59 未成年者の目的(後編)
倉庫の外に出てきた少年は拳銃を構え、威嚇と身代金の請求をしてきた。
「おい!金はどうした!!」
「まだ時間まで1時間はあるわ。今、お金を用意して向かっている所よ」
「嘘じゃねぇだろうなぁ、こんなに集まりやがってよぉ!」
「お金が届くまで、あなたも暇でしょ。私と少し話さない」
「話す事なんかねぇよ」
葵は少しずつ話を延ばしてみる。
まだこっちの語りかけに応えているという事は、話を引き出すチャンスでもある。
上手く世間話からどう話を繋げていくのか?そこのタイミングで天と地の探した生まれる。
葵は手でバレない様に合図をしてこれ以上人員が増えないようにする。
しばらくすると倉庫内で少し騒がしくなっているのに、リーダーの男は気になって集中出来ていない。
葵はそのタイミングで話を切り出した。
「ところで、あのクスリは凄いわよね」
「ん、ああ、早く手に入れたいもんだよ」
「手に入れたらどうするの?」
「そんなの決まっているだろう。俺は新しい能力を手に入れて…」
バーーーン!
その瞬間、少年が倒れた。
周辺を見ても誰もいない。
音からするとかなり近い距離に狙撃手がいる筈だが、あまりの出来事に警察も持場から離れ、恐怖を感じる。
葵はすぐに糸を地面に伸ばしてテリトリーを作った。
葵を中心に半径10メートルの円が張り巡らされると一瞬糸に反応があった。
「そこ!」
その合図に美姫の電撃が広範囲で広がり、一瞬空気が揺らめき姿が見える。
微かに当たった電撃も相手の能力を弱らせて、微かに姿が見える程度だった。
追い討ちをかけようとした時、銃口が向けられていた。
とっさに美姫は葵を掴み、電磁力で側の車に移動した。
バーーーン!
ドン!
銃弾を避ける為、美姫はものすごい勢いで車にぶつかり、車と葵に挟まれる。
意識が朦朧としている美姫を今度は葵が車の陰に引っ張り隠れる。
「ありがとう美姫さん。大丈夫?」
「まあ何とか」
既に気配は無い。
しかし、気配を消して狙っている可能性もあるので、葵はまた糸でテリトリーを張った。
★ ★ ★
倉庫の中では音を聞いたメンバーがリーダーを呼ぶ。
「毅さん!どうしたんすか」
しかし返事は無い。
その状況を理解した蓮は急いで捕まっている人質の所に向かった。
今、蓮が警戒すべきは2つ、1つは少年達にクスリを売る為に犯罪の手引きをしている者に気付かれない事、もう1つは冷静さを無くした時にその手が人質に向く前に対処する事である。
人質の側まで移動した蓮は人質を確認すると、3人とも無事で手足を縛られて目と口を塞がれていた。
蓮にとっては好都合である。
顔を見られる事無く助けられるからだ。
その時、少年達の悲鳴と怒りが響き渡った。
「おい!毅」
「毅さん!」
「おい、頭から血が出てるぞ!」
「警察の野郎が!」
「全員武器を持て」
その瞬間、手引きをした男の姿が消える。
「どうやら失敗のようだね。もし金が手に入れば、その時取引をしよう」
「おい!あんた助けてくれねぇのかよ」
「こっちも仕事だからね。そうだな、人質を盾にすれば逃げられるんじゃないか」
その言葉を最後に気配が消えた。
蓮は急いで彼女達を影で隠す。
「おい!人質もいねぇぞ。クソがぁぁぁぁぁ!!」
「どうすんだよ透くん、毅さんがいない今、あんたしかいねぇ」
「表も様子がおかしい、今がチャンスかもしれねぇ」
すると透は煙幕を投げつけて倉庫に隠していたバイクに乗ると撤退命令を出した。
透は煙幕と手引きした男から貰った銃を乱射して仲間を逃がした。
その状況に合わせて蓮は撤退して美姫さんに報告した。
人質は全員無事で倉庫の中にいる。
美姫はすぐに葵と大杉の3人で中に入って無事に保護した。
結局、少年グループはリーダーが死亡、残りの少年達は何とか全員捕まえる事に成功したが、少年一人の死亡がニュースで取り上げられる大きな事件になってしまった。
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