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異世界行っても料理する ~料理して材料集めてまた料理~  作者: デビルぱんだ


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三十五話 家、決定と熊肉

 ギルドでの争議と思いがけないBランク昇格を背中に、俺はガストン商会まで向かった。目的は俺自身の拠点となる借家の確認だ。


 ガストンの執務室に入ると俺の顔を見るなり、待っていましたとばかりに数枚の羊皮紙を広げた。


「カケルさん、お待ちしておりましたぞ!あなたの条件に合う物件、私の人脈で三件まで絞り込みました。さあ、ご覧ください」


 提案された候補は、どれも一長一短があった。

 住むだけならどれを選んでも大丈夫そうではあったが、料理のことになると選別が必要になる。それに紙で見てもわからないことがあったため、ガストンと一緒に物件巡りをすることにした。


 一件目は閑静な住宅街にある清潔な一軒家だ。建物としての造りはしっかりしていて寝室や居間の居心地は良さそうだったが……図面を見たときのキッチンの大きさが気になっていた。一般的なキッチンの大きさではあったが、本格的に料理するとなるとやはり狭い。現在の唐揚げの仕込みのように大量に素材を扱う場合はキッチンが広くないとよけいに手間がかかってしまうから、ここはないかな。

 二件目は、少しばかり年季の入った……平たく言えばボロい家だった。家賃は安く、キッチンも一件目よりはましな広さだったけど、土台のガタが気になった。これから生活していく中で家の方が崩れてしまうようでは話にならない。簡単に崩れるなんてことはないんだろうが、さすがに落ち着かないかな。

 そして三件目、ガストンが「本命」として最後に出てきた家の図面、そして実際に家を見た瞬間、俺の目は釘付けになった。


「ここは……家全体のサイズはそこまで大きくありませんが、元々腕利きのパン職人が住んでいた家でしてな。見ての通りキッチンの広さが異常に広い。さらに設備も最新ではありませんが新しいほうで、換気口の造りも完璧です。しかも中央広場から歩いてすぐ、という立地が最高でしょう?屋台もこちらに保管できる場所がありカケルさんには都合がよろしいかと」

「……これだ。ここにする。このキッチンならいい料理ができそうだ……」

「問題としては部屋の数がそこまで多くないといったところでしょうか。将来的に人数が増えるようだと住むためには狭すぎると……」

「いや、全然かまわん。今のところ俺だけだし、増える可能性もなくはないが、まぁ大丈夫だろう」


 俺の即答にガストンは満足げにうなずいた。家賃は月に金貨八枚。前の世界にくらべると安いと思ったし、今の俺には問題ない金額だ。


 俺は契約完了後にその足で宿を引き払い、新しい「拠点」へと移動した。とりあえず家具などは全くないから後日揃えるとして、寝るところに布団だけ設置しておいた。

 なんだかんだ行動していたら外は暗くなっていた。


「……さて、片付けや家具を揃えるのは明後日からでいい。とりあえずこいつを試してみようかな」


 俺はアイテムボックスから熊の肉を取り出した。解体場で丁寧に切り分けてたロースの部位だ。とりあえず氷で冷やしながら、調理器具を並べる。

 今夜の晩飯は、シンプルにステーキ。肉自体の味を知るにはこれが一番いい。


――ジュッ!!


 立ち上がる香りはこれまでのボアやココ鳥とはまた違った香りで野性的でありながらも気品のある濃厚なものだ。じっくりと火を通し、表面をカリッと焼き固めてから、少し休ませて肉汁を閉じ込める。


 出来上がったステーキを簡単に皿にのせ、焼き上がったばかりの肉にナイフを入れ一口食べてみる。


「……なんだ、これ。……うまい。信じられないくらいに、うまいな」


 熊肉特有の臭みなど微塵もない。噛みしめる度に出す脂は甘く、力強い旨味が広がっていく。

 これだけの肉をあの黄金の油で揚げたら、じっくりと煮込んでソースを作ったら……。広すぎるキッチンで一人、俺は新しいメニューの構想を考えるばかりだった。


 腹を満たし、床に敷いた布団に横になる。

 借家ではあるが家を手に入れたことで多少楽にはなるだろう。一番は仕込みだな。仕込んだものを置いておけるし、移動の手間もなくなる。

 そしてBランク昇格にある程度十分な資金。明日からは本当の意味での「料理人」として戦いが始まる。


 俺は心地よい満足感に包まれながら、深い眠りに落ちていった。



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