メイベルと、薬草畑の再生
「セージ、ちょっとお前さんの知恵を借りたいんだけどね」
ある日、メイベルに畑へ呼び出された。
「畑がどうかしましたか」
「見りゃわかるだろう。ここ数年、収穫がめっきり落ちてね」
誠二は畑を見渡した。同じ場所で同じ薬草を作り続けているようだった。
「同じ薬草を、ずっと同じ場所で?」
「他にどうしろってんだい。土地は限られてるんだ」
「……連作障害、かもしれません」
「なんだい、その言葉は」
「同じ土地で同じ作物を作り続けると、特定の養分ばかりが吸い取られて、土が疲れるんです。病害虫も溜まりやすくなります」
「土が疲れる、ねえ」
メイベルは疑わしそうな目を向けたが、長年薬師として土と付き合ってきた勘もあってか、興味を隠せない様子だった。
「対策は、あるのかい」
「畑を三つか四つに区切って、育てる薬草の種類を毎年入れ替えるんです。それと、枯れた草や灰、鶏や山羊の糞なんかを、燃やさずに寝かせて土に混ぜ込む」
「堆肥ってやつかい。それは知ってるよ」
「その堆肥を使いながら、区画ごとに休ませる年も作ります。土を、休ませるんです」
「土を休ませる? 贅沢な話だね」
メイベルは笑った。
「試すだけ、試してみませんか。効かなければ、元の使い方に戻せばいいだけです」
「……まあ、それもそうだね。あたし一人じゃ、こんな発想、出てきやしないよ」
畑を四区画に分け、傷薬に使う草、熱冷ましに使う草、痛み止めに使う草、そして一区画は何も植えずに休ませることにした。
「セージ、この穴は何だい」
「堆肥を寝かせる穴です。鶏小屋の糞と、刈った雑草をここに積んで」
「臭うね、こりゃ」
「最初は臭いますが、寝かせておくと、そのうち土のような匂いに変わります」
「へえ……」
メイベルは半信半疑な顔をしながらも、興味深そうに穴を覗き込んでいた。
半年後、区画を入れ替えた畑からは、以前よりも明らかに質のいい薬草が採れるようになった。
「セージ、お前さんは、本当にただの流れ者かい」
メイベルは薬草の束を撫でながら、そう呟いた。
「昔、少しだけ物知りな人たちの話を聞く機会が多かっただけです」
「その『聞く』ってのが、なかなかできない人が多いんだよ。お前さんは、ちゃんと聞いて、ちゃんと考えてる」
「……ありがとうございます」
(褒められ慣れてないな、俺。前世じゃ、ずっと『できて当然』だったから)
誠二は柄にもなく照れくさくなって、目を逸らした。




