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異世界行っても料理する ~料理して材料集めてまた料理~  作者: デビルぱんだ


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四十四話 新しい従業員と屋台

 朝、まだ薄暗い時間からキッチンに立つ。今日からは一人じゃない。二階から聞こえてくる新鮮な足音。それが新しい日常の合図だった。


「おはようございます、カケルさん!」

「……おはようございます。ルナ、声が大きいです。朝ですよ」


 階段を駆け下りる元気いっぱいのルナと、目をこすりながらもすでに身なりを整えているアイリス。二人が揃ったところで、俺は朝飯の準備を始めた。


「今日は屋台だ。体力がいるからな、しっかり食え」


 今日の朝飯は昨夜の残りのココ鳥を使った『特製親子丼風のサンドイッチ』だ。出汁の香りがキッチンに広がり、二人の鼻がクンクンと動く。とろとろの卵と、旨味の凝縮されたココ鳥の肉。


「さあ、座って。熱いうちに食べよう」

「いただきます!わぁ……!これ、昨日の照り焼きとはまた全然違う、優しい匂いです!」


 ルナがハフハフと頬張る。


「……美味しい。出汁の味が層になっていますね。卵の火入れも完璧です。カケルさん、これだけでお店が開けますよ」


 アイリスが冷静に分析しながらも、その手は止まらない。

 俺も自分の分を口に移動。出汁の旨味と温かさが胃に沁みる。


 中央広場に屋台を据えると、開店前からいつものように長蛇の列ができていた。


「ゆっくり、まずは説明した通りにやってみて。アイリスは唐揚げ、ルナはフライドポテトだ。油の音を聞いて泡沫が変わる瞬間が合図だ」


 俺が手本を見せた後、二人にトングを渡した。アイリスは真剣な表情で鍋を見つめ鶏肉を一つずつ丁寧に投入していく。彼女は知識がある分、火の通りを理論で捉えようとしていた。


「……アイリス、少し慎重すぎて衣のサクサク感が足りない個体がある。ルナは温度が下がりすぎて少し油っぽいものがある……だが、最初にしては上出来だ」


 俺は二人のムラを修正しながら、接客と箱詰めをこなしていく。途中でアイリスが「カケルさん、次のロットは油の温度を少し上げてもいいですか?」と提案してくるくらいだ。


(……これなら、慣れれば屋台を完全に任せて、俺は新メニューの開発や店舗の準備に回れるな)


 そんな自信を抱きながら、営業時間は終わりを迎えた。


 屋台を片付け拠点に戻った頃には二人とも疲れ果てていた。特にルナは「足が棒みたいです……」とリビングの床でぐったりしていたりする。


「お疲れさん。最初にしては合格だ。……さて、明日の予定だが屋台は休みだけど俺は朝からいないんだ。仕入れや仕込みもまだ大丈夫だから一応休みってことで」


「はい、ゆっくり休みましょう」とルナが笑うが、アイリスは俺の言葉の裏にある「何か」を察したようで少し身構えた。


「……どこへ行くのですか?」

「城だ。王宮から招待された。王と王女に、俺の料理を食べさせに行かなきゃならん」

「「…………えええええええっ!?」」


 静かなリビングに、二人の絶叫が重なった。


「し、城!?カケルさん、何者なんですか!?」


 ルナは驚き、アイリスは「……やはり、あの味に王宮は納得したのですね」と一人で納得している。


「そんなわけで、明日は君たち留守番だ。……いや、留守番というか君たちの部屋、まだ布団しかないだろ?明日は自由時間にするから、自分用の好きな家具を買ってきて」


 俺はアイテムボックスから用意していた金貨の袋を二人に差し出した。


「お金は俺が出すから……これ二人分な。一人金貨十枚で足りると思うんだけど……」


 そう言うとそれまで見ていた二人の顔つきがガラリと珍しかった。


「……多すぎます。カケルさんの金銭感覚を疑いますよ」


 アイリスが、冷徹なまでの視線で俺を射抜いた。


「そうです! 金貨十枚って、一般的な家の一ヶ月分の給料くらいあるじゃないですか!」

「……いや、これから長く働いてもらうだろうし、先行投資ってことで。いい家具買えば、その分仕事疲れても大丈夫だろ?」

「それとこれとは別です。お釣りは絶対に返しますからね!」


 アイリスに厳しく釘を刺され、俺は納得するしかなかった。まさか従業員にお金で怒られるとは。正直、余ったお金は洋服とか好きなの買えばいいと言おうと思ってたけど、言ったら確実に怒られるな。


 二人が二階へ上がった後、俺は一人でキッチンに残った。明日はついに王宮参内。かなりの食通という国王、そして食のことになると性格が変わるという王女リリアーヌ。二人して強敵になるのか、はたまたこの世界では俺の料理がかなりレベルが高いものとなるのか……


「……さて、肉のリクエストに応えなければいけないな」


 今夜の仕込みは屋台の仕込みとは一線を画す。選んだのは森で狩った中でも最高級のボアの肉。そして、最高に脂と旨味の乗ったココ鳥の肉。明日料理として出すものは決まっている。

 研ぎ澄まされた包丁で肉を切り分けて整える。すべての準備が整ったとき、窓の外にはすでに深い夜の闇があった。


 俺は包丁を丁寧に拭き、研いだ後に片付けた。仕込みも大丈夫だし、片付けも終わった。あとは明日のために寝るだけだ。

 明日、俺が作る料理がこの王国の歴史を少しだけ変えることになるかもしれない。そんな予感を抱きながら俺は深い眠りに落ちていた。



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