力に気づく
「セージ、この切り株、悪いが向こう側までどけといてくれ」
畑仕事のさなか、村の若者に頼まれた誠二は、深く考えずにその切り株に手をかけた。若者たちが三人がかりでも動かせなかった代物だった。
「――よいしょ」
軽々と持ち上がった。
「……は?」
周囲が凍りついた。
「セージ、お前、今……」
「あれ、そんなに驚くようなことですか?」
「三人でも無理だったんだぞ、それ!」
(そういえば、これも不老不死のオマケなんだろうな。あの女神、力もついでに盛ったな……)
誠二は内心で溜め息をついた。過剰なサービスは、前世の営業でも嫌というほど見てきた失敗パターンだ。頼んでもいないオプションをつけて、かえって話がややこしくなるやつ。
この一件は、あっという間に村中に広まった。
「セージ、お前、剣を握ったことは?」
噂を聞きつけたドーランが、興味津々の顔で聞いてきた。
「ありません。喧嘩も、したことがない」
「もったいないな。その体、鍛えれば村を守る戦力になる。……よし、俺が仕込んでやる」
「え、いや、そんな急に」
「善は急げだ。明日から来い」
誠二の返事を待たず、ドーランはさっさと話をまとめてしまった。
(前世の上司にもいたな、こういう人。決めるの早すぎるタイプ)
誠二は苦笑いしながらも、悪い気はしなかった。




