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異世界行っても料理する ~料理して材料集めてまた料理~  作者: デビルぱんだ


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十二話 決心と相談と準備

 翌朝、俺は宿の窓から差し込む眩しい朝に目を覚ました。


「……また、あの怒号で起こされるかと思ったが……」


 耳を澄ませても昨日までのような騒ぎは聞こえてこない。不思議に思いながら一階へ降りると、そこにはカウンターで静かに帳簿をつけている女将さんの姿があった。


「おはようございます女将さん。今日はやけに静かですね」


 女将さんは顔を上げると少し寂しそうに、けれど満足げに笑った。

「おはよう、兄ちゃん……ああ、昨日のうちに皆には言っておいたんだよ。『この料理はうちの宿泊客が作ったもので、今日だけの手伝いだからね』ってね。名残惜しそうにしてたけど、これ以上兄ちゃんを困らせてうちに居づらくさせちゃ申し訳ないからね」


 女将さんのその気遣いが、不覚にも少し胸に沁みた。

 食堂の隅で、女将さんが出してきた簡単な朝食——昨日俺が教えたコツを少しだけ活かしたスープを啜りながら、俺はこれからのことを考えた。


(やっぱり、俺には料理しかないんだな……)


 昨日あの戦場のような厨房で感じた高揚感と、客たちの満足げな顔が頭から離れない。この世界で俺の技術がどこまで通用するのか、もっと時間をかけてもっと価値のある食材で証明してみたいという欲が湧いていた。

 まずはこの街をよく知るリィンに相談してみよう。俺はカウンターで片付けをしていた女将さんのもとへ歩み寄った。


「女将さん、リィンさんがどこにいるか知ってませんか? ちょっと相談したいことがあって……」


 女将さんは手を止め、少し考え込むように首を傾げた。


「リィンかい? あの子はこの辺りの警備責任者だからねぇ。非番じゃなけりゃたぶん街の広場にある騎士団の駐屯所にいるはずだよ。大きな青い旗が立ってる建物さ。……なんだい、兄ちゃん。愛の告白でもしに行くのかい?」


「……そんなんじゃないですよ」


 俺は茶化す女将さんを苦笑いで流し自室に戻って準備を整え街の広場へと向かった。


 広場の一角にある駐屯所は、鎧の擦れる音や馬の嘶きが響き、独特の緊張感に包まれていた。 入り口で門番の騎士に「リィンさんに用がある」と伝えると、少しして奥からカチャカチャと小気味よい鎧の音を立ててリィンが駆け寄ってきた。


「カケル様!? こんなところまで、一体どうされたのですか?」


 彼女は驚きつつも、その瞳には隠しきれない喜びが浮かんでいる。


「いきなりで申し訳ないです。ちょっと相談したいことがありまして……今時間大丈夫ですか?」

「はい、ちょうど休憩時間なのでちょっとなら大丈夫です」


 俺は周囲に人がいない場所まで彼女を誘い、真っ直ぐに切り出した。


「実は、これからも料理をやっていこうと思っていまして。昨日一日厨房に立ってみて改めて自分の生きる道はこれだと確信しました」


 リィンは息を呑み、俺の言葉を一言も漏らさぬよう真剣な表情で聞き入っている。


「ただ、俺はこのあたりの地理がさっぱりわからないんです。このままこの街で腰を落ち着けて店を出すべきか、それとももっと料理を提供するのに相応しい場所が他にあるのか……。リィンさんの意見を聞かせていただきたいと思いまして」


 リィンは一瞬考え込むように視線を落としたが、すぐに顔を上げると迷いのない口調で答えた。


「カケル様……その決意、私は全力で支持いたします。ですが……そうであればやはり、王都へ行くべきです」

「王都、ですか」

「はい。この街も活気はありますが、王都には大陸中から希少な最高の食材や見たこともないスパイス、そしてそれを正当に評価できる舌の肥えた人々が集まります。カケル様の料理なら、王宮の料理でさえ驚愕するに違いはありません」


 リィンの言葉には確かな熱量があった。彼女は自分のことのように拳を握り、王都での可能性を語ってくれた。


「本当はこの街でおいしい料理を作ってほしいと思いましたが……何よりもカケル様のさらなる可能性を見てみたいのです」

「……わかりました、王都ですね。そこで自分の腕がどこまで通用するか試してみます。ありがとうございます」


 王都行きを決めてからの行動は早かった。まずは街の外れにある地図屋へ向かった。


「王都までの詳細な地図をください」

「王都へ行くだけなら安物の地図で十分だが……こだわりがあるなら、こいつらを見ていきな」

 

 そういって出された地図は三つ

・簡易版:街道の案内図

 王都へ続く一本道と、最低限の宿場町だけが記されたもの

・標準版:商隊用の交易地図

 主要な街道に加え、安全な水場、馬車が立ち寄れる村々、険しい坂道の場所などが詳しく記されている

・特装版:冒険者・採集家用の詳細地図

 地形の起伏、魔物の生息域に加え「めずらしいキノコが採れる森」や「絶品の水が湧く隠れ里」などのニッチな情報が書き込まれている


「……当然、これで」


 俺は迷わず特装版を指差した。できれば魔物とは出会いたくない。いくらチートがあったとしても、やはり俺はまだまだ戦いなんて怖いと思っている。それと普通の食材で満足するならわざわざ王都まで行く意味がないし道中で出会える「最高の素材」をできれば逃したくなかった。

 地図を丸めてリュックサックに差し込み、次に雑貨品の買い出しへ向かう。

 雑貨屋を回り野外で調理ができるようにまな板やボウルみたいな入れ物、フォークやナイフといったものと、生活を支えるキャンプ用品を一通り揃える。とりあえずリュックサックに詰めれるだけ詰めて、詰めれなさそうなものはこっそりアイテムボックスに入れるようにした。まぁ街から出たら全部アイテムボックスに入れることになるんだけど……


 ある程度の準備は整った。そこまで急がなくてもいいとは思ったが、やはり王都のことは気になっていたので出発は明後日にした。明日は一日雑貨系の準備と食材の調達のために市場に行こうと思っている。地図を確認したが、やはり結構距離はある。途中で食材の調達ができるかどうかもわからないから可能な限り食材の準備は必要だ。

 

(地図だけで王都いくとか……無謀か?いや、「勘」があれば大丈夫か……)

 

 おそらく、いや確実に「勘」がなければ王都に行けないだろうし、チートがなければ魔物に襲われてポックリいくだろう。本来なら護衛を雇い馬車で移動するのがセオリーなのだろうが、自分の能力がバレて騒ぎになるのは回避したい。アイテムボックスと同じで戦闘能力についても王都に着いたら確認しないと

な。うまくいけば心配事なく自由に生活できるかも……なんて先のことを考えながら就寝した。



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