31 山下陽葵の選択
開いた扉の前には蓮達を案内した女性が立っていた。
「響子、棗、お前達も行くか」
響子は悠斗に現実を教える為、棗はただ試合に興奮して観に行きたい為、4人とも部屋を出て選手控え室へと向かった。
女性は無表情のまま蓮達を連れて地下にある控え室に無言で案内した。
控え室に着くと妹と思われる女性がドクターに治療をお願いしていた。
「お願いします。兄の怪我を診て下さい。お願いします」
何度も何度もお願いをするが、即金でなくと診ないと言う。
しかし女性はすがるようにお願いをする。
「ちょっと!診てあげればいいじゃないですか!!」
「何だお前は」
響子が悠斗を止める。
「金の払えない奴を治すほどお人好しではないんでな。それともお前が払うのか?」
「い、いくらですか!」
「両腕の骨折で500万、顎の骨折で1000万だ」
「そんなのボッタクリじゃないですか!」
すると蓮が女性に近づく。
「兄の傷を治したいか?」
「お願いします。何でもしますから、兄を助けて下さい」
「1500万、君に返せるのかい?」
「今は無理ですが………必ず返します」
「いつまでに?」
「それは・・・絶対返しますので」
「それじゃあこの世界は通用しない。見も心も売る覚悟はあるのか」
「れ、蓮さん!!」
響子が悠斗を止める。
「悠斗、よく見ておきな。これがこの世界の掟だよ」
女性は泣きながらゆっくり頷いた。
意識が戻った兄の陽翔は妹を止めようと砕けた顎を必死に動かす。
「分かった。君を買おう」
蓮はドクターに2000万円を渡した。
「これで彼をすぐに治してくれ」
「ああ、金さえ貰えればすぐに治すさ」
ドクターは陽翔を手術室に運んだ。
「蓮さん、最低です。人を買うなんて」
すると響子が代わりに代弁する。
「悠斗、あんたは口だけで何も出来なかったじゃないのさ。でも蓮は彼女を買うという手段で助けたんだよ。わかるかい」
「・・・」
「悠斗、人をただ助けても、本当に救われるとは限らないわ。その内に分かる。それまでは蓮の背中でも見るんだね」
「・・・」
そして案内してくれた女性が口を開いた。
「おめでとうございます。たったの2000万で女性の奴隷をゲットするなんてやりますね。しかし彼は無理ですよ。こちらの選手登録で1億の借金と親が残した借金8億で計9億円の借金があります。それを返すまでは死ぬまでここで戦ってもらいます」
その言葉に妹は絶望した。
それを見た蓮が問いかける。
「さて、君は俺の所有物だ。君は兄をどうしたい?彼はここでは生きてはいけないだろう。借金は減るどころか増える一方になる。そしていずれ廃人になるだろう。君に兄と話す時間を与える。彼も俺の所有物になるのなら俺も考えよう」
妹は何も答えられない。
たぶん一人で考えても答えが見つからないだろう。
だから蓮は彼女に考える時間を与えた。
悠斗も今回は口を出さずに見ている。
そして響子と棗も一緒に見ていた。
「そうだ。まだ君の名前を聞いてなかったね」
「陽葵、山下陽葵です」
蓮は軽く手を降ると一人で自室に戻る。
それを見て案内人は他の3人を連れて戻った。
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