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お疲れ女神の無茶振り世直し転生 不老不死おじさんの苦悩  作者: mojito
第2章 町のギルドとスラム編

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井戸掘り、湧水まで

老紳士グレイから受け取った潤沢な資金を元手に、鍛冶屋の主人が丹精込めて作り上げた『複合滑車』が、ついに完成した。


誠二はすぐさまスラムの拠点へと戻り、ボスの手下たちや集まった住人たちを前に、広場で井戸掘り計画の説明を始めた。


「みんな、今日から新しい井戸掘りを始める! 今までよりずっと深く掘るから骨が折れる作業になるが、ここまで深く掘れば、間違いなく澄んだ安全な水が出る!」


「お、おいセージさん……深く掘るって言ったって、土砂を持ち上げるだけでも大変だぞ? 本当に俺たちだけでできるのか?」


「心配いりません。これを組み込みます」


誠二が広場のやぐらに設置した特注の複合滑車とロープを指さすと、手下たちは首をかしげた。誠二は実際に大きな石を詰め込んだ木箱を用意し、滑車のロープを自分で軽く引いてみせた。

木箱は、誠二が片手で引くだけで、スルスルと軽快な音を立てて持ち上がっていく。それを見た手下たちは、驚きで目を丸くした。


「す、すげえ! なんだこれ、全然力がいらねえじゃねえか!?」


「これが動滑車と定滑車を組み合わせた仕組みです。力学的に必要な力が数分の一に減っています。仕組みさえ分かれば誰でも扱えますよ。あとは……皆さんの根気と体力だけです!」


「やるぞ! これなら俺たちでも掘れる!」


広場に活気が弾けた。体調が随分と持ち直した少年トトも、小さな手で木桶を抱え、目を輝かせて駆け寄ってきた。


「セージさん! 俺も土運ぶのお手伝いする!」


「トト、病み上がりなんだから無理するなよ?」


「大丈夫だよ! 俺も、スラムの役に立ちたいんだ!」


「……ありがとう。じゃあ無理のない範囲で頼むな」


一生懸命に土を運ぶトトの健気な姿に、誠二は思わず目を細めた。前世の社畜時代には味わえなかった、泥臭くも温かい『全員で一つの目標に向かう連帯感』が、胸の奥を熱くする。


(――こういう光景、悪くないな。皆で力を合わせて何かに取り組む感じ、久しぶりだ)


「セージ、お前……本当にただの冒険者なのか? 道具の扱いといい、仕切り方といい、やけに手際がいいじゃねえか」


汗をぬぐいながら掘削作業を見守っていたボスが、呆れたように、だが感心した様子で話しかけてきた。


「昔、人をまとめたり現場を管理する仕事をしていたので、こういう手順には少し慣れているんです」


「現場管理だあ……? 相変わらず変な言葉を使う奴だな」


誠二は曖昧に苦笑いを浮かべつつ、自らもショベルを手に取り、手下たちと一緒に土を掘り進めた。スラムの暗く淀んでいた雰囲気が、確実に変わり始めていた。


作業を開始してから十日ほどが経った頃。井戸掘りは最大の壁に突き当たった。地下深くで、硬く分厚い岩盤層にぶち当たってしまったのだ。


「セージさん、駄目だ! ツルハシが弾き返される! 全然太刀打ちできねえ!」


手下たちが息を荒らして頭を抱えていた。ここで諦めれば、これまでの苦労が水の泡になってしまう。


「……俺に貸してください」


誠二は作業用ツルハシを受け取ると、穴の底へと下り立った。前世の知識で計算すれば、この岩盤のすぐ下に水脈があるはずだった。


(よし……やるか)


誠二は深く息を吸い込み、自身に備わった「規格外のステータス」に意識を集中させた。ツルハシを固く握り締め、全身の筋力を乗せて一気に振り下ろす。


――ゴォンッ!!


雷鳴のような爆音が穴底に響き渡った。一撃で分厚い岩盤に巨大な亀裂が走り、二撃、三撃と誠二が容赦なく打ち込み続けると、手下たちが束になっても歯が立たなかった岩盤が、蜘蛛の巣状に砕け散っていった。


「な……なんだあの馬鹿力は……!?」


「あの兄ちゃん、ただの学者タイプじゃなかったのかよ……!」


上からのぞき込む手下やボスが目を点にする中、誠二が最後の力任せにツルハシを打ち抜いた瞬間――


――ドシャァッ!!


砕け散った岩盤の底から、勢いよく澄み切った水が噴き出してきた。


「――出た! 水だ! 水が湧いてきたぞ――っ!!」


穴の上から割れんばかりの歓声が爆発した。誠二は湧き出る水に手を浸し、その冷たさを確かめた。


「冷たい……! それに、濁りも匂いも全くない、綺麗な地下水です!」


「やった……! セージさん、やったぞ――っ!」


トトは跳ね回るようにして喜び、ボスの手下たちも互いの肩を叩き合って叫んでいる。手や顔を泥だらけにした誠二は、冷たい水の手触りを感じながら、心地よい達成感が満ちていくのを噛みしめていた。

拙作、お読みいただきありがとうございます!

まだ試行錯誤してますので改稿する可能性があります。

よろしくお願いいたします。

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