連携の芽生えと、Eランクへの飛翔
新パーティ『カツカレーライス』を結成してから数週間。
リゼルダの町周辺の街道や森林では、異様な連携を見せる三人組の噂が冒険者たちの間で広まりつつあった。
深い森の木々が激しく揺れ、地鳴りのような足音が迫る。現れたのは『アーマーボア』の群れ――鋼鉄に匹敵する硬度の皮骨を纏い、太い樹木すら一撃で押し折る突進力を持った危険な魔物だ。
「――グオオオオッ!」
先頭の一頭が赤く目を走らせ、凄まじい速度で突っ込んでくる。だが、正面に立つ誠二の表情には一切の動揺もなかった。
「来い! ここから先は一歩も通さん!」
誠二は腰を深く落とし、身の丈ほどもある大盾を地面へ斜めに突き立てる。「規格外のタフさ」を全身に乗せ、真っ向から突進を受け止めた。
ドゴォォンッ!!
鼓膜を揺らす重厚な衝撃音が響き渡り、激しい土煙が巻き上がる。巨体の突進力を、誠二は一切退くことなく完璧に殺してみせた。衝撃を逃がすように盾の角度を極限まで滑らせ、巨体を行き場のない横合いへと流す。
「ノエル、頼む!」
「うんッ! ――『鈍化の呪印』!」
誠二の背後からノエルの凛とした声が響く。彼女の首元でペンダントが蒼く輝きを増すと、空中に漆黒の魔法陣が展開された。
陣から解き放たれた暗黒の鎖が、バランスを崩したアーマーボアの四肢へ絡みつく。重力に引きずられるかのように、魔物の素早い動きが露骨に鈍化し、大きな隙が生じた。
「さらに……『疾風の加護』!」
ノエルが立て続けにルチアへ向け手をかざす。眩い緑の光の粒子がルチアの全身を包み込み、その身体能力を限界を超えて跳ね上げた。
「感謝します、ノエル! ――合わせますッ!」
緑の疾風を纏ったルチアが、地を蹴った。
ノエルのバフによって次元の違う速度へと達した影が、鈍化した魔物の懐へと一瞬で潜り込む。細身の剣を鋭く引き抜き、一閃。
「――『氷華・連斬』!!」
閃光のような突きの連撃が空気を置き去りにして穿たれる。凍てつく魔力が刃に乗って吹き荒れ、アーマーボアの鋼の皮骨を容易く打ち砕き、眉間と心臓を正確無比に貫き通した。
ガキィィンッ! と凍りついた巨体が内側から砕け散り、残りの個体も誠二の盾に阻まれたところを、ノエルの弱体化とルチアの神速の一閃によって瞬く間に討ち取られていく。
「ふぅ……。残敵、すべて掃討しました」
ルチアが鮮やかに剣の血振りを払い、サヤへと納める。
タンクの誠二が完璧な防壁となって足止めし、補助魔法のノエルが盤面を支配し、アタッカーのルチアが留めを刺す。完璧な役割分担が噛み合った、完璧な無傷の勝利だった。
「すごいです、ノエル! 今の『鈍化の呪印』のタイミング、完璧でしたよ。おかげで相手の隙がはっきりと見えました」
「本当……!? えへへ、ルチアに褒められちゃった……!」
ルチアに優しく頭を撫でられ、ノエルは頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。誠二も大盾を担ぎ直し、頼もしい二人の顔を見合わせて破顔した。
「ノエルの魔法のおかげで、ルチアの踏み込みのスピードが段違いに上がってるな。俺も防御だけに集中できるから本当に助かるよ。三人パーティとしてのバランス、最高じゃないか?」
「ええ。セージが前線で絶対の安心感を作ってくれるからこそ、私たちは伸び伸びと動けます」
夕刻、リゼルダの冒険者ギルド。
討伐証明部位を窓口へ提出すると、受付の女性職員が目を丸くして言った。
「ええっ!? アーマーボアの群れをたった三人で、しかも無傷で……!? 『カツカレーライス』の皆様の評価、最近本当にすごいことになってますよ!」
「みんなで声を掛け合って、役割をきっちり分担して戦ってますから」
誠二が答えると、職員は微笑みながら新しいプレートを取り出した。
「ノエルさん。これまでの討伐実績と貢献度が規定値に達しましたので――本日をもって、Fランクから『Eランク』への昇格が認められました! おめでとうございます!」
「え……っ!? 私が、Eランクに……!?」
手渡された新しい銅製の身分証プレート(Fランクの木製からの昇格)を握り締め、ノエルは目を見開いた。
「やりましたね、ノエル! 入会からわずか数週間でのEランク昇格なんて、すごいスピードですよ!」
「よく頑張ったな、ノエル。ノエルの補助魔法がなかったら、こんなに早く上がれなかったよ」
二人に温かく肩を叩かれ、かつてスラムで病に伏せ、誰からも拒絶されていた少女は、胸の前でEランクの銅プレートとペンダントを強く抱きしめた。
「私……っ、セージとルチアと一緒に戦えて……役に立てて、本当に嬉しい……っ!」
ぽろぽろと零れ落ちる涙は、未来への希望に満ちた嬉し涙だった。
「よし! 今夜はノエルの昇格祝いだ! うまい肉でも食べに行こう!」
「賛成です! ノエルの好きなお菓子も買ってあげましょう」
「うんっ! 私、セージたちとなら……どこまでだって一緒に行きたい!」
夕陽が差し込むギルドホールで、小さな三人組『カツカレーライス』の絆は、より深く、より強固に結ばれていくのだった。
拙作、お読みいただきありがとうございます!
まだ試行錯誤してますので改稿する可能性があります。
よろしくお願いいたします。




