八十八話、名の理由、愛のかたち
セレスタ視点
一度城で竜化を解除して、アッシュ様と寝た。その後、朝一で私だけ先にバリストン邸へと帰っていった。
そこには、私の母の墓石がある。
他のご先祖は石碑の下に納骨してある。
母の――叔父様のお姉さんの墓だけは建てたという。過去に、叔父様がいっていた。
ずっと遺体はないということに疑問を感じていたけど、漸く今回わかった。
やっと会えた。
残念ながら、話せない人となっていた……。
それに、父とも――。
でも、母の、顔を見られてホッとした。
それでも大きすぎる遺体は置いて行ってしまった。それだけが、気がかりで。
チョコッとしか話さなかったけど、優しそうな眼をした帝王様。
全てを語るような瞳。
だから、多分ちゃんと弔ってくれる筈。
「――あ、アッシュ様?」
屋敷の隅っこまで来てくれた。
使用人が伝えてくれたのかもしれない。
「私も、一度挨拶をしないとなと、思ってな」
「ありがとうございます」
お礼を伝えた。
それと、囚われていた時のこと。
母にも。父親にも、会ったことを伝えた。
「――そうか」と、一言。
そして、それ以降は何も言わず、肩を寄せてくれた。
「ねえ、イゼルファだったわね? お母さまの名前……多分、私の、王族の姓イグニスも。竜の名前。初代女王が貰ったはずだ。しかし……何故竜って、人とは交わることができない代わりに、名前に入れたがるのかしらね」
「ふふ……でも、それでも嬉しいです」
「だったら、私もセレスタを姓にしたいな」
「そ、それは畏れ多いです。せ、せめてミドルネームとか……」
二人して顔を合わせてクスリと笑った。
叔父様も叔父様だ。
わざわざバリストン姓ではなく、イゼルファと名乗らせようとしたところ。
ミドルネームか。
――ああ、そうだ。
多分、レイという名前も叔父様のミドルネームから採っている。
名前でも守るみたいに。
でも、本当に、なんで入れたがるのだろう。
竜の本能なのかな?
先祖もミドルネームとか、子供の名前とかに入れたりしたのかな。
竜がそうだとしてもーー
私はできれば……。
「アッシュ様……」
「どうした?」
「その、」
ついつい歯切れが悪くなってしまう。
中々伝えられずにいた。
「私も言いたいことがあるが、先に頼むよ。セレスタ」
そう触れておいて、陛下は私の言葉を待ってくれている。
その紅の瞳は期待に満ちていた。
「公の場でなくてもいいから、……改めて貴女と誓いの場を……その、……――うぅ」
「ふふ、出だしはよかったのだけれどね」
「ぐぅ……」
「もちろん。式を挙げたいわ、貴女と」
負けた。ちょっと悔しくて。
でも、お互い言いたいことは伝わっていて。目を合わせてアッシュ様と微笑んだ。




