八十七話、凱旋の空、蒼き花のもとに
ヴァルディス視点
風に舞う、炎。
開けた窓。
ヴァルセリアス殿下の後ろで壁にもたれ、外を見る。
夜だというのに、やけに暖かい。
窓辺に植えられたルミナリアが徐々に青に染まっていく。
――ああ、凱旋だ。
殿下も気だるく振り向く。
「おや?」
花の色の変化に、気づいたらしい。
――が、平時の覇気がない。
殿下も私もクタクタだ。
ここまでアッシュ様――陛下を望んでいたこともそうそうない。
暗闇の火山のひかり。
一筋の白銀が飛んでくる。
二人揃って。
よかった。本当に良かった……!
「一度、出迎えだな」
「無論です」
二人して執務室の窓から飛び出す。
ふわりと竜が舞い降りる。
殿下はセレスタ嬢――レイ殿が竜という事情を知らない。が、驚きもしない辺り先に、聞いていたのかもしれない。
「戻ったぞ」
「ええ……! おかえりなさいませ」
――ああ。
支えるべき、炎が。
陛下が。
戻ってきた。
少々ボロボロではあるが、無事だ。
目頭が熱くなる。
歳のせいか、若干涙腺が緩くなっているようだ。
「ヴァルディス……」と、陛下に背を撫でられる。
「し、失礼しました」と、身を正す。
落ち着かせようと、殿下の方を見る。竜となっているセレスタ嬢を撫でていた。
「ああ、いい子だ。可愛らしい我が妹の竜よ」
陛下とは別に奇妙な子供たちも連れていた。
「これは……顧問官の子供だ」
「……は?」
子供?
隠し子?
あの男に限ってそんなことはないはず。
その辺りは潔癖だからだ。
「ま、気にするな。その辺りは報告しよう」と、私の意を理解したアッシュ様が諭す。
私は頷き、促した。
「さ、お疲れでしょう。中へ」
「ああ」
セレスタ嬢を連れて城の中へ入っていく。
そう。
事情などは後でゆっくり聞けばいい。
本当に無事でよかった。
そう思うばかりだった。




