだ。


 富、名声、実力、そして信頼できる従業員。このしばらくの間で俺は異世界で生きていくための基盤をこれ以上ないほど揃え、生き延びることができた。

 そしてそろそろ「次の計画」へ移る時だと確信していた。屋台という限られた空間ではなく、自分の城――自分の「店」を持つ時だ。


 屋台営業終わりの夜。俺はガストン商会の応接室にいた。対面に座るガストンは俺の顔を満足げに見ている。用意されたワインで乾杯したあとガストンが切り出した。


「カケルさん、今日は一段と改まった顔をしてどうしましたか?」


 俺はグラスを置いて、まっすぐに彼を見つめていた。


「ガストン。そろそろ屋台を卒業しようと思っている。……この王都に、俺の『店』を構えようと思うんだ。そのための計画と、これからのことについて相談に乗ってくれないか?」

「……ほう!ついにその時が来ましたか!いいですとも、カケルさん。あなたの『城』にふさわしい、最高の舞台を一緒に作ろうじゃないですか!」


 異世界の料理人カケルの、第二章の幕が、今上がろうとしていた。



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