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お疲れ女神の無茶振り世直し転生 不老不死おじさんの苦悩  作者: mojito
第2章 町のギルドとスラム編

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捨てられる価値と食卓の改革

ある夜。安宿『木漏れ日亭』の食堂で、誠二は深皿を前にため息をつく女将に呼び止められた。

向かいの席には、なぜか当然のような顔で匙を動かしているルチアの姿がある。


「……ちょっとセージ、なに不思議そうな顔で見てるのよ」


「いえ、ルチアさん。今日もここで夕食を食べていくんだな、と思いまして。 あなたの定宿かお店で食べた方が口に合うんじゃないですか?」


「なっ……! べ、別に好きでここにいるわけじゃないわよ!」


ルチアは耳まで赤くして、持っていた匙をカチャンと皿に叩きつけた。


「昼の仕事が終わったから、あなたが変なトラブルに巻き込まれて明日以降の依頼に支障が出ないか『監視』しに来てあげたの! それに……一人で食べるよりは、まあ、マシなだけよ!」


「なるほど、監視ですか。付き合っていただいてありがとうございます」


「ふん、分かればいいのよ!」


素直じゃない横顔に苦笑していると、女将が申し訳なさそうに新しい深皿を置いた。


「セージさん、ルチアさん、また同じ煮込みでごめんね」


「いえ、十分美味しいですよ」


「お世辞はいいよ。正直、うちの亭主の料理はレパートリーが少なくてね。芋と肉の塩煮込みくらいしか作れないんだよ」


厨房から不機嫌そうな顔を出した大柄な亭主が、「香辛料が高くて種類もねえんだから仕方ねえだろ」と不貞腐れると、女将は「セージさん、どこも味付けは似たり寄ったりかい?」と期待を込めて尋ねてきた。


「そうですね……。どこも塩と最低限のハーブくらいで、種類は少ない印象です」


(――これ、前世の知識がそのまま活かせるやつだな。魔法で加熱や保存がある程度できてしまう分、調理技術や味付けの工夫が発展しなかったパターンか)


誠二が思案していると、ルチアがスープを突きながらぽつりと言った。


「南のギャラス公国から入ってくる香辛料を使えば味は変わるでしょうけど……金貨や銀貨が飛ぶわ。貴族以外で買えるわけがないでしょう」


「ルチアさんの言う通り、高価な香辛料に頼るのは非現実的ですね。……ですが、バロンさんなら何か安く手に入る代替品を知っているかもしれません。今度相談してみます」


「セージさん、料理までわかるのかい!?」


パッと目を輝かせる女将に「専門ではないですが」と苦笑しつつ、誠二は改善案を引き受けることにした。


――翌日。


「バロンさん、安くて使い勝手のいい香草や代替素材の仕入れについて教えていただけませんか?」


バロン商会を訪れた誠二が切り出すと、付き添ってきたルチアが「本当に呆れたお節介ね」と肩をすくめ、バロンも煙管をくゆらせながら呆れ顔になった。


「お前、宿屋の入れ知恵までやる気か? ……本物の胡椒なんかは銀貨数枚、下手をすれば金貨に手が届く。だが、この領都の周りの山や森で採れる、香りの強い『野草』の類ならあるぞ。薬草にならんから安く買い叩かれてる代物だ」


「それです! 詳しく教えてください」


「珍しいな、お前がそこまで食い付くとは」


(高い本物に頼らず、身近で安価な代替素材で工夫する。前世の食品メーカーや外食チェーンでもコスト削減の定番手法だったからな)


バロンと番頭から野草の知識を得た誠二は、そのままルチアを連れて市場の探索へと向かった。

露店を回り、ニンニクやニラに似た強烈な臭みを放つ安価な香草を買い集めると、次に良く串焼きを買う馴染みの店主がいる精肉店の店先へ差し掛かった。そこでは店主が売れ残りの肉の塊を前に頭を抱えていた。


「どうしたんですか?」


「ああ、セージさんか。この骨の周りや筋張った部位だよ。硬すぎて誰も買わねえから、いつも捨ててるんだが……もったいなくてな」


誠二はその肉を手に取り、指で感触を確かめた。硬い筋が多くても、骨から外して細かく叩き切り、潰してしまえば素晴らしい素材になる。


(――ひき肉だ。これはいけるぞ)


「これ、細かく刻んで潰せば素晴らしい料理に生まれ変わりますよ。安く譲っていただけませんか?」


「そんなことができるのか!? もちろんいくらでも安くするぞ! どうせ捨てる予定だったんだからな!」


「ありがとうございます。できれば今後も、定期的に買い取らせてください」


「願ってもない話だよ! ありがとよ、セージさん!」


捨てるはずだった部位を安く買い取り、大量のひき肉用素材と香草を抱えた誠二の横で、ルチアが呆れたように鼻を鳴らした。


「捨てるはずの肉と売れ残りの草を買って、一体何を作るつもりなのよ……? もしお腹を壊すようなものを作ったら、絶対に許さないからね」


「大丈夫ですよ。ルチアさんにも一番に試食してもらいますから、楽しみにしていてください」


「っ……! べ、別に楽しみになんてしてないわよ!」


顔を赤くして歩幅を速めるルチア。前世の『商品開発』のようなワクワク感を胸に、誠二は軽やかな足取りで宿の食堂へと向かうのだった。

拙作、お読みいただきありがとうございます!

まだ試行錯誤してますので改稿する可能性があります。

よろしくお願いいたします。

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