30 1回戦、第1試合
1回戦、第1試合がまもなく始まろうとしている。
そしてレフェリーが選手紹介をすると入場と同時に歓声が上がった。
闘技場中央にはマイケル・ムーアと山下陽翔が向き合っていた。
マイケル・ムーアは元ボクサーだった。
20年前にはヘビー級王者にもなった事があるが、敗けが続きランキングが墜ちてきた頃に能力が目覚める。
やがて犯罪にも手を染める様になり、ボクシング会からも追放された選手だ。
山下陽翔はシュートボクシングから異種格闘技に転向したがプロレスやボクシングと同様に能力者が増え、普通のスポーツや格闘技が廃れていき、注目されなくなった一人である。
しかし山下陽翔は当時は無能力者であった筈なのにここに出ている。
マイケル・ムーアは6番人気、山下陽翔は11番人気である。
今ゴングが鳴り響いた。
「おい日本人、逃げるなら今の内だ」
「なかなか日本語が上手いじゃむないか」
そして陽翔の蹴りがマイケルの頭部を狙う。
しかし神業と思えるような無駄のない動きで避ける。
陽翔はそのまま蹴りを放ち続けるが当たらない。
今度は拳を放つが当たらない。
「ヘイヘイ、もう終わりかい」
そして拳と蹴りのコンビネーション、そして掴んで投げに持っていこうとすると、まるで予測したかのように今度は掴まれない位置までかわした。
「おい!てめぇ~能力使ってんな!」
「(フッ)」
マイケルが余裕の笑みを浮かべた。
陽翔は裏試合は初めてでマイケルだけでなく、全ての選手の能力を知らずに試合に出ていた。
「HEY!もう終わりか。今度はこっちからいくぞ」
マイケルは現在48歳、とても50歳近い肉体には見えない。
そして素早いジャブが陽翔を捉えた。
そしてようやく目覚める。
陽翔は両腕を上げて、改めてファイティングポーズをとった。
「おいおい、早く打ってこいよ。俺様はサンドバッグでも相手にしているのか?」
しかし挑発には乗らず、静かに近づくと、また上段の蹴りを放った。
今度はかわした筈のマイケルの頬が切れる。
「(チッ!)」
そして陽翔の蹴りがマイケルを捉えた。
マイケルはフットワークを使い、陽翔にジャブからのストレートを放つが全て当たらない。
当たった思った攻撃は全て外れる。
今度はマイケルの攻撃が一瞬止まった後、陽翔の連打から投げが決まる。
マイケルは受け身のとれない体制で頭から落ちる。
その瞬間、陽翔は勝利を確信して右腕を挙げた。
レフェリーがマイケルを見に行くとマイケルはニヤッと笑い陽翔の足首を掴む。
「つ~~かま~~えた!」
その瞬間、腕力で陽翔と引っ張り倒すと一気にマウンドポジションをとり、血塗れの顔で笑みを浮かべた。
「HEY!新人!!甘いんだよ。ここの事を全く分かっちゃいないな~」
「くっ、何でボクサーがマウントとってんだよ」
「だからあまちゃん何だよ」
そしてマイケルは拳を打ち下ろす。
その拳はハンマーで打ち叩かれる様な衝撃だった。
陽翔は防御をしながら、体勢を返すタイミングを探っていたが、考えが甘かった。
一切の隙もなく確実に拳を喰らう。
ついに両腕の骨は砕け降参をする。
「参った。俺の敗けだ!」
しかしレフェリーが止める前にマイケルの最後の拳が陽翔の顔面に炸裂して気を失った。
「キャーーーッ!兄さーーーん」
会場の観客が笑うなか、妹と思われる女性が陽翔に近づく。
陽翔はそのまま担架で運ばれ退場していった。
★ ★ ★
「あれは酷くないですか!」
「悠斗、落ち着きなさい」
「しかし響子さん、幾らなんでもあれは」
「悠斗、あんたはまだこの世界を知らなすぎるんだよ」
「まあまあ響子、悠斗は人一倍正義感が強いんだからさ。そうだ悠斗!折角だから彼の所に行ってみるか」
「えっ?」
「行ってみればこの世界が少しは分かるさ。と言う事だ、ナンバー3聞いているんだろ!負けた彼に会わせてくれないかなぁ」
「蓮さん・・・」
暫くすると部屋の扉が開いた。
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