幕間 女神、無茶振りに来る
その夜、誠二は不思議な夢を見た。
気がつくと、また例のちゃぶ台の前に座らされていた。向かいには、相変わらずクマの濃い女神が、湯呑み片手にニコニコしている。
「誠二さん、お疲れさまです! 罠の件、うまくいったみたいですね」
「……なんで知ってるんですか」
「わたくし、一応管理者なので。見てますよ、ちゃんと」
(見てるなら、もうちょっと早く手伝ってくれてもいいのに)
誠二は内心で呟いたが、口には出さなかった。出したところで話を最後まで聞いてくれないことは、もう学習済みだった。
「その調子で、頑張ってくださいね! ……あ、そうだ」
「……『あ、そうだ』のあと、大体ろくなこと言われない気がするんですけど」
「あら、鋭いですね。実は、隣の谷にある村でも、似たような獣害で困ってるらしいんですよ。あくまで、余裕があったらでいいんですけど」
「いや、あの、まだこの村のことすら片付いてないんですが」
「大丈夫です大丈夫です、誠二さんならすぐですよ! 応援してます!」
(絶対、大丈夫の基準がおかしい、この人)
誠二は思わず頭を抱えた。頑張った分だけ、頑張れる前提で新しい仕事を積まれる。前世の会社でも、散々味わった構図だった。
「あの、女神様。せめて、優先順位とか、期限とか」
「細かいことは気にしないでください! それじゃ、おやすみなさい!」
女神はそう言うと、ちゃぶ台ごとふわりと消えていった。
(……無茶振り、健在だな)
誠二は夢の中でそう呟いて、深いため息をついた。ただ、不思議と嫌な気分ではなかった。困っている誰かがいると聞いてしまうと、放っておけない性分は、前世から変わっていないらしい。
(まあ、いいか。とりあえず、目の前のことから片付けよう)
目を覚ますと、いつもの村の朝だった。




