34 1回戦、第3試合
「やあ、チャンピオン」
レフェリーが試合開始の合図をしようとすると、ジュンシーが大和に話しかけた。
「裏といっても所詮は格闘技、死にたくなければ降参しな!」
大和は何も言わずにレフェリーに合図をする。
そして試合が開始された。
「ご託はいい、さっさとかかってこい」
「ああ、死んで後悔すんなよ」
ジュンシーは手刀を放つと大和の強靭な肉体に傷がついた。
その瞬間、大きな歓声が上がる。
「チャンピオン、今まで傷をつけられた事はなかったのかい?この程度の攻撃で歓声とは余程大会のレベルが低いんだな」
そして中国拳法とは少し違う型の構えをする。
「そろそろ本気を出さないと、気づいたら死んでるぞ」
すると大和は単なるストレートを放った。
誰が見ても無駄のない綺麗なストレートで、対戦者のジュンシーでさえ、ストレートとは思わない位の拳打だった。
普段なら防御などせず、確実に躱すジュンシーも急いで防御するが、防御したにもかかわらず吹き飛び左腕の骨にヒビが入る。
「流石チャンピオン、ここからが本番だ」
構えが変わった。
まるで虎が爪を立てるように指全体に力を入れると、重心を低くして獲物を狙うように大和に向かって飛びついた。
大和はカウンターで顔面に拳を入れようと突きだした時、大和の拳に握り止めた。
まるでドラゴンが掴んだようにそのまま大和の右こぶしを握り潰した。
ジュンシーの能力も身体強化でLEVEL3だ。
ただ強化場所は指だけである分、LEVEL3でも大和のLEVEL5よりも上、部分強化は小さければ小さいほど強度は高い。
大和は全身に対してジュンシーは指、たとえレベルが下でも硬度は上になる。
「まだ構えないとはチャンピオンは余程プライドが高いらしいな」
ジュンシーは一旦距離を取ると、大和を中心にゆっくりと歩き出した。
するとジュンシーが揺れて視える。
それは大和をだけでなく観客全員がそのように視えていて、やがて揺れから歪みに変わってきた。
本来夜ならばその姿は消えるのだろう。
しかし明るい闘技場では歪んで視てるだけだったが、ジュンシーにはそれで十分だった。
大和はようやく構えをとった。
ジュンシーは大和との距離をゆっくりと縮めていき、やがて大和の射程距離に入った。
大和の鋭いジャブがジュンシーを襲う。
当たったと思われたジャブはジュンシーの残像だけを突き抜けると、オーバーハンドのジュンシーの鉤爪が大和を襲った。
それはとてもゆっくりな攻撃で誰でも躱せるスピードで、大和は確実に避けた筈だった。
しかし大和の左肩が抉れた。
大和はバックステップで距離を取るが、距離が離れるどころが縮まる。
「終わりだ」
その一言と同時にその指はコークスクリューブローのように大和の心臓めがけて放った。
そして大和の心臓を抉ろうとした時、その指は数センチ入った所で止まった。
「ぬ、抜けん!」
今度は大和の反撃となった。
指が抜けないなったジュンシーに先ずはボディブロー、体が崩れ落ち今度は顎にアッパー、たった二発で既にジュンシーは気を失っていた。
しかしチャンピオンの攻撃は止まらない。
首がもげる位の右フック、そのまま倒れ込む所に左からスマッシュを打ち、立ち上がらせる。
まさにマリオット!
目も白目を向き、顎は完全に壊れている。
内臓も破裂して血を吐いている。
呆然としていたレフェリーがようやく試合を止めた。
「勝者、桐生大和」
そして大和は右こぶしを突き上げ退場するとジュンシーは意識不明のまま急いで運ばれた。
歓声が止まらない。
もちろん1番人気もあるが彼のファンも多いからである。
噂によると今までに大和が負けたことは一度だけ、しかし実際負けたところを見た者はいないので観客にとっては無敗の男なのだ。
そして大和が退場して控え室に向かうと次の試合の両選手が睨みを効かす。
大和は鼻で笑いその場を去ると二人の選手はお互いを睨み、次に大和と戦うのは俺だと言わんばかりに近づく。
そして次の試合の準備が整った。
1回戦、第4試合はロシア人のアレクサンドル・マカロフと空手家の藤原健太の試合だ。
二人は並んで歩き、闘技場中央へと足を運ばせた。
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